はじめての調香 · 87
保存期限の欄は3.1%の記録にしかなく、しかも数字は4つしかない
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42,225件の原料のうち、保存期限が書かれているのは1,303件——3.1%だ。そしてその1,303件の96%は4つの整数に落ちる。24か月が561件、12か月が397件、6か月が186件、36か月が111件。どの記録も末尾は同じ一文で終わる。「適切に保存すればそれ以上」。期限ではなく下限なのだ。しかもその数字は酸化のリスクと噛み合わない——スイートオレンジ果皮油は36か月、そのテルペンを除いた濃縮版は12か月で、順序が逆になっている。実際に使える情報は別の欄にあり、その欄には4つの書き方しかなく、そのうち1つは「冷蔵」である。
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「この瓶はまだ使えるのか」は、たぶん最も多く聞かれ、最も答えにくい問いだ。データベースには shelf_life という欄があり、まさにこの問いのためにあるように見える。中に何が入っているのかを見に行った。
1つめ:ほとんど空である
| 件数 | 全庫比 | |
|---|---|---|
| 保存期限あり | 1,303 | 3.1% |
| 保存条件あり | 1,232 | 2.9% |
42,225件のうち1,303件しかない。
ただし今回は「ほとんど空」がさほど問題にならない——**その1,303件のうち1,251件(96%)にサプライヤーがいる。**この欄は実際に売られているものに付いて回っている。
2つめ:数字が4つしかない
| 月数 | 件数 |
|---|---|
| 24 | 561 |
| 12 | 397 |
| 6 | 186 |
| 36 | 111 |
| 18 | 21 |
| 48 | 10 |
| その他(3、8、9、10、25、60、64) | 17 |
4つの整数で1,255件、96.3%を覆う。
測ったのではなく、分類したのだ。「これは25か月もつ」と測った者はいない——25か月の記録は1件だけで、むしろ打ち間違いに見える。実際に起きたことは、材料を半年・1年・2年・3年の4つの山に分けた、に近い。
3つめ:その数字は下限であって期限ではない
どの記録も完全な文字列は同じだ。
24.00 か月、適切に保存すればそれ以上。
**「それ以上」。**これは下限を約束しているのであって、終点を宣言しているのではない。
**あなたが思っているのと逆だ。**食品の日付は「過ぎたら食べるな」だが、ここの数字は「少なくともここまでは有効」である。いつ捨てるべきかを教える記録は1件も無い。
4つめ:数字が酸化リスクと噛み合わない
私はこの欄が酸化のしやすさをおおむね反映していると思っていた——柑橘は短く、ムスクは長い、と。odor_type が柑橘の100件を抜き出すとこうなる。
| 月数 | 件数 |
|---|---|
| 12 | 38 |
| 24 | 34 |
| 6 | 16 |
| 18 | 6 |
| 36 | 6 |
柑橘はすべての枠に散っている。
そして最も明快な矛盾がこれだ。
| 材料 | 保存期限 | サプライヤー |
|---|---|---|
| スイートオレンジ果皮油 | 36か月 | 99 |
| 同 folded(テルペン除去の濃縮版) | 12か月 | 122 |
**folded はテルペンを抜いた版である。**テルペンこそ酸化する側の半分で、抜けばもっと保つはずだ。それが元の3分の1の数字を受け取っている。
他を並べても同じく規則が見えない。グレープフルーツ油12か月、レモン油12か月、d-リモネン12か月、シトラール24か月、シトロネラ油24か月。
これらの数字がどう決まったのかは分からない。だが酸化速度の順位ではない。
本当に使える情報は別の欄にある
storage 欄は shelf_life よりずっと役に立ち、しかも単純だ——全庫で書き方が4つしかない。
| 書き方 | 件数 |
|---|---|
| 冷暗所、密閉、熱と光を避ける | 995 |
| 冷蔵、密閉容器 | 145 |
| 冷暗所⋯⋯さらに窒素封入 | 50 |
| 窒素封入 | 42 |
「冷蔵」が145件。この欄で最も強い一文であり、月数とは別の話だ——冷蔵組には12か月が102件、6か月が26件ある一方、24か月も7件ある。その中で最もサプライヤーが多いのは酢酸ゲラニル、130社、24か月、冷蔵である。
「窒素封入」は92件(storage 欄がある記録の7.5%)。この組の香調型の首位は柑橘(15件)で、直感どおりだ。
**だから実務上の読み方は、まず storage で置き方を決め、次に shelf_life を非常に粗い参考として見る。**順序を逆にしない。
そして本当に心配すべきは「傷む」ことではない
長く置いた瓶の問題は匂いが悪くなることではない——それは自分で嗅げば分かる。問題は、酸化がもともと瓶の中に無かった感作物質を作ることだ。
Matura らは2005年、《Contact Dermatitis》で、ヨーロッパ6施設にわたる連続受診の皮膚炎患者1,511名を調べた。前提の書き方が直截だ。
先行研究は、リモネン、リナロール、カリオフィレンがそれ自体は感作性を持たないが、空気に曝されると容易に感作性の生成物を作ることを示してきた。
結果:**酸化リナロールに1.3%、その過酸化水素画分に1.1%、酸化カリオフィレンに約0.5%が陽性。**そして酸化テルペンに反応した患者の58%が、香料関連の接触アレルギーまたは香料への有害反応の既往を持っていた。
その3つのデータベース上の保存期限は、リモネン12か月、リナロール24か月、β-カリオフィレン24か月。そして3つのうち窒素封入が付いているのはリナロールだけだ。
**だからあの月数では足りない。**あの数字が扱っているのは「まだ売れるか」であり、Matura の論文が扱っているのは「開栓から半年後、それはもうあなたが買ったものではない」である。
実務としてどうするか
- **
storage欄があればそのとおりにする。**とくにあの145件の「冷蔵」。 - **窒素封入の92件は、小分けのとき瓶を満たす。**ヘッドスペースを減らす。100 mL 買って10 mL しか使っていない瓶が最も危ない。
- **月数は粗い参考であって、有効期限ではない。**原文は「それ以上」だ。
- **酸化する種類(柑橘、テルペン類、アルデヒド類)は自分で開栓日を書く。**データベースは数えてくれない。
- **ロットが変わったら嗅ぎ直す。**これはバーチタールの記事でも書いた。理由は違うが結論は同じだ。
この記事が立証していないこと
- **あの月数を誰が何を根拠に決めたのか分からない。**欄は出典も試験方法も示していない。
- **「4つの整数=測定ではなく分類」は推論だ。**分布の形から来ており、説明文書から来たものではない。
- **スイートオレンジ果皮油36か月 対 folded 12か月の矛盾を、私は説明していない。**両方の欄がそう書いてあることを確認しただけだ。
- 柑橘がすべての枠に散っているのは相関のレベルの観察で、統計検定はしていない。
- **Matura 2005 が測ったのは酸化させたテルペンであって、N か月置いた瓶ではない。**あの論文の空気曝露は実験室条件であり、あなたの机の上の瓶との対応は私が立証したものではない。
- **保存実験はしていない。**全体が欄位の統計と1本の論文である。
shelf_lifeもstorageも網羅率は3%程度なので、上のすべての分布はこの1,300件についての話で、全庫の話ではない。