原料図鑑 · 89
原料図鑑:リラール(HICC)——データベースの名前はleerall、EUでは禁止、それでも供給元欄には40社
· 10 分
CAS 31906-04-4。接触感作を理由に、EUの化粧品では2021年から禁止されている。当サイトのデータベースはこれをleerallという名前で登録し、Lyralは同義語の先頭欄に置いている。残香400時間、香調はフローラル、ミュゲ、シクラメン、ルバーブ、ウッディ。公開処方954件のうち50件に登場し、中央値の使用量は4.57%で微量ではない。そしてGHS欄には飲み込むと有害、軽度の皮膚刺激、眼刺激しか載っていない。感作の分類はない。まさに感作を理由に禁止されたにもかかわらず。さらに天然での存在欄には「自然界では見つかっていない」と「セージ油 @ 0.10%」が同居している。
**短く言うと:**かつてどこにでもあったミュゲの材料で、接触感作を理由にEUで禁止された。これを書くのは、まだ公開処方50件に中央値4.57%で残っていて、それらを真似して作るとぶつかるからだ。
**これは規制上の助言ではない。**以下はEU化粧品の状況で、IFRAと各国の規定は別の体系になる。
欄
| 欄 | 内容 |
|---|---|
| データベース上の名称 | leerall |
| 同義語の先頭欄 | lyral (IFF) |
| 化学名 | ヒドロキシイソヘキシル3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド(HICC) |
| CAS | 31906-04-4 |
| 分子式 | C13H22O2、分子量210.32 |
| 純度 | 97–100%(異性体の合計) |
| 外観 | 無色から淡黄色の澄明で粘稠な液体(推定) |
| 香調型 | フローラル |
| 香調 | フローラル、ミュゲ、シクラメン、ルバーブ、ウッディ |
| 強度 | 中(ランク2) |
| 残香 | 400時間(100%で) |
| 沸点 | 318.65 °C @ 760 mmHg(推定) |
| logP | 1.70(推定) |
| 水溶解度 | 184.6 mg/L @ 25 °C(推定) |
| 保存期間 | 24か月 |
| 供給元 | 40社 |
| GHS | H302 飲み込むと有害、H316 軽度の皮膚刺激、H320 眼刺激 |
| 経口毒性 | ラットLD50 3250 µL/kg |
| 経皮毒性 | ウサギLD50 11300 µL/kg |
なぜ禁止されたのか
測られたからだ。
2017年、Engfeldtらがスウェーデン接触皮膚炎研究グループとして五施設研究を行った。皮膚炎患者2118名が連続してパッチテストを受け、香料混合物IIの二濃度(ワセリン基剤14%と16.5%)と、重複調製したHICC 5%が試験された。
| 検査項目 | 陽性率 |
|---|---|
| 香料混合物II(14%) | 3.2% |
| HICC | 1.5% |
| HICCを二回貼付した後の全体の有病率 | 1.9% |
| HICC単独検査での追加検出(混合物に同時反応せず) | 0.3% |
この論文の研究上の問いは検査法にあった。混合物II中のHICCを2.5%から5%に上げればより多くの陽性を検出できるか。結論は検出できない。高濃度版はより多くの刺激反応も活性感作の兆候も生まなかった。HICC単独検査も、それだけに反応する患者を十分な割合で拾えなかった。
ただし1.5%から1.9%というその数字が、この材料が2014年にスウェーデンの基本シリーズから外され、後にEUで禁止された背景になる。
2022年、Sukakulらがスウェーデン南部の更新を行った。皮膚炎患者3539名、2016年から2020年。香料接触アレルギーの全体の有病率は13%。そしてこの材料について直接の一文がある。
「ヒドロキシイソヘキシル3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒドとは異なり、EU規制の発効後、オークモス(Evernia prunastri)抽出物への接触アレルギーに減少傾向は見られなかった。」
裏返せば、HICCの接触アレルギーは規制の発効後に減少傾向を示した、ということになる。
同じデータの中で、禁止された材料が減少を示し、制限された材料が示さない。得がたい対照になっている。
明記しておく。どちらの研究も対象は皮膚炎の外来患者であって一般人口ではなく、これらの百分率を一般の人のアレルギー率として読むことはできない。Sukakulらの著者の一人は、利益相反の開示で香料産業に助言する香料安全専門家パネルの一員であることを明かしている。
そしてGHS欄に感作がない
この欄は単独で見る価値がある。
leerallの記録のGHS分類はこうなっている。
H302 - 飲み込むと有害 H316 - 軽度の皮膚刺激 H320 - 眼刺激
H317(アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ)がない。
接触感作を理由にEUで禁止された材料が、この記録のGHS欄では感作の分類を持っていない。
