はじめての調香 · 44
掲示板で処方をもらったら——先にこの四つを確かめる
· 19 分
r/DIYfragranceに「清潔で軽く、現代的な」ホワイトスエードを作りたいという投稿があった。Suederal LTはハンドバッグ寄りすぎ、Safraleineはサフランの薬っぽさが強すぎるという。返信の一つが13本・合計1000の完全な処方を出した。この処方は確かめられるし、確かめる過程のほうが処方そのものより役に立つ。一つ目、三本は希釈液で記載されていて、IBQは「1%」と書かれているが実際は0.01%、97倍違う。二つ目、Hedione 22.75%、Iso E Super 20.68%はどちらも資料の中央値の3倍——「軽さ」はレザーを減らして作るのではなく、透明な材料を過剰に入れて作られている。三つ目、この処方の身元を担うSuederalは公開処方954件に0回しか出てこない。四つ目、三人がイオノンはレザーを柔らかくすると言うが、資料のレザー処方は9件しかなく、この問いには答えられない。
r/DIYfragranceに、要望をきちんと書いた投稿があった。
「非常に清潔で、軽く、現代的なスエード/レザーの和音を作りたい……**欲しいのは暗く、スモーキーで、アニマリックで、ヴィンテージで、重いレザーではありません。**作りたいのはTom Ford White Suedeに近いもの。とても淡く、柔らかく、清潔で、滑らかで、ほとんど織物のような」
「Suederal LTはもう持っていて、良いスエード感は出るのですが、単体では暗いスエード/レザーのハンドバッグ/ブーツに寄りすぎます」
「Safraleineも試しましたが、サフラン/薬っぽい面が出すぎてしまいます」
返信の一つが、13本・合計1000の完全な処方を出した。
| 材料 | 部 |
|---|---|
| Hedione | 220 |
| Iso E Super | 200 |
| Suederal LT | 150 |
| Methyl Ionone Gamma Coeur | 120 |
| Helvetolide | 80 |
| Ambrettolide | 60 |
| Cashmeran | 45 |
| Cedramber | 40 |
| Linalyl Acetate | 35 |
| Pink Pepper CO2 | 15 |
| Safraleine(DPGに10%) | 20 |
| Pyralone / IBQ(DPGに1%) | 10 |
| Damascenone Total(DPGに1%) | 5 |
そしてスレッド内の別のネット処方について、こういう書き込みがあった。
「期待しすぎないほうがいい。あれはたぶんAIが作った処方だ。」(MisterTomato)
私にはどの処方がAI由来かを判定する手段はない。ただし四つのことは確かめられて、確かめ終えたときには作者が書いた以上のことがその処方について分かっている。
結論から
- 一つ目——希釈液の算術。この処方には希釈液で記載された材料が三本ある。IBQは「1%を10部」と書かれていて、実際の純物質は0.01%。表の上で見える1%とは97倍違う。Safraleineは9.7倍。
- **二つ目——使用量が実務と合うか。**Hedioneが22.75%、資料の中央値は7.89%(2.9倍)。Iso E Superは20.68%対6.46%(3.2倍)。メチルイオノンは12.41%対5.50%(2.3倍)。透明な材料を意図的に過剰投入している。
- 三つ目——材料が引けるか。Hedione(269件)、Iso E Super(110件)、酢酸リナリル(207件)、メチルイオノン(135件)は資料の常連。しかしSuederalは954件で0回、Pink Pepper CO2も0回、Cedramber 1回、Safraleine 8回。
- 四つ目——掲示板の合意が検証できるか。三人がそれぞれイオノンはレザーを柔らかくすると言う。資料でタイトルにレザー/スエードを含む処方は9件しかなく、うち3件がイオノン類を含む(33%)。全体の基準は37%。9件ではこの問いに答えられないし、答えられるふりもしない。
- そして投稿者が「Cashmeranは私には濡れた泥の匂いがする」と書き、作者が「Cashmeranは私には違う匂いがする」と返した。この応答には実証がある。2012年の双生児研究は複数の化学感覚形質の遺伝率を0.41から0.71と測っており、被験項目には香水用ムスクが一本含まれていた。
一つ目:希釈液の算術
この処方は誠実に書かれている。三本は希釈濃度が明記されている。ただしその表記は換算しないと実量が分からない。
| 材料 | 記載部数 | 表の上では | 実際の純物質 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| Safraleine(10% DPG) | 20 | 2.0% | 0.21% | 9.7倍 |
