原料図鑑 · 85
原料図鑑:イソブチルキノリン——同じ分子式で5件の記録、推奨評価濃度は10倍違う
· 11 分
データベースには「isobutyl quinoline」の何らかの形で呼ばれる記録が5件あり、分子式はすべてC13H15N、分子量はすべて185.27なのに、CASは5つとも異なる番号だ。香調欄も違う(アニマル・レザー・タバコと書くものもあれば、アーシー・ルーティ・ナッティ・オークモスと書くものもある)。強度欄も違う(中/強)。推奨評価濃度は1%から10%まで10倍の開きがあり、供給元は0社から22社まで幅がある。そして掲示板ではPyraloneとIBQが同じものとして書かれていた。あれはCAS 65442-31-1と93-19-6で、データベースが引く供給元の説明自体が両者を分けて記述している。
**短く言うと:**このシリーズは規則を一つ決めている——名前ではなくCASを見る。この材料はその規則の最もきれいな実例だ。5件の記録、同じ分子式、5つのCAS、そして推奨評価濃度が10倍違う。異性体を間違えても壊れはしないが、違うものができる。
5件の記録
| データベース上の名称 | CAS | 供給元 | 強度 | 推奨評価 | 残香 | 香調 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 6-イソブチルキノリン | 68141-26-4 | 0 | — | — | — | (欄なし) |
| 6(または8)-イソブチルキノリン | 68198-80-1 | 3 | 中 | 1% | > 48時間 | アーシー、ルーティ、ナッティ、オークモス、ベチバー、レザー、グリーン |
| 2-イソブチルキノリン | 93-19-6 | 5 | 強 | 10% | 160時間 | アニマル、レザー、ウッディ、ルーティ、オークモス、タバコ |
| イソブチルキノリン(Pyralone, Givaudan) | 65442-31-1 | 22 | 強 | 10% | 168時間 | カストリウム、レザー、アーシー、オークモス、ベチバー |
| イソブチルキノリン(4-イソブチル) | 1333-58-0 | 7 | 強 | 1% | 168時間 | レザー、アニマル、ハーバル、グリーン |
**分子式はすべてC13H15N、分子量はすべて185.27。**同じ分子の異性体で、イソブチル基がキノリン環のどこに付いているかが違う。
そして以下の欄の差は、小数点の問題ではない。
- **推奨評価濃度が10倍違う。**93-19-6と65442-31-1は10%、1333-58-0と68198-80-1は1%を推奨している。間違った欄に従って希釈すれば一桁ずれる。
- **供給元は0社から22社。**68141-26-4には供給元の記録がなく、買えない。市場で最も入手しやすいのはPyralone(65442-31-1、22社)。
- **香調欄の重心が違う。**93-19-6は「アニマル、レザー、タバコ」、65442-31-1は「カストリウム、レザー」、1333-58-0は「レザー、アニマル、ハーバル、グリーン」、そして68198-80-1は「アーシー、ルーティ、ナッティ」でレザーは6番目に来る。
供給元自身が両者を分けて書いている
最も説得力のある証拠はデータベースの溶解度欄にある。あの欄には供給元から寄せられた匂いの記述が押し込まれていて、Givaudanは二本を分けて説明している。
Butyl Quinoline Secondary(68198-80-1):「匂い:レザー、グリーン、ウッディ、アーシー、強力。**用途:Butyl Quinoline Secondaryは滑らかで繊細なウッディ—ベチバー—レザーの性格を持つ。**シプレ、レザー、ウッディの組成と、大きな拡散性と保留性をもたらす男性用コロンに用いられる」
Pyralone(65442-31-1):「**Pyraloneはより繊細で、より芳香的で、よりタバコ的であり、Butyl Quinoline Secondaryほど乾いたアーシーな性格を持たない。**シプレ、フゼア、タバコの和音に用いられる」
Isobutyl Quinoline-2(93-19-6):「匂い:レザー、ウッディ、強力。用途:シプレ、レザー、ウッディの組成に用いられる。男性用コロンで広く使われ、その鮮烈で強烈なレザーの性格を大きな利点として活かせる。イソブチルキノリンは極めて強力で持続性が高い」
「PyraloneはButyl Quinoline Secondaryほど乾いたアーシーな性格を持たない」——これはメーカーが書いた文であり、今回のはじめての調香の投稿者が最も気にしていた軸そのものだ。
「清潔で軽いホワイトスエード」を作りたいあの人は、自分の処方に「Pyralone / IBQ(DPGに1%)」と、二つの名前をスラッシュで並べて書いていた。**同じものではない。**暗くアーシーな側面を避けたいなら、この一行の選択が目標に直結する。
資料での使用量
公開処方954件で、キノリン類は全表記の合計で28件(2.9%)に登場し、中央値の比率は1.12%。
| 表記 | 件数 |
|---|---|
| isobutyl quinoline | 15 |
| para-methyl tetrahydroquinoline | 4 |
| isopropyl quinoline | 3 |
| 2-isobutyl quinoline | 2 |
| para-methyl quinoline | 2 |
| 6-sec-butylquinoline | 1 |
| iso butyl quinoline (iff) | 1 |
