原料図鑑 · 83
原料図鑑:グアイアコール——フレーバー欄に本当に「ベーコン」と書いてある。そして資料には5件しか出てこない
· 12 分
CAS 90-05-1。供給元61社。掲示板で「狩りにはグアイアコールを足せ、ベーコンの匂いがするから」という冗談があり、データベースを引いたらこれが正しかった。フレーバー欄に文字どおりbaconと書いてある。強度欄は「高い、1%以下の溶液での評価を推奨」、残香280時間。融点28〜32 °Cなので冬は固体、夏は液体で、外観欄自身が「油状液体から固体」と書いている。天然での存在欄が異常に長い。アスパラガス、ビール、バター、チーズ、シナモン、カカオ、コーヒー、ポップコーン、ロースト落花生。二本の論文がその理由を説明する。これは燃焼と焙煎の産物で、しかも多くの場合は配糖体として閉じ込められ、酵素がないと出てこない。
**短く言うと:**一滴で処方を壊せる強度の材料で、しかも調香師の常用リストにはほぼ載っていない。本当の舞台は食品と飲料にあり、身の回りに現れるときはたいてい何かが焼かれたか焙られたかしている。
欄
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| データベース上の名称 | ortho-guaiacol(o-メトキシフェノール) |
| CAS | 90-05-1 |
| 分子式 | C7H8O2、分子量124.14 |
| 融点 | 28–32 °C |
| 沸点 | 205–206 °C @ 760 mmHg |
| 外観 | 無色〜淡黄色の澄明な油状液体から固体(推定) |
| 香調型 | フェノリック |
| 香調 | フェノリック、スモーキー、スパイシー、バニラ、ウッディ、メディシナル、セイボリー、ミーティ |
| フレーバー | ウッディ、フェノリック、ベーコン、セイボリー、スモーキー、メディシナル |
| 強度 | 高い。1%以下の溶液での評価を推奨(強度ランク3) |
| 残香 | 280時間(100%で) |
| logP | 1.30(推定) |
| 水溶解度 | 18700 mg/L @ 15 °C(実測) |
| 供給元 | 61社 |
| 規制 | JECFA 713、FEMA GRAS 2532、CoE 173、FLAVIS 04.005 |
| GHS | H302 飲み込むと有害、H315 皮膚刺激、H319 強い眼刺激、H402/H412 水生有害 |
| 保管 | 冷暗所で密閉、遮光、窒素封入 |
あの冗談は正しかった
「香水にスポーティさを足すには」という問いに、冗談を並べて答えた人がいた。
「どの競技かによる。スカイダイビングにはfloralozone。アイススケートやホッケーにはメントール。チェスは何も足さなくていい、あれは本当のスポーツではないから(脳には良い)。バレエにはローズ。パルクールには骨折。狩りにはグアイアコール(ベーコンの匂いがする)。」(Thanospapa12345)
データベースを引くと、これがこのスレッドで最も正確な一文だった。
フレーバー欄(これは食品香料でもある。FEMA GRAS 2532)には文字どおりこう書かれている。
ウッディ、フェノリック、ベーコン、セイボリー、スモーキー、メディシナル
味の記述欄はMoscianoの『Perfumer & Flavorist』1997年の評を引いていて、2.00 ppmでの記述として「ウッディ、フェノリック、ベーコン、セイボリー、スモーキー、メディシナル」とある。
**偶然の比喩ではない。**ベーコンの味のかなりの部分は燻煙に由来し、燻煙の味のかなりの部分はグアイアコールのような揮発性フェノールに由来する。冗談が実際の化学に当たった。
融点28〜32 °C:また状態が変わる材料
このシリーズの前回のはじめての調香は「材料が固体かどうかを調べられない」ことを書いた。グアイアコールはその教科書的な例で、しかもデータベースの記録自身が両側に揺れている。
