はじめての調香 · 46
36行のクレームブリュレ処方が投稿され、その半分は溶剤だった
· 15 分
r/DIYfragranceにフランス語でクレームブリュレの処方が投稿された。36行、合計1000。各行の希釈濃度を掛け戻すと、純粋な香料は503.6部、溶剤は496.4部になる。TECが405部を占め、うち280部は本人が一行として明記したもの、残り125部は各種10%希釈液が持ち込んだ分だ。これは欠点ではなく、この処方が作れる理由のほうだ。最小の行は1%のメープルラクトン5部で、純物質に換算すると0.05部、処方全体の十万分の五にあたる。純物質を直接10%の精度で量るならバッチは200gいる。あらかじめ作った希釈液を量るなら10gで足りる。
r/DIYfragranceに、いま作っているものを丸ごと投稿した人がいた。フランス語で。
「みなさんこんにちは。最近取り組んでいる小さな処方を共有したいと思います」
「食いしん坊なので(笑)、クレームブリュレが大好きです。数日前に素晴らしいレストランで一つ味わって、こう思いました。あの感覚を香水として再現してみたらどうだろう、と。」
「もちろんバニラとカラメルの調子が欲しかったのですが、質感も欲しかった。『BRRRRRR』という質感、穀物の粒が砕かれるような感覚です」
そして36行の処方を全文、合計1000で貼った。
この処方は真面目に扱う価値がある。大半の人が省略する一行を、書いているからだ。
結論から
- 各行の希釈濃度を掛け戻すと、純粋な香料は503.6部(50.4%)、溶剤は496.4部(49.6%)。
- 溶剤のうちTECが405部で、そのうち280部は本人が第一行として明記したもの、残り125部は各種10%・1%希釈液が持ち込んだ分だ。DPGは91部。
- 最小の行は純物質に換算すると0.05部、処方全体の0.005%(十万分の五)にあたる。
- 純物質を直接量って、しかも目盛り10個分(およそ10%の精度)を確保したいなら、0.001gの秤で200gのバッチが要る。
- **あらかじめ作った希釈液を量るなら、10gのバッチで足りる。**これが希釈液の役目で、どの器具よりも効いてくる。
- そしてクレームブリュレの焼けた砂糖の層について、まったく違う食品を扱った二本の研究が同じ二つの分子を指している。**ソトロンとフラネオール。**この二つはどちらも入手でき、供給元はそれぞれ41社と101社ある。(本稿は当初「データベースに記録なし」と書いていた。それは誤りで、2026年8月28日に訂正した。説明は下記。)
あのTECの一行
処方の第一行はこうなっている。
TEC 280
TECはクエン酸トリエチル、希釈剤で、このシリーズは原料図鑑の第84篇で扱った。彼女は希釈剤を処方の一行として挙げていて、しかもそれが処方全体で最大の一行になっている。
ネットで出回る処方の大半はそうしない。「材料Aが何部、材料Bが何部」と並べて100か1000にし、希釈剤は式の外に消える。その結果、読む側には完成品がどれだけ濃いのか分からない。
彼女の処方を分解するとこうなる。
| 分類 | 部数 | 割合 |
|---|---|---|
| 純粋な香料 | 503.60 | 50.4% |
| TEC(明記された一行) | 280.00 | 28.0% |
| TEC(各希釈液が持ち込んだ分) | 125.10 | 12.5% |
| DPG(各希釈液が持ち込んだ分) | 91.30 | 9.1% |
| 溶剤合計 | 496.40 | 49.6% |
この1000部のうち496部は香料ではない。
明確にしておく。**無駄でも間違いでもない。**これは濃縮液の実際の組成だ。アルコールに加えて香水にするとき、賦香率はこの1000部を基準に計算するので、本当の香料濃度は思っている値の半分になる。「賦香率20%」と書けば、完成品の中の純粋な香料は10%だ。
そしてもし彼女があのTEC 280の行を書かなければ、読む側はこの処方を720部の材料の濃縮液だと思い、20%で加えて、彼女のものより39%濃いものを作ることになる。
最小の行が、バッチの大きさを決める
処方の最後の二行はこうだ。
メープルラクトン 1% DPG 5 Sulfurol 1% DPG 5
表記は5部だが、それは1%の希釈液だ。純物質は0.05部になる。
1000部の処方の中で、0.05部は0.005%。
これを秤の上の重さに直す。0.001g(1ミリグラム)の宝石用秤があるとして。
| やり方 | 量る重さ | 必要なバッチ |
|---|---|---|
| 純メープルラクトンを直接、量れさえすればいい(目盛り1個) | 0.001 g | 20 g |
| 純メープルラクトンを直接、10%の精度(目盛り10個) | 0.010 g | 200 g |
| 1%希釈液を量る、10%の精度 | 0.010 g | 10 g |
**これが希釈液のしていることだ。**同じ秤、同じ精度要求で、純物質なら200gのバッチ、希釈液なら10gで済む。
20倍の差になる。
そして200gの香料濃縮液は、賦香率20%で1リットルの香水になる。**初めての処方で1リットル作ろうとする人はいない。**だから答えは「もっと良い秤を買う」ではなく、「先に希釈液を作る」になる。
