データの読み方 · 18
テアニンとSilexanの違い:同じ不安尺度の上で、緑茶のほうはプラセボに勝てなかった
· 15 分
2022年のPharmacol Res誌のベイジアンネットワークメタ分析は、12種の薬用植物を一つのHAMAスコアの表に並べた。テアニンの結果はMD −0.49、信用区間は−6.54から5.57で、ゼロをまたいでいる。プラセボに勝っていない。同じ表で勝ったのはSilexan(MD −3.84)で、これはラベンダー精油をカプセルに詰めて飲み込む製剤である。当サイトのデータベースはその線をもっと直接に引いている。laevo-theanineは供給元12社を持ちながら、香気型・香気・強度・残香の四欄がすべて空で、カタログはこれを「特殊栄養・食事添加物」に分類している。一方lavender oilは供給元99社、香気語8つ、残香12時間を持ち、lavender oil franceの備考欄には silexan used as an anti-anxiety agent と書かれている。本稿は経口摂取の証拠と嗅覚の主張のあいだにある線を引く。
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短く言うと
- 2022年のベイジアンネットワークメタ分析で、テアニンのHAMA結果は MD −0.49、信用区間 −6.54から5.57、ゼロをまたぐ
- 同じ表で効いたのは Silexan(−3.84)、ラベンダー精油をカプセルにして飲み込むもの
- データベースは
laevo-theanineの香気型・香気・強度・残香を四欄すべて空にし、分類を「特殊栄養・食事添加物」としている - もう一つの記録
dextro,laevo-theanineには、カタログが「情報のみ、香料・香精には使用しない」と明記している - 一方
lavender oil franceの備考欄にはsilexan used as an anti-anxiety agentと書かれている - 嗅ぐほうにも証拠はある。2019年の吸入の統合効果量は Hedges' g = −0.73。ただし著者自身は「相応の大きさの効果の兆候」としか言っていない
データベースが答えられる問いから始める
「緑茶はリラックスできる」という話はどこにでもある。私が知りたかったのはその一歩手前だ。テアニンという物質は、香料のカタログの中でどう見えるのか。
記録は二つある。
| 記録 | CAS | 供給元 | カタログ分類 | 香気欄 |
|---|---|---|---|---|
laevo-theanine |
3081-61-6 | 12 | 特殊栄養・食事添加物 | (空) |
dextro,laevo-theanine |
34271-54-0 | 3 | 情報のみ、香料・香精には使用しない | (空) |
左旋のほうは実在感がある。12社が売っている。天然存在欄は細かい。茶の葯、茶の子葉、茶葉、茶の種子、茶の芽、茶の茎。備考欄には「エチルアミンの前駆体。緑茶に存在する」とある。
しかし香気型、香気、香気強度、残香時間の四欄には一語もない。
これはデータの欠落ではない。同じカタログが lavender oil には香気語を8つ、強度 medium、残香12時間を与えている。埋める能力はある。この一本に埋めるものがないだけだ。
二つ目の記録はもっと直接的だ。ラセミ体のほうは、分類が「情報のみ、香料・香精には使用しない」と書かれ、天然存在欄は not found in nature となっている。カタログ自身がこれは香料ではないと言っている。
その12社は何を売っているのか
サプリメントの原料である。この分類は全体で187件あり、うち157件に供給元がついている。近隣はこうだ。植物性タンパク加水分解物51社、キシリトール37社、フマル酸33社、L-アルギニン29社、L-グルタミン27社。
この区画はまるごと香水を作るためのものではない。
ついでに書くと、供給元があって香気欄が空の記録はデータベース全体で 15,670件ある。だから「香気欄が空」自体は珍しくない。珍しいのはその隣の分類欄で、この一本を食品・食事の側にはっきり置いていることだ。
では green tea flavor は。供給元21社、分類は「あらゆる種類の調味製品」、備考欄には水溶性・油溶性・乳化・液体・粉末といった形態の話が書いてある。香気欄はやはり空だ。緑茶がこのカタログに入る経路は「フレーバー」であって、香気記録を持つ原料としてではない。
同じ表の上に並んだ二つの香料植物