外観欄はこう書いている。「無色〜淡黄色の澄明な油状液体から固体(推定)」——一つの欄に液体と固体が同居している。
融点欄が理由を出す。28–32 °C。
日本の夏の室温は30 °Cを超え、冬は20 °Cを下回る。**同じ一瓶のグアイアコールが、7月には油で、1月には塊になる。**変質ではない。
前回の「室温で状態が変わる」リストにはジフェニルオキサイド(27 °C)とジメチルベンジルカルビニルアセテート(30 °C)があった。グアイアコールは三本目で、しかもその区間がちょうど一番厄介なところにまたがっている。
資料にはほとんど出てこない
この節は先に断っておく。標本が小さすぎるので、以下の数字は観察であって結論ではない。
公開処方954件のうち、グアイアコール系は**5件(0.5%)**に登場する。
| 表記 | 件数 |
|---|---|
| guaiacol | 4 |
| 4-methyl guaiacol | 2 |
| 4-ethyl guaiacol | 1 |
(一つ以上を同時に使う処方がある。)
この5件での比率の中央値は4.10%、四分位2.99%–4.36%、最高11.61%。
**「高強度、1%以下で評価すること」と記された材料が、それを使う処方では中央値4%を占めている。**この対比は目を引くが、5件から何かを導くつもりはない。説明はいくつも考えられる。これらが香水ではなく食品香料の処方である可能性、希釈液の濃度がそのまま原料として書かれている可能性、単にその数件が特に重い路線である可能性。5件では区別できない。
言えるのは一つだけだ。**調香師の常用リストには存在しない。**供給元61社、FEMA GRASもJECFAも番号を持っているのに、公開処方ではほぼ見かけない。市場は別のところにある。
市場は食品にあり、しかもたいてい閉じ込められている
天然での存在欄が普通ではない。一部を引く。
アスパラガスの若茎、ビール、ボロニアアブソリュート @ 0.02%、バター、カッシア樹皮、セロリの葉、セロリ油、セロリ種子、パルメザンチーズ、シナモン、カカオ、コーヒー豆、焙煎コーヒー、トウモロコシ、イチジクの葉、ローストヘーゼルナッツ、グアヤク材、インド産ケタキ花油 @ 0.30%、牛乳、シロガラシ、パッションフルーツ、ロースト落花生、ピーマン、ペパーミントの葉、ポップコーン、米……
この表には規則がある。**焙煎、焼成、発酵、燻製。**コーヒー、カカオ、ポップコーン、ロースト落花生、ローストヘーゼルナッツ、ビール、チーズ。グアイアコールはリグニン(植物細胞壁のフェノール系ポリマー)が熱分解した産物の一つなので、焼かれたり焙られたりした植物材料には現れうる。
そして二本の論文が、自然界でのもう一つの性質を説明する。多くの場合、それは自由ではない。
一、ワインのスモークテイント(2014年)
オーストラリアワイン研究所のMayrらは「スモークテイント」——山火事の煙を浴びた葡萄園から造られたワイン——を研究した。グアイアコール、4-メチルグアイアコール、シリンゴール、4-メチルシリンゴール、o-、m-、p-クレゾール、およびそれらの配糖体共役物が、スモークテイントを受けたワインで高濃度に存在することを示している。
彼らは官能記述分析を用い、遊離の揮発性フェノールと配糖体結合形を一緒に赤ワインに添加してスモークテイントを模した。結果は、両方を一緒に加えたときに異臭が最も強くなった。
続いてin vitroとin vivoの実験で機構を追い、結論はこうだ。ヒトの唾液に含まれる酵素が、低pHと高エタノールの条件下でも、配糖体共役物から揮発性のアグリコンを遊離させられる。
つまり、グラスの段階では煙の匂いがほとんどしないワインが、飲んだあとで口の中で酵素に解錠される。著者はこの機構がワインの風味と後味により一般的な役割を果たしうると述べている。
二、トマトのスモーキー香(2013年)
同じ現象がトマトではもっと徹底的に解かれている。Tikunovらはトマト果実の「smoky」という重要な香りの属性を研究した。この属性を担うのはフェニルプロパノイド系の揮発物だ。
