はじめての調香 · 49
エタノールは何%であるべきか——データベースの「1:1.5 in 50% alcohol」の読み方
· 13 分
r/DIYfragranceで、ベンジルアルコールの欄にある「ethyl alcohol, 1:1.5 in 50% alcohol」をどう読むのかという質問があった。返信の一人が正しく答えている。50%の水・エタノール溶液を作れば、材料1に対してその溶液1.5で溶ける。この表記は真面目に見る価値がある。中に本物のデータが埋まっているからだ。全42225件のうち、溶解度欄に異なるエタノール濃度の測定点を二つ以上残している材料は7本しかない。そしてその7本の曲線の傾きは大きく違う。バニリンは70%から95%で1.5倍、安息香酸ベンジルは45%から95%で1000倍。7本のlogPと傾きを並べると、相関係数は0.876になる。
r/DIYfragranceに、小さく見えて答える価値のある質問が投稿されていた。
「The Good Scents Companyのサイトでベンジルアルコールと酢酸ベンジルを見ていたら、『soluble in』の欄に
ethyl alcohol, 1:1.5 in 50% alcoholとありました。ethyl alcoholがエタノールのことだというのは分かります(持っています)。**でもこの『1:1.5 in 50% alcohol』は、評価用に希釈しようとするときどう読めばいいのでしょうか。**それと、なぜ普段のようにalcoholとだけ書かず、わざわざethyl alcoholと書いているのでしょうか」
返信は二件。一つは「TGSCはときどき変なので、私なら普通にエタノールで希釈する」。もう一つが正しく答えている。
「50%の水・エタノール溶液を作れば、1に対して、いま作ったその水/エタノール溶液1.5で溶ける」(actual_ask164)
この表記は真面目に見る価値がある。書式の癖ではなく本物のデータであり、しかももっと大きな問いに答えているからだ。エタノールは何%であるべきか。
結論から
- 表記の読み方:
1:1.5 in 50% alcoholは、50%の水・エタノール混合液を用意し、材料1に対してその混合液1.5で溶けるという意味になる。分母は溶液であって純エタノールではない。 - **全42225件のうち溶解度欄に値があるのは23941件(56.7%)**だが、異なるエタノール濃度の測定点を二つ以上残しているのは7本だけだ。
- その7本の傾きは大きく違う。バニリンは70%から95%で1.5倍、安息香酸ベンジルは45%から95%で1000倍。
- **7本のlogPとlog10(倍率)を並べると、相関係数 r = 0.876(n = 7)。**疎水性が高い材料ほど、エタノール濃度に敏感になる。
- これは製剤学の共溶媒理論と一致する。2010年の研究は化学的に無関係な7種の薬物を測り、溶質の疎水性が水・共溶媒混合物での可溶化に直接影響すると結論している。
- 実務上の意味:95%の調香用アルコールは何でも溶かす。そして水を加えた瞬間から何かが落ち始め、落ちる順番はlogPが決める。
あの表記
TGSCの溶解度欄は一つの欄ではなく、セミコロンで区切られた記録の連なりで、それぞれ出所も書式も違いうる。ベンジルアルコールの欄はこうなっている。
ethyl alcohol, 1:1.5 in 50% alcohol; ethyl alcohol, 1:8-9 in 30% alcohol; most organic solvents; water, 1:25 in water; water, 4.29E+04 mg/L @ 25 °C (exp); paraffin oil; non-discoloring in most media
分解すると。
| 表記 | 意味 |
|---|---|
1:1.5 in 50% alcohol |
材料1に対し、「50%エタノール水溶液」1.5で溶ける |
1:8-9 in 30% alcohol |
30%のエタノール水溶液なら、同じ1に対して8から9が要る |
1:25 in water |
純水なら25が要る |
4.29E+04 mg/L @ 25 °C (exp) |
別の単位での水溶解度、実測値 |
(exp) は実測、(est) は推定。このシリーズは、データベースの物性欄の99.8%が推定値であることを測っている。だから (exp) を見たら、それは貴重な実測になる。
