嗅覚科学 · 3
合成ムスクは一つの家族ではない:構造、嗅盲、環境中の行方
· 6 分
ニトロ、多環、大環状ムスクは構造も規制も環境挙動も異なり、受容体の遺伝差は人が感じる強さまで変えます。
Galaxolide、エチレンブラシレート、musk ketone、Cashmeran は、どれも musk の検索結果に出ることがあります。しかし同じ化学分類ではなく、規制と環境挙動も共通ではありません。「ホワイトムスク」だけで買うと、別々の問題を混ぜることになります。
三世代は覚え方であって順位ではない
動物由来ムスクは muscone などを香気の核とし、倫理と保全の問題から主流を離れました。十九世紀末にニトロムスクが登場し、のちに多環ムスクが大きく置き換えました。大環状ムスクは天然ムスク分子にも見られる環状構造に近く、現在は各群が同じカタログに並びます。
第一、第二、第三世代は年代順であり、あらゆる面の品質順位ではありません。CASごとにIFRAと各地域の規制を確認します。2014年の総説が示すmusk xyleneの極めて高い残留性・生物蓄積性を、muskと名の付く全原料へ貼り付けることはできません。
ほとんど感じない人がいる理由
ムスクでは特異的嗅盲が珍しくありません。2023年、530名が八種のムスクを評価した研究は、OR5AN1の変異と大環状ムスクの知覚強度との関連を見つけました。同じエチレンブラシレートでも遺伝型により強さが変わります。
「自分には弱いから増やす」は危険な判断です。ムスクを多く使う処方は、複数人で評価する必要があります。
検出とリスクの証明は別
2011年のオーストリア研究は排水と受水域からHHCB、AHTNなどを検出し、主な由来を家庭使用としました。生物学的排水処理での全体除去率は約50%から95%超で、多くは汚泥とともに除かれました。
2017年の中国での段階的評価では、保守的な初期スクリーニングは高いリスク可能性を示しましたが、実際の曝露と地点データを使う高次評価はHHCBとAHTNのリスクを極めて小さいと結論しました。検出、残留性、ハザード、実際のリスクは別々です。
よく使う三原料
| 原料 | 種類 | 実務上の印象 |
|---|---|---|
| Galaxolide | 多環ムスク | 洗濯物、粉っぽい甘さ、非常に長い |
| エチレンブラシレート | 大環状ムスク | 静かで柔らかく、安価 |
| Cashmeran | 多環系ウッディムスク | スパイスと木が強く、比較的短い |
CAS、純度と溶媒、個別規制、最後に香調の順で見ます。家族名は方向を探す言葉で、仕様書の代わりにはなりません。
参考文献
K. M. Taylor, M. Weisskopf & J. Shine, Human exposure to nitro musks and the evaluation of their potential toxicity: an overview, Environmental Health, 13, 14 (2014). PMID 24618224
N. Sato-Akuhara et al., Genetic variation in the human olfactory receptor OR5AN1 associates with the perception of musks, Chemical Senses, 48, bjac037 (2023). PMID 36625229
M. Clara et al., Occurrence of polycyclic musks in wastewater and receiving water bodies and fate during wastewater treatment, Chemosphere, 82(8), 1116–1123 (2011). PMID 21144551
M. Fan et al., Environmental risk assessment of polycyclic musks HHCB and AHTN in consumer product chemicals in China, Science of the Total Environment, 599–600, 771–779 (2017). PMID 28499225