はじめての調香 · 42
出来上がった香水に何かを足す——足し算は安く、引き算はほぼ不可能
· 15 分
r/DIYfragranceに、「Terre d'Hermèsに近いがスポーティさがない」と評された香水を見かけて、ならスポーティさを自分で足せばいいと思った、という投稿があった。返信で一番実用的だったのは「ベルガモットとミュゲ系の材料を増やし、パチュリとアトラスシダーを少し減らす」というもの。この四つの指示のうち二つは実行でき、二つはできない。計算するとこうなる。ベルガモットを資料の中央値10.85%から15%に上げるには、50mLのEDPに0.46g足せばいい。しかしパチュリを8%から4%に落とすには、パチュリ以外のものを9.5g足す必要があり、香料の総量が倍になる。それは修正ではなく、もう一本作ることだ。別の人の「古典的なコロンでしか効かない」も資料が支持する。シトラス/コロンの実効材料数の中央値は6.5で、全香調で最も低い。
r/DIYfragranceに、多くの人が一度は考えたことのある思いつきが投稿された。
「独創的な考えではないが、ある香水が『Terre d'Hermèsに近いけれどスポーティさがない』と評されているのを見て思いついた。**なら、スポーティさは自分で足せばいい。**試した人はいますか。何か分かったことは」
返信は冗談から始まった。TdHの瓶をバーに持っていき、ジャックダニエルとダイエットコークを何時間も飲んで「怠惰による浸透圧」でスポーティな成分を抜こうとしたが、香水は頑としてそのままだった。検証のため、今度は一番暗く獣的なウードを毎週のフラッグフットボールに持ち込んだが、これも失敗した。別の人は「スポーティさって何が入ってるの」と聞いている。この問いはこのシリーズで一度扱った。
ただしこのスレッドには真面目な返信が二つあり、どちらも数字で確かめられる。
結論から
- **足し算は安い。**50mL・賦香率20%のEDPには香料が約9.5g入っている。ベルガモットを資料の中央値10.85%から15%に上げるには、**純ベルガモット油を0.46g足せばいい。**瓶全体の重量の1.1%だ。
- 引き算はほぼできない。瓶に入ったものは取り出せず、薄めることしかできない。パチュリを8%から4%に落とすには、パチュリを含まないものを9.5g足す必要がある。瓶全体の21.8%で、香料の総量は9.5gから19gになる。
- だから一番実用的だった「ベルガモットとミュゲ系を増やし、パチュリとアトラスシダーを減らす」は、前半は実行でき、後半はできない。
- **正しいやり方に到達している人がいる。**別の返信にある「非常に薄い自作版を作り、原液と1対1で混ぜる」は、数学的にはまさに引き算だ。元の処方の各材料の濃度が0.67倍になる。
- **「古典的なコロンでしか効かない」も資料が支持する。**シトラス/コロンの実効材料数の中央値は6.5で、11の香調で最も低い。シプレは10.1で最も高い。同じ一本を足しても、コロンのほうが動かす比率がずっと大きい。
- **そして足すことで全体が弱くなりうる。**1990年の研究は二成分の匂いの混合を測り、混合物は成分の単純な和より弱く感じられ、断続的な曝露では「妥協」が現れることを見つけた。混合物が、より強いほうの成分単独よりも弱く感じられることがある。
二つはできて、二つはできない
真面目な返信のほうを引く。
「この処方を作ったことがある。材料の20%ほどを別のもので置き換えることになったが、結果はTerre d'Hermèsにかなり近く、良いものになった。もっとスポーティにしたいなら、ベルガモットとミュゲ系の材料を増やし、パチュリとアトラスシダーをほんの少し減らすと思う」(roldarin)
指示は四つある。分けて計算する。
**足し算:**50mLのEDP、賦香率20%、香料の比重0.95とすると、中の香料は約9.5g。
| やりたいこと | 足す量 | 瓶全体に対して |
|---|---|---|