別のスレッドで、同じことの反対側を聞いている人がいた。ある初心者が「私の秤は最小目盛りが0.03gです」と書き、分銅を買うべきか尋ねていた。彼の秤で同じ処方を計算すると。
| 必要なバッチ | |
|---|---|
| 0.03gの秤、純物質を量る、10%の精度 | 6,000 g |
| 0.03gの秤、希釈液を量る、10%の精度 | 300 g |
**全部を希釈液にしても、その秤ではまだ300gのバッチが要る。**この36行の処方は0.03gの秤では作れず、それは分銅や薬さじや秤量ボートを買うかどうかとは関係がない。
あのスレッドで薦められていた器具(薬さじ、秤量ボート、0.2mLスポイト、トレー、ラベルプリンタ)はどれも役に立つし、最初のものと最後のものは同じ問題を解いている。希釈液の瓶が何十本もある状態になったとき、掬えて、注げて、印を付けられる必要がある。
希釈液は上級の技法ではなく、あの器具リストの前提だ。
36行、そしてその形
この処方の部数の分布そのものも見る価値がある。
| 部数の帯 | 行数 |
|---|---|
| 100部以上 | 2(TEC 280、エチレンブラシレート115) |
| 30–99部 | 6(エチルバニリン85、ベラトルアルデヒド85、Musc R1 60、ヘリオトロピン35、エチルマルトール30、Vanilline Signature 30) |
| 10–29部 | 14 |
| 1–9部 | 14 |
行数の半分が9部以下で、その行はほぼすべて10%か1%の希釈液だ。よくある形になる。少数が重量を支え、長い列が修飾をしている。
そして修飾している側の半分こそが、希釈液を必要とさせる側だ。
クレームブリュレの化学:二本の論文が同じ二分子を指す
彼女が欲しかったものの一つが「焼けた砂糖」だった。それには名前がある。メイラード反応とカラメル化だ。
2013年、Kimらは『Meat Science』で、固相マイクロ抽出—ガスクロマトグラフィー—オルファクトメトリー(SPME-GCO)と香気抽出希釈分析(AEDA)を用いて、加熱牛肉抽出物中の強力な匂い物質を測定した。「典型的な加熱牛肉の風味に必要な」メイラード反応揮発物として挙げられたのは以下を含む。
| 化合物 | 論文が付した匂いの属性 |
|---|---|
| 2-メチル-3-フランチオールほか3種 | 肉的 |
| 2-フランメタンチオール | ロースト的 |
| 4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン(フラネオール) | カラメル様 |
| 3-(メチルチオ)プロパナール(メチオナール) | 焼いたじゃがいも様 |
| 3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン(ソトロン) | スパイシー |
2020年、Fanらが『Food Research International』で扱ったのはまったく別のものだ。チベットの青稞酒。官能評価はこの酒に「フルーティ、加熱したじゃがいも、蜂蜜、酸、甘い、そしてカラメル様」の香りがあることを示した。AEDAとGC-MSで66種の香気化合物を同定し、希釈因子は4から2048。さらに四つの定量法で濃度を求め、17種が匂いの閾値を超えていた。匂い活性値(OAV)に基づき、全体の香りに重要でありうるとされたのはフェニルアセトアルデヒド、β-フェニルエタノール、フェニル酢酸エチル、ソトロン、フラネオール、メチオナール、メチオノール、γ-ノナラクトン、β-ダマセノンなどだった。
加熱牛肉と青稞酒、まったく無関係な二つで、カラメルの側として同じ二分子が挙がっている。
ソトロンとフラネオールはメイラード反応とカラメル化の産物だ。クレームブリュレの表面をバーナーで焼いた砂糖の層と、焼いたステーキは、同じ反応になる。
その二つは買える(本節は訂正済み)
ここまで来ると答えは単純に見える。ソトロンとフラネオールを買えばいい。そして答えは実際にそれだけ単純で、最初に調べた私が間違えていた。
本稿の当初の版は「データベースにソトロンの記録なし」「フラネオールは供給元1社」「メープルラクトンは記録なし」と書き、そこから作者は「買える方の道を通っている」と推論していた。三つの検索結果はすべて誤りで、したがってその推論も成立しない。
正しい結果はこうなる。
| 分子 | データベース上の名称 | CAS | 供給元 |
|---|---|---|---|
| ソトロン | caramel furanone |
28664-35-9 | 41社 |
| フラネオール | strawberry furanone |
3658-77-3 | 101社 |
| メープルラクトン | cyclotene |
765-70-8 | 72社 |
| アブヘキソン | maple furanone |
698-10-2 | 67社 |
| マルトール | maltol |
118-71-8 | 107社 |
