はじめての調香 · 91
330の FEMA 番号の下に複数の記録があり、そのうち64.2%は組の中で CAS が違う
· 7 分
前回、(E)-β-ダマスコンとβ-ダマスコンが FEMA 3243 を共有しながら欄がことごとく食い違うことを見つけた。今回はその現象を探針にして全庫を掃いた。FEMA 番号を持つ記録は3,617件、異なる番号は2,968個で、そのうち330個(11.1%)の下に複数の記録があり、979件が関わる。組の中で CAS が2つ以上あるのが64.2%、香調欄の文字列が2種類以上あるのが61.5%。最も極端なのは FEMA 2825 で、その下に20件——スイートオレンジ果皮油の十数の産地と加工の版に加えて、「スイートプチグレン油」が1件ある。あれは別の部位だ。そして最も重要な組は FEMA 2665、l-メントール、dl-メントール、d-メントール、(±)-メントール——4つの CAS、4つの立体化学、1つの番号である。
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前回ぶつかったのは、(E)-β-ダマスコン と β-ダマスコン が FEMA 3243 を共有しながら、保存指示が逆で残香が38%違うということだった。
そこで探針を思いついた。「同じ FEMA 番号の下に複数の記録がある」で全庫を掃けば、欄が食い違う場所を一度に拾える。
掃いて出た量
| FEMA 番号を持つ記録 | 3,617 |
| 異なる FEMA 番号 | 2,968 |
| 下に複数の記録がある番号 | 330(11.1%) |
| 関わる記録 | 979 |
組ごとの件数は、2件が219組、3件が50組、4件が24組⋯⋯そして最長の組は 20件である。
そして組の中の不一致は予想より多かった。
| 組数 | 重複組に占める割合 | |
|---|---|---|
| 組内の CAS が2つ以上 | 212 | 64.2% |
| 組内の香調欄の文字列が2種類以上 | 203 | 61.5% |
| 組内が全て天然表記 | 227 | 68.8% |
20件の組
**FEMA 2825 はスイートオレンジ果皮油だ。**この20件はすべて CAS 8008-57-9 を共有する。
果皮油(99社)、folded(122社)、c.p. ブラジル(31)、c.p. バレンシア(18)、c.p. フロリダ(16)、c.p. カリフォルニア(11)、脱色(10)、folded バレンシア(10)、c.p. スペイン(8)、c.p. イタリア(8)、folded フロリダ(6)、c.p. 西インド(4)、folded ブラジル(4)、セスキテルペンレス(4)、c.p. 中国(2)、c.p. エジプト(2)、folded カリフォルニア(2)、folded イスラエル(2)、c.p. 仏領ギニア(1)⋯⋯
そして「スイートプチグレン油」が1件。
プチグレン油は葉と小枝から蒸留するもので、果皮ではない。同じ木の別の部位が、果皮油の番号の下にぶら下がっている。(その記録はサプライヤー0社なので実務では出会わないが、この番号の境界がどこにあるかを示している。)
ペパーミント油(FEMA 2848)は18件で、アメリカ、インド、ヤキマ、中国、ウィラメット、アイダホ、イングランド、モンタナ、フランス、モロッコ、ハンガリー、ブラジル、ロシア、モンゴル、タスマニアにまたがる。
だが最も重要な組はわずか4件だ
FEMA 2665 はメントールである。
| サプライヤー | 名称 | CAS |
|---|---|---|
| 114 | l-メントール | 2216-51-5 |
| 38 | dl-メントール | 89-78-1 |
| 9 | d-メントール | 15356-60-2 |
| 5 | (±)-メントール | 1490-04-6 |
4つの CAS、4つの立体化学、1つの FEMA 番号。
そしてこの4つは交換可能ではない——メントールの記事で書いたとおり、冷感は l 体から来る。d-メントールは匂いが違い、冷感もずっと弱い。
FEMA 2665 が言っているのは「これは食品に使ってよい」であって「これはどの材料か」ではない。
2つの種が1つの番号を共有することもある
**FEMA 2598 はジャスミンアブソリュートだ。**その下には:
jasmin absolute sambac(56社)——CAS 91770-14-8、これはマツリカ(Jasminum sambac)jasmin absolute (from chassis)(46社)、エジプト(35)、インド(34)、イタリア(4)——CAS 8022-96-6、これはオオバナソケイ(J. grandiflorum)
**2つの種、2つの CAS、1つの FEMA 番号。**しかも両者の香りは誰も取り違えないほど違う。
同様に FEMA 3119 のイランイラン:イランイラン花油(93社、CAS 8006-81-3)とイランイラン花油 I/II/III(42/30/45社、CAS 68606-83-7)。I、II、III は連続蒸留の異なる留分であり、実質的に別の商品だ。
つまり FEMA 番号とは何か
それは「風味としての用途」の番号であって、材料の識別子ではない。
答えているのは「これは食品に使ってよいか、どの資格で」であって「この瓶の中身は何か」ではない。その問いの尺度では、20の産地の果皮油はたしかに同じ一件なのだ。
問題は、それを別の用途に使うことにある。
実務としての4行
- **FEMA 番号で材料を照合しない。**同じ番号の2件が別の種、別の立体化学、別の部位でありうる。
- **CAS にも全面的には頼らない。**重複組の64.2%で CAS が複数だが、逆に CAS が同じで中身が違うこともある——あの20件の果皮油は1つの CAS を共有している。
- **1つの材料を識別するのは「名称+産地/加工/規格」の一続きだ。**これはコーパス照合の記事で挙げた「天然物の粗い名前 対 細かい名前」のずれの出どころでもある。
- **2件の数字が食い違うときは、まず同じものかを確かめる。**これは前回学んだ最初の問いで、今回それを全庫を掃ける探針にした。
この記事が立証していないこと
- FEMA 自身の規則は確認していない。「1つの番号が複数の CAS を覆いうる」はデータから観察したことで、FEMA の文書で確かめたものではない。
- **「スイートプチグレン油が 2825 の下にある」を FEMA のデータベースで照合していない。**これは FEMA の分類ではなくこのデータベースの転記の問題かもしれない。
- **61.5%の組で香調欄が違うのは文字列比較にすぎない。**文字列が違うことは匂いが実質的に違うことを意味しない(記述語の順序や語彙の差かもしれない)。
- **組内の矛盾の深刻さは測っていない。**違いの有無を数えただけである。
- d 体と l 体のメントールの感覚差は既存の知識であり、このデータベースから測ったものではない。
- **330 という数字は FEMA 番号を持つ3,617件しか覆わない。**残る4万件はこの番号を持たず、この探針では照らせない。