| ベルガモット 10.85% → 15% | 0.46 g | 1.1% |
| ベルガモット 10.85% → 20% | 1.09 g | 2.5% |
| ミュゲ系材料 2% → 4% | 0.20 g | 0.5% |
| ある材料 0.5% → 2% | 0.15 g | 0.3% |
**驚くほど小さい。**ベルガモット油0.5gで、処方内の比率を5割近く引き上げられる。「出来上がった香水に何かを足す」という発想に引力があるのは、算術のうえで本当に安いからだ。
**引き算:**瓶の中のものは取り出せない。できるのは一つだけ、それを含まないものを足して薄めることだ。
| やりたいこと | 「それ以外全部」を足す量 | 瓶全体に | 香料は |
|---|---|---|---|
| パチュリ 8% → 6% | 3.17 g | 7.3% | 12.7 g |
| パチュリ 8% → 4% | 9.50 g | 21.8% | 19.0 g |
| アトラスシダー 5% → 3% | 6.33 g | 14.6% | 15.8 g |
ある材料の比率を半分にするには、元の香料総量に等しい量の他の材料を足すことになる。香水を一本修正しているのではなく、隣にもう一本作って、二本を注ぎ合わせている。
この非対称がこの話の核心だ。「Aを上げてBを下げる」は、処方の段階では対称な二つの操作だが、瓶の段階ではまったく違う。roldarinの助言は彼自身の文脈では問題ない。彼はこの処方を作っているのであって、出来上がった瓶をいじっているのではない。瓶に持ち込んだときに、後半が成立しなくなる。
あの「1対1で薄い自作版を混ぜる」が、正しい引き算だった
別の人が、実際にやったことを書いている。
「いくつか試した。一番うまくいったのはIngenious Gingerで、パウダリーなオリス(たぶん主にOrivone)とその他をいくつか足したら、本当に良くなった。友人に分けたら、元のより好きだと言われた」
「やり方は、元のものの中核についての自分の解釈に少し手を加えた『ジンジャーの延長』の和音を作り、それをかなり薄くして(たぶん油分10%以下)、元のものとだいたい1対1で混ぜた。狙いは、濃さを落として何回か多く吹いても強すぎないようにしつつ、少し違う性格を足すことだった」(kdoughboy12)
彼が挙げた理由は「濃さを落とす」だ。実際に何が起きたか計算する。
元の瓶は50mL、香料9.5g。同体積で油分10%の自作液50mLを足すと、持ち込まれる油は4.8g。
| 混合後 | |
|---|---|
| 総液量 | 100 mL |
| 総油量 | 14.2 g |
| 賦香率 | 20%から16.4%へ |
| 元の処方の各材料の濃度 | 0.67倍 |
| 自作液の材料が最終油量に占める割合 | 33% |
**元の処方の材料はすべて、濃度が元の67%に落ちる。**パチュリもアトラスシダーも、彼が触りたくなかったものも一緒に3分の1押し下げられる。そのうえで、自分の33%で欲しいものを補う。
これが引き算の唯一実行可能な形だ。**一本だけ下げることはできず、全部まとめて下げてから、残したいものを足し戻すしかない。**彼は「濃すぎる」という方向からこのやり方に辿り着いたが、同時に引き算の問題も解いている。
上の引き算の表で「パチュリ 8% → 6%」に必要な3.17g——それが純粋な希釈剤なら、薄い元の香水ができるだけだ。その3.17gが自分で調合したものなら、引き算と足し算を同時に達成したことになる。同じ操作の二通りの使い方だ。
「古典的なコロンだけ」——資料が支持する
もう一つの返信は条件を付けている。
「これはかなり古典的なコロンでだけ試すことを勧める。構成の厚い香水に何かを足してもうまくいく見込みは薄い。車を叩いて空気抵抗を下げるようなものだ(理論上は可能だが、可能性は極めて低い)」(Wise_Falcon20)
「構成が厚い」を定義できれば、これは確かめられる。