| エチルマルトール | ethyl maltol |
4940-11-8 | 75社 |
| Sulfurol | sulfurol |
137-00-8 | 105社 |
**買えないと思っていた三本の供給元は、それぞれ41社、101社、72社だった。**フラネオールはマルトール以外のどれよりも入手しやすい。
誤った原因は具体的だ。**化学名でデータベースの名称欄を検索した。**この庫は食品香料をマーケティング名で登録しており(caramel furanone、strawberry furanone、maple furanone)、化学名は同義語欄に、sotolon という語は備考欄に入っている。私の検索は name LIKE '%sotolon%' で、備考欄には届かない。
引っかからないことは存在しないことではなく、私は前者を後者として書いた。
皮肉なのは、このシリーズが第41篇でまったく同じ現象を測っていることだ。最も使われる120本のうち41本がデータベースで引けず、欠けているのはすべて商品名だった。それを書いた次の回で、自分が同じ穴に落ちた。しかも方向は逆で、あちらは処方が商品名・データベースが化学名、こちらは私が化学名・データベースが商品名だった。
**訂正すると、この節の結論は逆になる。**作者がエチルマルトール、Sulfurol、メープルラクトン(彼女の表記では「lactone d'érable」)を使っているのは、ソトロンが買えないからではない。この数本がこの方向の常備材料であり、メープルラクトンはまさに論文のあの一族に属するからだ。彼女の選択は文献と一致していて、迂回ではない。
**今回の原料図鑑はソトロンそのものを扱う。**なぜデータベースで別の名前になっているかも含めて。
今回やらなかった分析
このシリーズの慣例なら、ここで「グルマン系の処方でこれらの材料がどれだけ出るか」の統計が入る。やってはみて、載せないことにした。
資料でタイトルにバニラ/グルマン/カラメル/チョコレート/コーヒー/蜂蜜/アーモンドの類を含む処方は12件しかない。
前回(レザー)は9件で白紙を出し、そのときに規則を書いた。**標本が足りないときに比を出すと、読む側はそれを結果として受け取る。**12件は9件と同じ桁になる。
きれいに見える数字はいくつか出た(マルトール類がグルマン処方で基準の9.24倍、フラネオールが13.25倍)。**ただし13.25倍のほうは処方1件の上に立っている。**測定ではなく、偶然の拡大だ。
だからこの節に残すのはこの一文だけにする。**資料はグルマンの香調について答えられない。公開処方にグルマンの香水がほとんどないからだ。**このこと自体に意味はあるかもしれないが(グルマンは比較的新しい商業カテゴリで、公開処方の年代の重心は早い)、それは推測であって証拠はない。
真似して作る人へ
- **先に希釈液が揃っているか確認する。**この処方は36行のうち22行が希釈液だ。それがなければ200gのバッチが要る。
- **溶剤を処方に書く。**自分の処方にもTECかDPGの行があるべきで、なければ完成品の濃さが分からない。
- **最小の行を一度計算する。**感覚ではなく、それでバッチの大きさを決める。
- **0.03gの秤ではこの処方は作れない。**全部希釈液にしても300gのバッチが要る。
- **化学名で引けないときは、商品名でもう一度引く。**食品香料はマーケティング名で登録されていることが多い。この点で私自身が本稿の初版でつまずいた。
この記事が示していないこと
- **私はこの処方を作っておらず、嗅いでもいない。**計算したのは組成、溶剤の比率、必要なバッチであって、良い匂いかどうかではない。
- 希釈濃度は彼女の表記どおりに換算した。「10倍 10% DPG」のような書き方は字義どおり10%の希釈液として扱っており、意図が違えば数字は変わる。
- **10%と書かれた希釈液が持ち込むのは純粋な溶剤だと仮定した。**実際には市販の予希釈品の溶剤がTECやDPGでない場合もあり、濃度だけで基剤の書かれていない行は表記どおりに扱った。
- **バッチの計算は「目盛り10個=許容できる精度」を仮定している。**よく使われる経験則であって規格ではない。要求を厳しくすればバッチはさらに大きくなる。
- **二本の論文が測ったのは加熱牛肉と青稞酒で、クレームブリュレではない。**引用しているのはそこで同定されたメイラード反応揮発物であり、メイラード反応はこの三者で同じ反応になる。「これらの分子が加熱牛肉で強力な匂い物質である」から「クレームブリュレの香水にはこれを入れるべきだ」への一歩は、私がしていない。
- 本稿の初版が書いた三つの「記録なし/1社のみ」はすべて誤りだった(2026年8月28日訂正)。ソトロン41社、フラネオール101社、メープルラクトン72社で、データベース上ではcaramel furanone、strawberry furanone、cycloteneという名前になっている。原因は化学名で名称欄を検索したことにある。
- **グルマン系12件は少なすぎるので香調の統計はしていない。**今回グルマンについて出した比はすべて削除した。