| Pyralone / IBQ(1% DPG) | 10 | 1.0% | 0.01% | 97倍 |
| Damascenone Total(1% DPG) | 5 | 0.5% | 0.005% | 97倍 |
IBQは表では12番目、1%に見える。実際は0.01%——一万分の一だ。
これは処方の誤りではない。作者は明記している。**誤りは読む側で起きる。**この表どおりに材料を買って、純のIBQをそのまま10部量って入れれば、作者とはまったく違うものができる。IBQの強度ランクは3(最高)で、10%以下での評価が推奨されている。100倍入れれば処方全体が壊れる。
ついでに計算すると、1000部のうち32.85部(3.3%)は希釈剤として持ち込まれたDPGだ。この量は大きくないが、希釈液がもっと多い処方ならDPGが無視できない体積を占め始める。
この項目の確認方法:濃度が書かれた材料をすべて掛け戻して、合計を計算し直す。五分もかからない。
二つ目:使用量が実務と合うか
13本の実際の比率を、公開処方954件の中央値と比べる。
| 材料 | この処方 | 資料の中央値 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| Hedione | 22.75% | 7.89% | 2.9倍 |
| Iso E Super | 20.68% | 6.46% | 3.2倍 |
| メチルイオノンγ | 12.41% | 5.50% | 2.3倍 |
| 酢酸リナリル | 3.62% | 6.00% | 0.6倍 |
| Ambrettolide | 6.20% | 1.29% | 4.8倍 |
| Helvetolide | 8.27% | 2.78% | 3.0倍 |
| Cashmeran | 4.65% | 0.83% | 5.6倍 |
| Safraleine | 0.21% | 0.26% | 0.8倍 |
これは「普通の使用量」の処方ではないし、それは意図的だ。
HedioneとIso E Superだけで43%を占め、どちらも資料の中央値の3倍使われている。この二本に共通するのは、拡散がよく、透明で、場所を取らないこと。空間を広げるが、埋めない。
投稿者が求める「軽さ」を、この処方はレザーを減らして作っていない(Suederalは15.5%あって少なくない)。**透明な材料を過剰に入れて作っている。**これは測れる技術的判断で、しかも彼の元の困りごとに答えている。Suederalが単体で暗すぎると感じるなら、解決策はSuederalを減らすことではなく、その周りに4割の透明な材料を積むことだ。
Safraleineは0.21%で、資料の中央値(0.26%)にほぼ一致する。投稿者はSafraleineの薬っぽさが強すぎると言っていた——彼が0.21%よりずっと多く使っているなら、そこが問題の所在になる。
三つ目:これらの材料は公開処方に存在するか
この項目の結果が最も物を言う。
| 材料 | 954件での登場 | 中央値 |
|---|---|---|
| Hedione | 269件(28.2%) | 7.89% |
| 酢酸リナリル | 207件(21.7%) | 6.00% |
| メチルイオノン | 135件(14.2%) | 5.50% |
| Iso E Super | 110件(11.5%) | 6.46% |
| Damascenone | 49件(5.1%) | 0.44% |
| Ambrettolide | 44件(4.6%) | 1.29% |
| Cashmeran | 32件(3.4%) | 0.83% |
| キノリン類(IBQ全表記の合計) | 28件(2.9%) | 1.12% |
| Helvetolide | 15件(1.6%) | 2.78% |
| Safraleine | 8件(0.8%) | 0.26% |
| Cedramber | 1件(0.1%) | — |
| Suederal | 0件 | — |
| Pink Pepper CO2 | 0件 | — |
この処方は二つに分かれる。
重量を支える側(Hedione、Iso E Super、酢酸リナリル、メチルイオノンで合計59%)はすべて公開処方の常連で、何百件もの処方でどう使われているかを見られる。
そして身元を与える側——Suederal、Pink Pepper CO2、Cedramber、Safraleine——は公開処方にほぼ存在しない。
これが投稿者がWhite Suedeの処方を見つけられない理由を説明する。彼が求める効果は特許ベースと現代の原料の上に成り立っていて、そういうものは公開処方には出てこない。Suederalは調合ベース(単体ではない)で、公開処方は通常ベースを書かない。書いても他人が再現できないからだ。
これは構造的な限界であって、探し方が甘いのではない。
資料のレザー処方は、彼が要らないほうだった
タイトルにleather/suede/cuirを含む処方を抜き出すと、9件しかない。最も多く出る材料はこうだ。
