はじめての調香 · 92
バニラエキストラクトにはサプライヤーが109社いて、その香調欄には語が1つしかない。vanilla である
· 7 分
イランイランのグレード I は10の記述語と319時間の残香データを持つ。グレード II と III は合わせるとサプライヤーが多いのに、「floral; ylang」の2語しか与えられていない。そこで測った。記述の豊かさは商業的な重要度と関係があるのか。全体としてはある——香調欄を持つ6,913件で、サプライヤー0社の中央値は3語、50〜99社では8語、Spearman ρ = 0.433。だが56件がこの線を外れる。サプライヤー20社以上でありながら記述語が1つか2つしかない。そしてその56件の55.4%は、記述語が自分の名前そのものだ。バニラは vanilla、ペパーミント油は peppermint、ガーリック油は garlic。対照群(記述語6語以上)では22.0%にすぎない。この欄は、自らが定義であるものを記述できない。
読了目安 4 分。
前回 FEMA の重複組を掃いていて、イランイランの組で手が止まった。
| サプライヤー | 記録 | 香調欄 | 残香 |
|---|---|---|---|
| 42 | イランイラン花油 I | フローラル、花弁、ジャスミン、ネロリ、スズラン、スパイシー、バルサミック、アーシー、ウッディ、ワイン様 | 319時間 |
| 30 | イランイラン花油 II | フローラル、イランイラン | —(空) |
| 45 | イランイラン花油 III | フローラル、イランイラン | —(空) |
グレード I は10語、II と III はそれぞれ2語——そして II と III を合わせたサプライヤー数は I より多い。
そこで測った。この欄の豊かさは、材料の重要度と関係があるのか。
全体としては、ある
香調欄を持つ6,913件をサプライヤー数で分けると:
| サプライヤー | 件数 | 記述語の中央値 | 強度欄あり | 残香欄あり |
|---|---|---|---|---|
| 0 | 1,089 | 3 | 13.8% | 12.9% |
| 1–4 | 2,452 | 3 | 12.8% | 11.9% |
| 5–9 | 1,299 | 4 | 27.5% | 26.6% |
| 10–19 | 972 | 5 | 44.1% | 42.3% |
| 20–49 | 808 | 7 | 66.8% | 66.1% |
| 50–99 | 251 | 8 | 88.0% | 88.0% |
| 100+ | 42 | 8 | 85.7% | 85.7% |
**Spearman ρ = 0.433。**記述語は3語から8語へ、強度欄の記入率は13.8%から88%へ上がる。
この線は明快だ。誰かが買うものは、誰かが嗅ぐ。
だが56件がこの線から外れる
サプライヤー20社以上で記述語が1つか2つしかないものが56件ある。しかもマイナーなものではない。
| サプライヤー | 材料 | 香調欄の全文 |
|---|---|---|
| 109 | バニラエキストラクト | 「vanilla」 |
| 88 | ペパーミント油 | 「peppermint」 |
| 71 | ローズ specialty | 「rose」 |
| 67 | カシア油 | 「cassia; cinnamon」 |
| 66 | (±)-カンファー | 「camphoreous」 |
| 56 | マツリカ・アブソリュート | 「floral; jasmin」 |
| 53 | ガーリック油 | 「garlic」 |
| 47 | レモン油(イタリア) | 「lemon」 |
| 45 | ジンジャー根油 CO2 抽出 | 「spicy; ginger」 |
| 45 | イランイラン花油 III | 「floral; ylang」 |
| 41 | パチュリ油(分子蒸留) | 「patchouli」 |
| 39 | オリス根コンクリート | 「orris」 |
| 25 | 焙煎コーヒー豆エキス | 「coffee; coffee roasted coffee」 |
最後の1件が話を締めている。自分の名前を2回書いている。
測ったパターン
「記述語が材料名と重なる」を自己言及と定義した(照合前に oil、absolute、extract のような一般語を落とす)。
| 自己言及の割合 | |
|---|---|
| 記述語 ≤2 かつサプライヤー ≥20(56件) | 55.4% |
| 記述語 ≥6 かつサプライヤー ≥20(781件) | 22.0% |
| 2.5倍 |
薄い記述の組では、半分以上が自分の名前を繰り返している。
なぜそうなるのか
匂いの記述語そのものが、これらの材料から来ているからだ。
「ローズ」という記述語が存在するのはバラがあるからで、「バニラ」という語はバニラの莢が先にあって生まれた。ローズオイルを記述しようとするとき、唯一正確な語は、それ自身が寄贈した語である。
**これはデータベースの手抜きではない。記述体系の境界だ。**実物を基準にした語彙表は、基準そのものを記述できない。
そして評価欄に逃げても駄目だ
odor_descriptions(署名付きの評価記録)が細部を補ってくれると思っていた。補ってくれない。
| 評価欄の文字数の中央値 | |
|---|---|
| 薄い記述の組(56件) | 46文字 |
| 豊かな記述の組(781件) | 364文字 |
実際の3件を見てほしい。
バニラエキストラクト:100.00% で。vanilla ペパーミント油:ジプロピレングリコール中10.00%。peppermint ガーリック油:プロピレングリコール中0.01%。intense garlic
ガーリックに intense が付いた以外は、同じ語に濃度が添えられているだけである。
だがその濃度は役に立つ
56件はすべて評価濃度を記している。その分布はこうだ。
| 評価濃度 | 件数 |
|---|---|
| 0.01% | 3 |
| 0.10% | 2 |
| 1.00% | 2 |
| 10.00% | 10 |
| 100.00% | 39 |
0.01%から100%まで、1万倍の開きがある。
最も低い3件はアリルイソチオシアネートとガーリック油2件、最も高い側はイランイラン II/III、バニラ莢エキス、白茶葉エキスである。
**この欄はどんな匂いかを教えられなかったが、どれだけ薄めて嗅ぐべきかは教えている。**そして実務では後者のほうが必要になる場面が多い。
実務として
- **記述語が1つか2つの記録を見たら、まずサプライヤー数を見る。**多ければそれは欠損ではなく、その材料自体がその語なのだ。
- **この種の記録で見るべきは評価濃度であって記述語ではない。**0.01%と100%はまったく違う扱い方を意味する。
- **イランイランのように一族の内部で差が大きい場合は注意する。**グレード I には319時間の残香データがあり、II と III には何も無い——残香が短いという意味ではなく、誰も測っていないという意味だ。
この記事が立証していないこと
- **自己言及は文字列の重なりで判定した。**oil/absolute/extract のような一般語を落とし、語長4以上を要求したが、それでも粗い近似である——「cassia; cinnamon」は命中扱いだが、この2語の関係は字面より複雑だ。
- **ρ = 0.433 は相関であって因果ではない。**サプライヤーが多い材料はもともと匂いが複雑なのかもしれない。
- **記述語数はセミコロンで切っている。**記録ごとに区切り方の癖が違う可能性がある。
- 「語彙表が実物を基準にしている」は私の解釈で、データベースは記述語の出どころを説明していない。
- **56という数字は私が選んだ閾値(記述語 ≤2、サプライヤー ≥20)に依存する。**閾値を変えれば数字も変わる。
- 上に挙げたどの材料も嗅いでいない。