2022年の Pharmacol Res 誌の論文(PMID 35378276)は、まさに私が必要としていたことをしていた。12種の薬用植物を一つのベイジアンネットワークに入れ、ハミルトン不安尺度(HAMA、不安の重症度を評価する臨床標準の質問票)の終点スコアで比較する。1987年から2021年までの29件のランダム化比較試験を収めている。
同じ表からの四行。
| 薬用植物 | HAMA平均差 | 95%信用区間 |
|---|---|---|
| Withania somnifera(アシュワガンダ) | −4.90 | −9.70から−0.17 |
| Ginkgo biloba(イチョウ) | −4.63 | −9.01から−0.23 |
| Silexan(ラベンダー精油製剤) | −3.84 | −6.31から−1.34 |
| Kava(カヴァ) | −2.46 | −4.47から−0.32 |
| L-theanine(テアニン) | −0.49 | −6.54から5.57 |
最後の行の区間を見てほしい。−6.54から5.57まで、ゼロをまたいでいる。このデータの束では「プラセボと同じ」という可能性を排除できない、という意味だ。
しかもテアニンの区間幅(12.11)はSilexan(4.97)の2倍以上ある。区間が広いのはデータが少ないか互いに食い違っているということで、効果が小さいということではない。この二つは分けて語る必要がある。テアニンは無効と示されたのではなく、この試験群では結論が支えられない。
2026年の Mol Psychiatry 誌の論文(PMID 42410082)は31件のRCT、1,168人でやり直していて、読み方は一致する。不安への効果は「一貫せず有意でない」。唯一の例外が精神病性不安を扱った1件で、SMD 0.54、用量は400 mg/日を8週間。
勝ったほうは、飲み込むものだった
Silexanという名前はデータベースにすでに出てくる。lavender oil france(#21974、供給元55社)の備考欄の全文はこうだ。
silexan used as an anti-anxiety agent. tsca definition 2008: extractives and their physically modified derivatives. lavandula officinalis, labiatae.
カタログがこれを記録していた。
Silexanはラベンダー精油を経口カプセルにしたもので、標準用量は80 mg/日。2019年の Phytomedicine 誌のメタ分析(PMID 31655395)が与える数字はHAMA平均差 −2.90(95% CI −4.86から−0.95、p = 0.004、1,173人)、条件は最低6週間の連続服用である。
つまりあの表で香料植物に関係し、かつ勝った唯一の一本は、消化管を通っている。
ここで一度止まる価値がある。ラベンダー精油はこのデータベースでは正真正銘の香料だ。lavender oil(#21975)は供給元99社、香気型 floral、香気語8つ(ハーバル、フローラル、スパイシー、アロマティック、カンファー、バルサム、アルデヒド、ウッディ)、強度 medium、残香12時間、FEMA 2622、FEMA GRAS。同じ植物油が香料としても、カプセルに入れた医薬品としても使われ、その二つの証拠は別々に管理されている。
では嗅ぐほうは
ここは空振りに終わると思っていて、そうならなかった節だ。
2019年のメタ分析は定性的統合に65件のRCT(7,993人)、定量的統合に37件(3,964人)を入れている。吸入経路の結果はこうだ。
- 妥当性のある任意の尺度で測った不安:Hedges' g = −0.73(95% CI −1.00から−0.46、p < 0.00001、1,682人)
- 状態不安(STAI-State):平均差 −5.99(95% CI −9.39から−2.59、p < 0.001、901人)
- 特性不安(STAI-Trait):平均差 −8.14(95% CI −14.44から−1.84、p < 0.05、196人)
- 収縮期血圧:有意な効果なし
前の三つは有意である。しかし著者自身が考察に書いた文をそのまま持ってくる。本稿の要点はそこにあるからだ。
全体として、ラベンダー精油の経口投与は不安の治療に有効であることが示される。一方、吸入については、利用可能な研究の異質性のため、相応の大きさの効果の兆候があるにとどまる。