| 材料 | 9件での登場 | 全体の基準 |
|---|---|---|
| サンダルウッド油 | 3(33%) | 6.3% |
| クラリセージ油 | 2(22%) | 2.3% |
| クマリン | 2(22%) | 23.6% |
| オリバナムレジノイド | 2(22%) | 0.9% |
| ゼラニウム油(ブルボン) | 2(22%) | 5.0% |
| ガルバナム油 | 2(22%) | 5.6% |
サンダルウッド、クラリセージ、オリバナム、ガルバナム——古典的なシプレの顔ぶれであり、投稿者が言う「暗く、ヴィンテージで、重いレザー」そのものだ。
(この9件のうち数件にはm-キシレン、オクタン、ドデカン、ラウリン酸エチル31.5%といったものが出てくる。香水の処方には見えず、GC-MSの再構成データか工業処方が混入したように見える。件数には残したが、そこから何も推論しない。)
**資料にはWhite Suedeの類がない。**あれは2000年代以降の効果で、公開処方の年代の重心は明らかにもっと早い。
四つ目:あの合意は、資料では答えられない
スレッドでは三人がそれぞれ同じ方向を指している。
「Safraleine、IBQ、それといくつかのイオノンから始めるといい。バイオレット系の分子は確かにきついレザーを柔らかくするが、バランスを取るのがかなり難しい」(logocracycopy)
「メチルイオノンγから始めると思う」(jnill1995)
「Suederalを持っているので、メチルイオノンγ Coeurと混ぜてみます」(投稿者本人)
そしてあの処方ではメチルイオノンが12%で第4位を占めている。
検証できそうな合意に見えて、私には検証できない。
資料のレザー処方は9件で、うち3件がイオノン/イロン類を含む。33%だ。全体の基準は37%。
**33%対37%、標本9件。**この差は完全にノイズの中にあり、しかも向きは逆になっている。「資料はイオノンがレザーを柔らかくすることを支持しない」とは言えない。9件では否定にも足りないからだ。言えるのは、この合意は私の手元のデータでは調べられない、ということだけだ。
この節をあえて書いたのは、このシリーズが「香調の富化」の分析を何度もしてきたからだ(ラベンダーのフゼア7.3倍、サリチル酸ヘキシルのフルーティ2.3倍)。あれらは39件から57件の処方に基づいていた。**9件では足りず、標本が足りないときに33%対37%という比を出すと、読む側はそれを結果だと受け取ってしまう。**結果ではない。
「たぶんAI製だ」——私に確認できること
MisterTomatoの警告は、いま実際に効いてくる問題だ。出所は判定できないが、上の四項目はすべて調べられて、しかも信頼できない処方が最も露呈しやすいところを突いている。
| 確認 | やり方 | 何を捕まえるか |
|---|---|---|
| 合計 | 部数を足す | 端数の合わない処方は写し漏れか捏造が多い |
| 希釈の表記 | 濃度が書いてあるか。あれば掛け戻す | 強い材料に濃度表記がないのは赤旗 |
| 使用量の範囲 | 公開処方の中央値と照合 | 10倍以上ずれるなら理由が要る |
| 材料の実在 | 供給元数とCASを引く | 該当なし、供給元0社は要注意 |
**上の処方は四項目すべて通る。**合計はきっちり1000、希釈液三本はすべて濃度が明記され、使用量のずれには一貫した方向があり(透明な材料の過剰投入)、材料はすべて買える。誰が書いたにせよ、この処方の算術は持ちこたえる。
そして作者自身が添えた使い方のほうが、処方より重要だ。
「私の推奨は、材料を10%に希釈して出発点にし、ムエットの手順か、ごく小さい1〜2グラムのバッチで、望むものになるまで調整していくことです。マイクロバッチは味方です。」
「Cashmeranは私には濡れた泥の匂いがする」
スレッドの中で、この記事全体で最も真面目に扱うべきやり取りがある。
投稿者:「Cashmeranは私には濡れた泥の匂いがするので、この配合がどうやってあの高級で柔らかいセーターのような心地よい匂いに変わるのか分かりません」
作者:「**Cashmeranは私には違う匂いがします。だからこの趣味は難しいのです。**すぐ使える処方を出してあなたに心地よく感じさせることは私にはできません。あなたの鼻は私の鼻と違うからです」
「たとえばHalfetiは私には絶対的に美しく好ましいのに、家族の他の者にはそうではありません。PadamberやCedrolは私には恐ろしいのに、妻には心地よいのです」
これは社交辞令ではなく、測られている。
2012年、Knaapilaらが『Chemical Senses』で双生児研究を行った。成人の双生児が一組の化学感覚刺激を評価した——水、ショ糖、塩化ナトリウム、クエン酸、エタノール、キニーネ塩酸塩、PTC、塩化カリウム、塩化カルシウム、シナモン、アンドロステノン、Galaxolide™、コリアンダー、バジル。
被験リストに香水用ムスクが一本入っている。