この差を説明するつもりはない。このGHSデータの出所と日付が分からないからだ。考えられる理由はいくつかある。GHS分類と化粧品規則は独立した制度である、この記録が更新されていない、あるいは供給元が申告した分類にそもそもこの項目が含まれていない。言えるのは、香料材料が肌に使えるかどうかをGHS欄で判断してはいけない、ということだけになる。
このシリーズは関連することを測っている。データベースで供給元10社以上のムスクの記録36件のうち、23件にはGHS欄すらなかった。GHS欄の網羅も更新も、この用途のために設計されてはいない。
天然での存在欄が自己矛盾している
もう一つの欄。
自然界では見つかっていない;セージ油(イングランド)@ 0.10%
同じ欄に「自然界では見つかっていない」と、具体的な天然の出典と濃度が同居している。
このシリーズのデータベースの矛盾の扱い方は、事実として記し、原因を推測しないことだ。後から加えたデータが前の一文を消していないのかもしれないし、そのセージ油での検出が別のものだったのかもしれない。この欄は使わない。
(ついでに、もし0.10%が本当だとしても何も変わらない。一万分の十の存在量は、1960年代から大量に合成されてきた材料を天然物にはしない。)
資料の中で何をしているか
公開処方954件のうち50件(5.2%)に登場し、中央値の使用量は4.57%、最高の一件で28.2%。
**4.57%は微量ではない。**構造材料として使われている。
供給元の記述がその理由を説明する。
「柔らかく繊細なフローラル、リリー、シクラメン、ライラックの調子で、ヒドロキシシトロネラールを思わせる。並外れた持続性と拡散性。香水の組成のすべての乾燥段階を通じて豊かさを与える強力な調和剤」
**「すべての乾燥段階を通じて豊かさを与える」**に400時間の残香が加わると、この材料の役割が見えてくる。**一つの香調ではなく、香水全体を接着しているもののほうだ。**削ると一箇所落ちるのはそのためになる。
データベースの備考欄には、これを使う小さな和音まで残されている。
「ワクシーなフローラル・フルーティ和音:0.05 leerall/0.01 アルデヒドC-14/0.05 アルデヒドC-18 10%/0.01 musk gx/0.01 ラズベリーケトン10%/0.01 アルデヒドC-16 10%」
同じ回のはじめての調香がこの規模を測っている。資料の331件(34.7%)が、いま禁止または厳しく制限されている材料を少なくとも一本含み、リラールはそのうちの50件になる。
あの名前
当サイトのデータベースは、これを leerall という名前で登録している。
lyral (IFF) は同義語の先頭欄(head_synonym)にある。化学名は同義語欄にある。
このサイトで「Lyral」を検索すると空振りする。これは前回の原料図鑑(ソトロン)が記録したのと同じ問題であり、同じ機構になる。データベースの名称欄が、あなたが検索に使わない名前になっている。
今回はCASで引き当てた。**規則は変わらない。名前ではなくCASを見る。**そしてCASすら分からないなら、化学名、商品名、綴りの変種を全部試し、名称欄が名前を持つ唯一の欄ではないことを覚えておく。
(同じ検索で、リリアールも lilyall として登録された記録がある。CAS 80-54-6、供給元37社。これは一つの命名の慣例であって偶然ではない。)
買うかどうか
- **EUで上市するものを作るなら、使わない。**禁止されている。
- **供給元欄の40社は、買えることを意味しない。**記録の更新は市場より遅く、この欄は歴史を映している。
- ただし公開処方ではぶつかる(50件、中央値4.57%)ので、これが何で、処方の中で何を担当しているかは知っておく必要がある。
- **担当しているのは「豊かさ」と「接着」であって、ミュゲの香調だけではない。**置き換えるには、ミュゲの材料を一本見つけるだけでは足りず、残香400時間の接着の働きも補うことになる。
- **何で代替するかはこの記事では書かない。**それは実際に試す必要があり、私は試していない。
この記事が示していないこと
- **規制状況は公開情報に基づいて書いたもので、法的意見ではない。**EU化粧品規則とIFRA基準は別の体系で、各国の規定も異なり、どれも変わる。
- **GHS欄に感作の分類がないことを説明していない。**そのデータの出所と日付が分からない。
- **天然での存在欄の矛盾は解決していない。**事実として記し、推測しない。
- **二本の論文の対象はどちらもスウェーデンの皮膚炎外来患者だ。**1.5%、1.9%、13%はその集団の割合であって、一般人口のアレルギー率ではない。
- **Sukakul 2022の「HICCは減少、オークモスは減少せず」は、その研究が自分のデータで得た観察になる。**対照として引用しており、因果の証明としては扱っていない。
- **私はこれを嗅いでいない。**この記事はデータベースの欄、供給元の説明、資料の統計の上に立っている。
- 資料の50件は名称の照合で拾ったもので、商品名の変種は取り逃しうる。この記事の主題を考えると、この一文は二度読む価値がある。