使ったのは実効材料数だ。処方内の各材料の重量比率を二乗して合計し、その逆数をとる。生態学(逆シンプソン指数)でも経済学(ハーフィンダール指数の逆数)でもよく使われる量で、答えるのはこの処方で実際に何本が発言しているかである。
材料20本のうち一本が80%を占める処方なら、実効材料数はおよそ1.5。名目20本、実際に喋っているのは一本になる。
全954件の結果は、**材料数の中央値が16、実効材料数の中央値は7.1。**半分の材料は重量の上でほとんど声を出していない。このシリーズが以前計算した裾野の話と一致する。
香調別(標本15件以上のみ)。
| 香調 | 件数 | 材料数中央値 | 実効材料数中央値 | 最大単一材料 |
|---|---|---|---|---|
| シトラス/コロン | 109 | 16 | 6.5 | 28.2% |
| レザー | 15 | 14 | 6.6 | 25.0% |
| ムスク | 32 | 16 | 6.8 | 27.7% |
| ウッディ | 87 | 13 | 6.9 | 24.0% |
| フローラル | 327 | 16 | 7.0 | 25.9% |
| グリーン | 99 | 15 | 7.4 | 23.5% |
| オリエンタル・アンバー | 37 | 16 | 7.5 | 23.5% |
| フルーティ | 122 | 18 | 7.5 | 24.5% |
| フゼア | 38 | 16 | 7.8 | 22.0% |
| スパイシー | 24 | 19 | 7.9 | 22.0% |
| シプレ | 30 | 18 | 10.1 | 20.1% |
シトラス/コロンは11の香調で実効材料数が最も低く(6.5)、最大単一材料の比率が最も高い(28.2%)。シプレはその逆で、実効材料数10.1、最大単一材料は20.1%しかない。
両端で1.55倍の差がある。シプレには5割5分多い「独立した声」が入っていることになる。
足すことへの含意は直接的だ。同じ0.5gを足しても、三、四本が支配するコロンなら上位に食い込むが、十本が各々喋っているシプレでは11番目の声にしかならない。
Wise_Falcon20はこの計算をしていないが、彼の直感と資料は同じものを指している。
足すと弱くなりうる
最後の層は知覚で、ここが直感と逆になる。
1990年、SchietとCainが『Perception』に発表した研究がある。被験者は環境チャンバー内で、単一の匂いと二成分混合物の匂いの強度を判断した。混合比は固定または変動、曝露は連続15分か、1分に1回を15分続ける断続曝露のいずれか。
この話に効く結果が二つある。
- **混合物は成分の単純な和より弱く感じられた。**これを低加算性(hypoadditivity)と呼ぶ。低加算性の程度は、調べた四組でほぼ同じだった。
- **断続曝露では「妥協」(compromise)が現れた。**論文の言い方はこうだ。混合物が、より強いほうの成分単独よりも弱く感じられることがある。
二点目は立ち止まる価値がある。香水に何かを足すと、瓶全体が元より弱く感じられることがありうる。「匂いが一つ増える」のではなく、総強度が下がる方向だ。
曝露の仕方も結果を変えた。連続曝露では単純加算に近づき、妥協は現れなかった。著者の説明は、連続曝露では混合物が単一成分よりも順応しにくい傾向がある、というもの。最後の一文が良い。混合物は瞬間的な強度では未混合の成分に劣って見えるかもしれないが、持続性の増加でその不足を補っている可能性がある。
**香水を吹くのは断続曝露だ。**吹いて、離れて、しばらくしてまた匂う。妥協が現れたのはまさにその条件のほうだった。
この論文の限界は明記しておく。測っているのは二成分の混合であって、16本の材料でできた香水に17本目を足すことではない。四組の匂いから香水一本に広げているのは私であって、論文ではない。論文が示すのは方向——混合は低加算であり、足すことは強度を足すことではない——であって、処方に代入できる係数ではない。