投稿者の二つ目の問い(なぜ alcohol ではなく ethyl alcohol なのか)については答えがない。全データベースで alcohol は10293回、ethyl alcohol は71回しか出てこない。**出所の違う記録が違う書き方をしているように見えて、意図的な区別には見えない。**最初の返信の「TGSCはときどき変」はおそらく正しい。
七本の曲線
面白いのは、同じ材料の異なるエタノール濃度での測定点を複数残している記録があることだ。
全データベースを掃いて、溶解度欄に「x%アルコール 1:y」型の表記があり、しかも濃度の測定点が二つ以上あるものを探した。7本しかない。
| 材料 | 供給元 | 曲線 |
|---|---|---|
| 安息香酸ベンジル | 84 | 45% → 1:1000 95% → 1:2 (別に90% → 1:2) |
| 酢酸ベンジル | 100 | 30% → 1:200 35% → 1:120 40% → 1:70 50% → 1:20 60% → 1:5 |
| シンナムアルデヒド | 105 | 30% → 1:25 60% → 1:5 |
| ベンジルアルコール | 125 | 30% → 1:8 50% → 1:1.5 |
| ベンズアルデヒド | 108 | 50% → 1:8 60% → 1:2.5 |
| γ-ノナラクトン | 96 | 50% → 1:5 60% → 1:2 |
| バニリン | 193 | 70% → 1:3 95% → 1:2 |
**酢酸ベンジルの行は五点の完全な曲線になっている。**30%から60%へ、必要な溶液の量が200から5に落ちる。四十倍だ。
安息香酸ベンジルはもっと極端になる。45%で1000、95%で1から2。千倍。
(明記しておく。1:8-9 のような区間は一律で低いほうの値を取って計算したので、以下の倍率は控えめな見積もりになる。)
最低濃度から最高濃度で、必要量はどれだけ落ちるか
| 材料 | logP | 倍率 |
|---|---|---|
| 安息香酸ベンジル | 4.00 | 1000× |
| 酢酸ベンジル | 2.00 | 40× |
| ベンジルアルコール | 1.10 | 5.3× |
| シンナムアルデヒド | 1.90 | 5.0× |
| ベンズアルデヒド | 1.50 | 3.2× |
| γ-ノナラクトン | 2.20 | 2.5× |
| バニリン | 1.20 | 1.5× |
logPとlog10(倍率)の相関係数は r = 0.876(n = 7)。
疎水性が高い材料ほど、エタノール濃度に敏感になる。
この結果には標本数を正直に付けておく。**7本だ。**このシリーズには、標本が足りないときに比を出さないという規則がある(レザー9件もグルマン12件も捨てた)。ここが違うのは、この7点は母集団からの抽出で全体を推論しているのではなく、既存の理論的予測を検証するための7回の独立した測定だという点になる。証拠の性質が違う。ただし7点は7点であって、r = 0.876を精密な推定として扱うべきではない。
理論は前から同じことを言っている
この関係には製剤学での名前がある。共溶媒作用(cosolvency)で、標準的なモデルはYalkowskyらの対数線形モデルになる。
2010年、Miyakoらが『International Journal of Pharmaceutics』でこれを測った。化学的に無関係な7種の薬物(ヒドロコルチゾン、スルファニルアミド、アセトフェネチジン、ベンゾカイン、インドメタシン、チモール、イブプロフェン)に対し、二群の水・共溶媒混合物を用いた。一群は三種の脂肪族アルコール(極性の共溶媒)、もう一群はNMP、テトラグリコール、labrasol(極性の低いもの)。
結論はこうだ。
「薬物の疎水性は、水・共溶媒混合物で得られる可溶化に直接的な影響を持つ。」
しかも二群の共溶媒で挙動が違う。極性の共溶媒(エタノールの類)では可溶化の挙動は典型的な「極性のマッチ」であり、すべての溶質とすべての溶媒のデータを合わせると線形の輪郭になる。極性の低い共溶媒では対数線形モデルからの正の偏差が大きく、全体としては明確な規則がないが、溶質の疎水性を考慮に入れると系統的な効果がはっきり現れる。