結果はこうだ。**大半の形質で個体差は時間を通じて安定しており、いくつかの形質には遺伝性があった。遺伝率h²は0.41から0.71。**被験者は味覚・嗅覚関連遺伝子の内部と近傍にある44の一塩基多型について遺伝子型を決定され、PTC、キニーネ、アンドロステノンについて先行の遺伝子型—表現型の結果が確認された。新たな関連も見つかっている。バジルと苦味受容体遺伝子TAS2R60、コリアンダーとTRPA1・GNAT3・TAS2R50の三遺伝子の変異、エタノールの風味と嗅覚受容体遺伝子OR7D4および上皮ナトリウムチャネルのサブユニット遺伝子SCNN1Dの変異。
論文の結論は率直だ。単純な食品や飲料の味覚・嗅覚の知覚における人と人の差は、化学感覚経路内の遺伝的変異によって部分的に説明される。
規模については、2022年のロシア中部のデータセットが尺度をくれる。9歳から84歳までの住民807人がアンドロステノンの弁別、強度、快度を評価した。著者は要旨で、アンドロステノンが**「人口のおよそ4分の1に不快な匂いとして知覚される」**と触れている。
**4分の1。**少数の例外ではない。
だから作者の「あなたの鼻は私の鼻と違う」は文字どおり正しい。そして「他人の処方どおりに作る」ことに具体的な意味を持つ。**処方が複製できるのは分子であって、知覚ではない。**1000部で量り取ったものは作者の手元にあるものと同じ液体だが、同じ香水の匂いがする保証はない。
二本の論文の限界を明記する。Knaapilaらが測ったのはアンドロステノンやGalaxolideといった特定の刺激で、Cashmeranは測っていない。ロシアの論文が測ったのはアンドロステノンで、香水材料ではない。引用して立てているのは「個体差は実在し、部分的に遺伝的で、規模は小さくない」であって、「Cashmeranに既知の多型がある」ではない。それについて私は証拠を持っていない。
今回の処理
四つ目(イオノンがレザーを柔らかくする)がこの記事で最も強い節になると思っていた。独立した三人が同じことを言い、手元には954件の処方がある——このシリーズが最も得意な形に見えた。
回してみたらレザー処方は9件だった。33%対37%。
一度、より広いキーワードで標本を増やそうかと考えた(chypre、tobacco、animalicも入れれば20〜30件は集まる)。**やめた。標本を足りるようにするために定義を変えることになるからで、シプレがレザーと同じだからではない。**このシリーズの香調ラベルは第1回からタイトルのキーワードで貼っており、単一の問いのために途中で規則を変えれば、すべての数字の比較可能性が失われる。
だからこの節は「合意の検証」から「この問いには答えられない」に変わった。四つの確認のうち一つが白紙だが、記事に残した。白紙もまた確認の結果だからだ。
処方を受け取った人へ
- **まず希釈液を掛け戻す。**この処方で「1%」と書かれたIBQは実際0.01%、97倍違う。
- **公開処方の使用量と照合する。**3倍のずれはたいてい意図的な技術判断(ここでは透明材料の過剰投入)、100倍のずれはたいてい誤読だ。
- **材料が実在するか調べる。**買えない材料では、処方が良くても作れない。
- **ベースは公開処方に出てこない。**求める効果がSuederalのような調合ベースの上に成り立っているなら、公開処方の中には永遠に見つからない。
- **マイクロバッチで作る。**1〜2グラム、材料は先に10%まで希釈しておく。
- **処方は分子を複製し、鼻は複製しない。**あなたが嗅ぐものと作者が嗅ぐものが同じである保証はなく、その規模は人口の4分の1という桁になる。
この記事が示していないこと
- **私はこの処方を作っておらず、嗅いでもいない。**確かめたのは算術、使用量、入手可能性であって、良い匂いかどうかではない。
- **レザー処方9件では、香調レベルのいかなる主張も検証できない。**イオノンの節は白紙であって否定ではない。
- 資料の使用量の中央値は処方内の重量比であり、最終製品の濃度とは異なる。資料自体も公開されうる処方に偏っている。
- 「Suederalが0回」が測っているのはこの954件の公開処方であって市場ではない。Suederalは実在し広く使われている商業ベースで、公開処方に出てこないだけだ。
- **Knaapila 2012はCashmeranを測っていない。**引用しているのは「個体差が部分的に遺伝的変異で説明される」という一般則であって、Cashmeranについての結果ではない。
- Klyuchnikova 2022はデータセット論文で、測っているのはアンドロステノンだ。「4分の1が不快と知覚」は著者が要旨で引いている既存の知見で、規模の尺度として使っており、この論文の新発見としてではない。
- **どの処方がAI由来かを判定する手段はない。**四つの確認が捕まえるのは算術と入手可能性の問題で、出所とは無関係だ。人が書いた悪い処方とAIが書いた悪い処方は、同じところで露呈する。