1996年のSchiffersteinとKleykersの論文が角度を一つ補い、限界も一つ補う。彼らはOlssonが1994年に発表した混合物相互作用モデルを検証し、データが非対称な混合抑制と低加算性を示すこと、そして非対称性と妥協がモデルの二つの原則に反することを見つけた。結論は、このモデルは似ていない成分の混合の相互作用を正確に記述できない、というもの。この違反は他の種類の混合でも起きているだろうとも書いている。
ただしこの論文が使ったのは味覚刺激(ショ糖とクエン酸の混合)で、匂いではない。引用しているのは非対称抑制という現象そのものであって、味覚の結果を嗅覚に移し替えているのではない。
今回、私の見立ては一度変わった
最初の仮説は、出来上がったものに何かを足すのは悪い考えだ、量が小さすぎて動かないから、というものだった。だから先に「どれだけ足せば効くか」を計算し、不合理なほど大きい数字が出ると予想していた。
出たのは0.46g。足し算は思っていたよりずっと簡単だった。
本当の問題は引き算を計算したときに現れた。それはroldarinの助言に「減らす」が二つ入っていて、私が最初それを二つの「増やす」と分けて扱っていなかったからだ。分けてはじめて非対称が見えた。一つの文の中の四つの操作のうち、二つは0.5g、二つは9.5gだった。
この間違いは記録に値する。処方の言語と瓶の言語の落差だからだ。処方表の上では「Aを8から4に」も「Bを10から15に」も同じくらい簡単に見える。どちらも数字を一つ書き換えるだけだ。すでに混ざった液体の上では、前者は作業の半分をやり直せという意味になる。
実際にどうするか
- **足す前に少量を取り分ける。**返信の一つが率直に書いている。「一部を切り分けていじれ。どうせ変えたあとで嫌いになるから」。このスレッドで一番実用的な一文だ。
- **足し算:上げたい材料は0.5gの桁で動く。**0.1gから始める。戻せないからだ。
- **引き算:一本だけ下げようとしない。**できるのは全部まとめて下げてから欲しいものを足し戻すこと、つまりあの1対1の希釈版のやり方だ。
- **対象を選ぶ:古典的なコロンに近いほど見込みがある。**実効材料数6.5のものなら一本足せば居場所を取れる。実効材料数10のシプレでは難しい。
- **強くなるのではなく、弱くなると予想しておく。**混合は低加算で、香水を吹くのは「妥協」が現れたほうの断続曝露だ。
- **元の瓶を残しておく。**比較できる対象はそれしかない。
この記事が示していないこと
- **すべての計算は賦香率20%、香料比重0.95を仮定している。**実際の製品はEDTの8%から香水の30%まで幅があり、数字を変えれば結果も変わる。これらは桁であって処方ではない。
- **賦香率は「油」と同じではない。**製品にはアルコール、水、UV吸収剤なども入る。非アルコール部分をまとめて香料として扱ったのは簡略化だ。
- **資料の比率は処方内の重量比だ。**それを「出来上がった一本の中の比率」の代理に使ったが、これが成り立つのは賦香率が変わらないときで、何かを足せば賦香率は変わる。表には変化後の香料総量を出してある。
- **実効材料数は重量の指標であって知覚の指標ではない。**実効材料数6.5のコロンで6.5個しか嗅ぎ分けられないという意味ではない。重量分布がどれだけ集中しているかを測っている。
- 香調はタイトルの語から貼ったもので、嗅いで判定したものではない。レザー(15件)とスパイシー(24件)は標本が小さく、その行の中央値は不安定になる。
- Schiet & Cain 1990が測ったのは二成分混合であって複雑な香水ではない。香水一本への外挿は私がしたもので、論文がしたのではない。
- **Schifferstein & Kleykers 1996は味覚刺激を使っている。**引用しているのは非対称抑制という現象であって、味覚の結果を嗅覚の結果として扱ってはいない。
- **私はこの実験を実際にやっていない。**この記事は算術と文献であって、Terre d'Hermèsを一本改造した報告ではない。