はじめての調香 · 86
954件の処方の材料名をデータベースに投げると53.7%が見つからない——そしてそれは収録の問題ではない
· 8 分
重複除去した954件の公開処方から2,994の異なる材料名を取り出し、1つずつデータベースに照合した。名称欄で直接一致したのは1,186(39.6%)、別名欄でさらに199(6.6%)、残る1,609は見つからない——53.7%だ。だが見つからなかったものを出現回数順に並べると、上位20はほぼすべて人が一目で分かるものだった。最多は dipg で445回、ジプロピレングリコールの略記だ。続いて hedione、iso e super、cinnamic alcohol、linalol、styrallyl acetate。すべてデータベースの中にあり、ただ別の文字列で入っている。ずれを6種類に分けた。それぞれ対処が違う。
読了目安 5 分。
私はこのデータベースで問いに答え続け、954件の公開処方で統計を取り続けてきた。だが基本的なことを問うていなかった。あの処方の材料名は、データベースで何割引けるのか。
まず数字
954件の処方には2,994の異なる材料名があり、合計17,481回現れる。
1つずつ照合する(対象は name と head_synonym の2欄。名前の末尾の「10%」のような希釈表記は先に外す)。
| 個数 | 割合 | |
|---|---|---|
| 名称欄で直接一致 | 1,186 | 39.6% |
| 別名欄で一致 | 199 | 6.6% |
| 見つからない | 1,609 | 53.7% |
半数以上が引けない。しかもそれらは合計6,936回現れ、全出現の**39.7%**を占める。
ひどい数字に見える。だがこれは収録の問題ではない。
見つからなかったものの上位20
| 回数 | 名称 |
|---|---|
| 445 | dipg |
| 165 | hedione |
| 131 | bergamot oil bergaptene reduced |
| 113 | ylang ylang oil |
| 104 | iso e super |
| 93 | cinnamic alcohol |
| 82 | galaxolide 50 ipm |
| 77 | styrallyl acetate |
| 76 | gamma-undecalactone |
| 60 | cis-3-hexenol |
| 52 | orange oil |
| 52 | triplal |
| 50 | lyral |
| 50 | vertofix |
| 49 | phenylethyl alcohol |
| 49 | verdox |
| 42 | linalol |
| 42 | aldehyde c-14 |
この中にデータベースが本当に持っていないものは1つも無い。
6種類のずれ
上位20を手作業で対応させた(名称と別名の欄だけを使い、サプライヤーの文字列は使わない——あの層は偽陽性を生む。〈引けないには4種類ある〉で踏んだ)。
1.略記。
| 処方の表記 | データベースの名前 | サプライヤー |
|---|---|---|
| dipg | dipropylene glycol | 37 |
**最も多く現れるものが略記だ。**445回で全出現の2.5%、しかもそれはジプロピレングリコール——材料ですらなく溶媒である。
2.商品名が名称欄に無い。
| 処方の表記 | データベースの名前 | サプライヤー |
|---|---|---|
| hedione | methyl dihydrojasmonate | 102 |
| iso e super | patchouli ethanone | 79 |
| vertofix | methyl cedryl ketone | 71 |
| triplal | 2,4-ivy carbaldehyde | 54 |
| verdox | green acetate | 52 |
| undecavertol | violet decenol | 29 |
このデータベースは化学的な記述を主名にし、商品名は別の場所に置く。Hedione が引けない理由は1本の記事に書いた。
3.商品名はあるが綴りが違う。
| 処方の表記 | データベースの名前 | サプライヤー |
|---|---|---|
| lyral | leerall | 40 |
**これはとくに注目に値する。**Lyral と leerall は同じ材料の2つの商品綴りで、データベースは後者を収めている。文字列照合では永久に見つからず、人が見れば分かる。
4.綴りの変種。
| 処方の表記 | データベースの名前 |
|---|---|
| linalol | linalool |
| phenylethyl alcohol | phenethyl alcohol |
| cinnamic alcohol | cinnamyl alcohol |
| styrallyl acetate | styralyl acetate |
最後のものは L が1つ違うだけだ。
5.データベースの名前に別名が挟まっている。
| 処方の表記 | データベースの名前 |
|---|---|
| gamma-undecalactone | gamma-undecalactone (aldehyde C-14 ⋯) |
| aldehyde c-14 | 同上 |
**同じ記録で、2つの書き方のどちらも引けない。そしてその名前の中には両方が入っている。**照合が「全体一致」で「部分一致」ではないからだ。この記録はサプライヤー119社で、処方では2つの書き方が合計118回現れる。
6.天然物の粗い名前 対 データベースの細かい名前。
| 処方の表記 | データベースにあるもの |
|---|---|
| ylang ylang oil | ylang ylang flower oil、flower oil I/II/III |
| orange oil | orange oil terpenes、blood orange oil italy⋯ |
| bergamot oil bergaptene reduced | bergamot oil bergaptene reduced italy |
**処方はカテゴリーを書き、データベースは具体的な商品を収める。**最後のものは産地の語1つの差だ。(1つの CAS の下に別商品が並ぶ問題は〈同じ CAS の下にある記録〉で測った。)
つまり「53.7%が引けない」は何を意味するのか
それは命名の距離であって、収録の空白ではない。
見つからなかった1,609のうち、手作業で対応させた上位20はすべて対応する記録があり、しかもサプライヤー数も少なくない(37から119社)。本当にデータベースに無い材料も当然ある——新発売の調合ベースがそうだ——が、それがこの数字の主体ではない。
あなたにとっての意味:引けないとき、まずデータベースが持っていないと仮定しない。この6種類を先に通す。
照合のチェックリスト
- **略記ではないか。**dipg、IPM、DEP、TEC の類。
- **商品名ではないか。**化学名を調べる。Hedione、Iso E Super の類。
- **商品名の綴りは合っているか。**Lyral/leerall のように1文字違うことがある。
- **綴りの変種か。**linalol/linalool、-yl/-ic の語尾。
- **「等しい」ではなく「含む」で試す。**データベースの名前に括弧の別名が挟まっていることがある。
- 天然物は産地と部位を足してもう一度試す。「ネロリ油」を「ネロリ油 フランス」にする。
6つとも試して見つからなければ、そのときこそ記録に値する——本当に新しい可能性がある。
この記事が立証していないこと
- **6種類は上位20から帰納したものだ。**残る1,589は1つずつ分類していないので、6種類の相対比率は分からない。
- 対応付けは私が手作業で行ったもので、これらの商品名についての既存の知識を使っており、自動照合ではない。
- **「本当に無い材料が主体ではない」は推論だ。**証明するには1,609件すべてを人手で当たる必要がある。
- 照合には
nameとhead_synonymの2欄しか使っていない。synonyms欄の中身は断片(「3,7-」のような)で、照合には使えない。 - 954件のコーパス自体に偏りがある——公開共有された処方はすべての処方ではないし、この一群は商業のデモ処方が中心だ。
- 希釈表記の処理は末尾の「N%」を外しただけだ。「galaxolide 50 ipm」のような書き方は還元していない。