同じ節の前段にはもう一文ある。組み入れられたランダム化比較試験の大半は、全体的なバイアスリスクが高かった。
だから吸入は無信号ではない。有意な統合効果量があり、そのうえで著者は研究の作りを見たあと、その地位を「兆候」に落とした。有意であることと信頼できることは別で、その境界を引くのはp値ではなく研究の質だ。
「収縮期血圧に有意な効果なし」も読む価値がある。主観尺度は動き、生理指標は動かなかった。この組み合わせは香りの研究でよく出てくるし、少なくとも一つのことを思い出させる。被験者は自分がラベンダーを嗅いでいると知っていた。
検索して出てくる記事がこうなっていない理由
「テアニン 不安」で繁体字中国語のSERPを一度引いた。1ページ目はサプリメント通販のブログ、ペットの健康サイト、ウィキペディア、知乎だった。内容は同じ数点に集中している。α波が増える、GABAが上がる、40分で吸収される、100から400ミリグラム。
それぞれの主張には出典があり、明らかな捏造は見つからなかった。問題は2022年のあの表に触れた記事が一つもないことだ。
これは理解しにくい話ではない。α波とGABAは機序の研究で、機序の研究が語るのは「その物質が脳の中で何をしたか」である。HAMAのメタ分析が語るのは「それを飲んだ人の不安尺度のスコアが、プラセボを飲んだ人より低かったかどうか」だ。前者のほうが語りやすく、売りやすい。
調香の側では、同じずれが別の形で現れる。経口試験の結論を、ある原料の嗅覚に関する主張の裏づけに使ってしまう。
処方にとっての意味
すぐ使えることが三つ。
一つ、テアニンは処方に入らない。使える香気がないからだ。 四つの空欄がその答えである。緑茶を組むなら green tea flavor の区画を通るか、香気記録を持つ単体を積むことになる。それは別稿の話だ。
二つ、「ラベンダーは不安を和らげる」を引くときは、まずどちらの経路かを問う。 経口Silexanの証拠等級は吸入より明確に高い。同じ油であっても、両者は互いに借りられない。
三つ、信用区間がゼロをまたいだら、そこから先へ推論を進めない。 −0.49という点推定は「少しは効きそう」に見える。その区間の右端は+5.57である。点推定は先へ進ませようとするが、区間はそうしない。
本稿を書く途中で一度間違えたので、それも書いておく。文献を最初にざっと見たとき、考察の「for inhalation there is only...」という半文だけを見て「吸入は効果なし」と記録した。結果の節が与えるg = −0.73は有意である。一つの抄録の考察の節と結果の節は違う方向を指すことがあり、片方だけ読むと誤った印象を持ち帰ることになる。
→ データベースのL-テアニン|ラベンダー油|フランス産ラベンダー油:欄の値、供給元、分類はすべて自分で確認できる。
本稿が確立していないこと
- テアニンが効くかどうかを判定してはいない。 本稿が述べたのは、2022年のあの試験群の信用区間がゼロをまたぐこと、2026年のレビューが不安への効果を一貫しないと呼んでいること。これは証拠の強さの記述であって、有効性の判決ではない。
- **2026年の Mol Psychiatry 論文の責任著者の一人は、栄養補助食品を販売する会社を創業している。**論文の利益相反欄に開示がある。その結論はテアニンに対して保守的な方向なので、この利益相反が結果を良く見せているわけではないが、引用時には併記すべきだ。
- **2019年のNutrients誌のRCT(PMID 31623400)は3名の著者が太陽化学に所属する。**同社の栄養事業部門はテアニンを販売している。この試験は30人、200 mg/日を4週間で、自己評価のうつ、特性不安、睡眠の質がいずれも下がった。
- 2007年の名古屋大学の研究(PMID 16930802)は12人である。 これは「テアニンは抗ストレス」の出発点として引かれるが、その標本数で一般的な結論は支えられない。
- **2022年の論文の著者自身が結論を暫定的と呼んでいる。**理由は各試験の標本数が不十分なこと、そしてプラセボ自体が有効でありうることだ。私が引いたのは順位であって、定説ではない。
- **データベースの分類欄はこのカタログの編集判断を反映するもので、**法規上の地位ではない。「情報のみ、香料・香精には使用しない」はカタログの言葉であって、当局の言葉ではない。
- **テアニンの食品香料規制上の地位は調べていない。**FEMA番号を持つかどうかも調べていない。その欄は二つの記録のどちらでも空で、空欄は不在と同じではない。