**七通りの表記がある。**そのうち最も多い「isobutyl quinoline」(15件)は、データベースでは二つの異なるCAS——65442-31-1と1333-58-0——に対応し、その二つの推奨評価濃度はそれぞれ10%と1%だ。
**処方に「isobutyl quinoline」と書かれているとき、作者がどれを使ったかは分からない。**処方を書いた人の不注意ではなく、この名前そのものが足りていない。
中央値1.12%という数字も慎重に読む必要がある。強度ランク3、10%以下での評価が推奨される材料が、処方で1%入るのはかなりの量だ。この28件の四分位範囲は載せていない。標本が七通りの表記(つまり異なる分子かもしれないもの)に散らばっていて、それらの使用量をまとめて統計すること自体に問題があるからだ。中央値を出しているのは尺度感のためで、用量の推奨ではない。
この材料が何をしているか
供給元が最も多いPyralone(65442-31-1、22社)を代表として。
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| 外観 | 黄色から濃褐色の澄明な液体(推定) |
| 純度 | 95–100%(異性体の合計) |
| 沸点 | 288.3 °C @ 760 mmHg |
| 比重 | 1.007–1.015 @ 25 °C |
| 屈折率 | 1.577–1.583 |
| logP | 3.90(推定) |
| 水溶解度 | 101 mg/L @ 20 °C(実測) |
| 強度 | 強い。10%以下での評価を推奨(ランク3) |
| 残香 | 168時間(100%で) |
| 天然での存在 | 自然界では見つかっていない |
| 保存期間 | 24か月 |
| 経口毒性 | ラットLD50 1020 mg/kg |
純度の欄に「異性体の合計 95–100%」とあることに注意したい。Pyraloneはそれ自体が異性体混合物であり、単一の分子ではない。だからそのCAS(65442-31-1)が純粋な2-体や4-体とは違う。
残香168時間(7日)、強度ランク3、自然界では未発見。典型的な高強度の保留材料だ。入れた量は長く居座るので、間違えた代償は7日続く。
挙げられている応用方向はシプレ、フゼア、タバコの和音、アンバー、アニマル、それにいくつかの古典的香水の名前(Bandit、Cabochard、Cachet)。どれも20世紀のレザー・シプレで——あの時代のレザーの分子だ。
初心者への実際の助言
- 買う前に供給元にCASを聞く。「isobutyl quinoline」という名前はデータベースの5件に対応し、うち1件には供給元がない。
- 供給元が最も多いのはPyralone(65442-31-1、22社)。とにかく使えるものが一本欲しいなら、それが最も入手しやすい。
- アーシー/ルーティな側面を避けたいなら68198-80-1(Butyl Quinoline Secondary)を避ける——メーカー自身がPyraloneはそれより乾いたアーシーさが少ないと書いている。
- **希釈濃度は自分が買ったものの推奨に従う。**10%と1%は10倍違い、この5件には両方ある。
- **0.01%の刻みから試す。**強度ランク3と残香168時間を合わせた意味は、試行錯誤の代償が高いということだ。
個体差について
今回のはじめての調香では、同じスレッドのやり取りを扱った。ある人が「Cashmeranは私には濡れた泥の匂いがする」と言い、別の人が「Cashmeranは私には違う匂いがする。だからこの趣味は難しい」と返している。
これはキノリン類にとって特に重要になる。この分子群は香調欄自体が分かれているからだ。同じ分子ファミリーで、「レザー、タバコ」と記録するものもあれば、「アーシー、ルーティ、ナッティ」と記録するものもある。その分岐の一部は、分子の違いではなく嗅ぐ人の違いかもしれない。
2012年のKnaapilaらの双生児研究は一組の化学感覚刺激(香水用ムスクGalaxolide™を含む)を測り、大半の形質で個体差が時間を通じて安定し、いくつかの形質の遺伝率h²が0.41から0.71であることを見つけ、アンドロステノンなどについて先行の遺伝子型—表現型の関連を確認した。2022年のロシア中部のデータセット(807人)は、アンドロステノンが人口のおよそ4分の1に不快と知覚されることに触れている。
**どちらもキノリン類を測っていない。**引用しているのは一つのことのためだけだ。同じ材料について二つの記録が異なる香調欄を書いているとき、「片方が間違っている」は唯一の説明ではない。
この記事が示していないこと
- **私はこの5本の実際の匂いを比べていない。**全体がデータベースの欄と供給元の説明の上に立っている。
- 資料の28件の中央値1.12%は七通りの表記を混ぜたもので、それらは異なる分子に対応しうる。この数字は尺度感にしか使えない。
- **65442-31-1の「異性体の合計」の内訳をデータベースは出していない。**Pyraloneの中で各異性体が何割かは分からない。
- **68141-26-4は供給元0社で、欄もほぼ空だ。**この名前の下に何件の記録があるかを示すために挙げているのであって、それについて何か知っているからではない。
- **推奨評価濃度の差(1%対10%)の根拠は調べがつかなかった。**このシリーズはすでに、全データベースで1.9%の材料しかこの欄を持たないこと、そしてデータベースがその決め方を説明していないことを測っている。
- **引用した二本の論文はキノリン類もCashmeranも測っていない。**立てているのは「個体差は実在し、部分的に遺伝しうる」という一般則だ。