2022年、EgertとLangowskiは、二つの共溶媒モデルを水・エタノール混合物で直接評価している。Yalkowskyらの対数線形モデルと、Abraham型の線形溶媒和エネルギー関係(LSER)に基づくモデルだ。彼らの研究テーマ自体はプラスチック包材の抽出物だが、使っている枠組みは「水とエタノールの比率を変えて抽出強度を調整する」ことになる。
**それはまさに調香師がしていることで、名前が付いていないだけだ。**95%のアルコールを80%に替えるとき、あなたはその混合液の極性を調整していて、各材料は自分のlogPに従ってそれぞれ反応する。
実務上の意味
一つ目、95%の調香用アルコールは最も寛容な溶媒であり、だからこそ標準になっている。
二つ目、水を加えた瞬間から何かが落ち始め、順番はlogPが決める。
仕上がりが80%エタノール/20%水なら、logP 4.0の安息香酸ベンジルにとって、それは95%とは別の環境になる。このシリーズは第84篇でTECを書いたときに希釈剤の極性の違いに触れた。これはその裏面だ。溶媒の組成が変われば、処方の中で最も疎水的な数本が最初に抗議する。
三つ目、「香水を数日置いたら濁った」に調べられる説明がある。
たいてい傷んだのではなく、ある材料があなたのアルコール濃度で飽和に近く、温度が下がって析出したということになる。このシリーズは第37篇で同じことの別の版を書いた。**加熱して溶かしたものは冷えると析出する。**ここでは変数が一つ増える。水を加えても析出する。
四つ目、logPを見れば、どれが問題を起こしそうか予想できる。
これがこの記事で最も直接に使える一文になる。処方の中でlogPが最も高い数本が、アルコール濃度が下がったとき最初に落ちる。このシリーズが扱ってきた材料では。
| 材料 | logP | 低濃度アルコールでのリスク |
|---|---|---|
| Tonalide(AHTN) | 5.30 | 高い |
| サリチル酸ヘキシル | 5.70 | 高い |
| イソブチルキノリン | 3.90 | 中〜高 |
| ヘキサナール | 1.80 | 低い |
| グアイアコール | 1.30 | 低い |
| ソトロン | 0.40 | とても低い |
| TEC | 0.10 | とても低い(元々希釈剤) |
| DPG | −0.60 | とても低い(同上) |
(この表はlogPを順位付けの指標として使っているのであって、予測値ではない。実際に析出するかどうかは、その材料が処方の中で飽和からどれだけ離れているかにもよる。)
投稿者への答え
- **
1:1.5 in 50% alcoholは、まず50%の水・エタノール溶液を作り、材料1にその溶液1.5。**分母は溶液であって純エタノールではない。 - **評価用の希釈液を作るなら、手元のエタノールをそのまま使えばいい。**最初の返信は間違っていない。あの数字は下限がどこかを知らせるもので、手順ではない。
- **
ethyl alcoholとalcoholの違いは調べがつかなかった。**全データベースでalcoholは10293回、ethyl alcoholは71回で、出所ごとの書き方の違いに見える。 - **本当に覚えるべきは「x%アルコール」の部分だ。**それはこの材料がエタノール濃度にどれだけ敏感かを教えていて、そのことは濃縮液を仕上がりに入れる段階で効いてくる。
この記事が示していないこと
- **7本は全データベースで見つかる全部であって、抽出ではない。**r = 0.876は7点の上に立っており、精密な推定として扱うべきではない。
- **
1:8-9のような区間は低いほうの値を取った。**高いほうを取れば倍率は少し小さくなるが、順位は変わらない。 - **logPはほぼすべて推定値(
est)だ。**データベースの物性欄の大半が推定であることは、このシリーズがすでに測っている。 - **引用した二本の論文はどちらも香料材料を測っていない。**Miyako 2010は7種の薬物、Egert 2022はプラスチック包材の抽出物だ。引用しているのは共溶媒の枠組みであって、香水についての結論ではない。
- **「水を加えると析出する」は機構からの推論で、実験はしていない。**この記事は溶解度試験を一つも行っていない。
- **あのlogPのリスク表は順位付けであって予測ではない。**析出するかどうかは飽和からの距離で決まり、その距離は計算していない。
- **TGSCのデータの出所と年代は分からない。**同じ欄に実測と推定、異なる出所と書式が混在していて、この記事はそれを読み解いただけで、検証したのではない。