中心的な発見はこうだ。トマトのスモーキー香を決める主要因は、これらの揮発物の生合成ではなく、配糖体前駆体からの放出のほうにある。
彼らは組み合わせオミクスのアプローチで non-smoky glycosyltransferase1(NSGT1)遺伝子を同定した。この酵素は果実の成熟時に発現が誘導され、切断可能な二糖配糖体を切断できない三糖配糖体に変換する。その結果、組織が破壊されたとき(つまり噛んだとき)に揮発物が放出されなくなる。
nsgt1/nsgt1の背景ではこの段階が起きないため、二糖配糖体は切断され、揮発物が放出される。逆遺伝学的手法で、NSGT1を介した配糖体化がスモーキー香の主要な量的形質遺伝子座の背後にある分子機構であることを示し、形質転換果実で官能試験を行った。機能的なNSGT1を戻すと、スモーキー香が有意かつ知覚できる程度に低下した。
二本を合わせた像はこうなる。グアイアコールのような分子は植物中でしばしば配糖体として存在し、匂わない。酵素(植物の、微生物の、あるいは唾液の)が糖を外してはじめて姿を現す。
調香への含意は一つ直接的だ。**あなたが使うのは純粋なグアイアコール、つまり解錠されたあとの形だ。**天然物中の存在量は、そのぶん匂うことを意味しない。逆に、処方に加えた量は100%効く。
使うかどうか
- 強度ランク3、1%以下での評価推奨は、このシリーズが扱った83本のなかでも最上位の部類だ。インドールや硫化ジメチルと同じ階級で、量を間違えれば処方全体が壊れる。
- **残香280時間。**早退しない。間違えて入れたものはずっと居座る。
- **GHSに皮膚刺激(H315)と強い眼刺激(H319)がある。**香料材料では珍しくないが、「高強度で1%以下で扱うもの」と組み合わさると、手袋は妥当な判断になる。
- **経口毒性の欄にヒトのデータが一つある。**oral-human LDLo 43 mg/kg、出典は1969年Deichmannの『Toxicology of Drugs and Chemicals』。ここは明記しておく。LDLoは「知られている最低致死量」であり、実験ではなく症例報告で、しかも香水は経口摂取しない。挙げているのは記録にあるからで、塗布使用と関係があるからではない。
- **窒素封入で保管する。**記録の保管欄がわざわざこれを足している。フェノール類は酸化する。
- **スモーキー、レザー、ウイスキー、焙煎方向を作りたいなら、これが中心の分子だ。**ただし0.01%の桁から試すこと。
この記事が示していないこと
- **資料は5件しかなく、中央値4.10%から何も敷衍しない。**食品香料の処方かもしれず、希釈液が原料として記録されたのかもしれず、単にその数件が重いのかもしれない。5件では区別できない。
- **二本の論文はどちらも調香の研究ではない。**一本はワインのスモークテイント、一本はトマトの育種だ。引用しているのは、そこで確立された機構(配糖体結合形と酵素による放出)であって、香水についての結論ではない。
- **Mayr 2014の配糖体放出機構は口腔内のものだ。**説明しているのは飲んだあとの風味であって、皮膚の上の香水にそのまま移せるものではない。
- **Tikunov 2013が測ったのはトマトだ。**NSGT1はトマトの遺伝子であり、この機構が他の植物で同じとは限らない。
- **「ベーコン」はフレーバー欄の記述で、2 ppmの味覚条件でのものだ。**嗅覚欄はフェノリック、スモーキー、ミーティと書いており、両者は完全には一致しない。冗談は当たったが、当たったのは味覚の記述のほうだ。
- oral-human LDLo 43 mg/kgは1969年の書籍の症例データで、原典まで追っておらず、そこから使用上の結論を導くことも勧めない。
- **融点28〜32 °Cはデータベースの値だ。**この欄には実測と推定が混在する問題があり、別途の検証はしていない。