はじめての調香 · 104
logP は320件が物理的に妥当な範囲の外にあり、そのうち319件は正しい
· 7 分
私はずっと値域検査で誤りを拾ってきた。純度は100を超えられず、屈折率は1を下回れない。今回は同じ手法を logP に当てたところ、ほぼ全滅した。logP が −5 から +15 の外にあるのは320件で、最も極端なのはイヌリンの −70.20 とショ糖ヘキサステアレートの 48.90 だが、どちらも正しい。分子量が1000を超える多糖と脂質であり、極端な logP は本物だ。本当の誤りは1件だけ——ストリキニーネの logP が389.00と書かれており、その分子量は334しかない。他のすべての極端値は分子量1,200超である。だがあの320件には思わぬ用途があった。香調型を持つのはわずか0.9%で、範囲内の記録は19.2%。logP が範囲外なのは誤りの旗ではなく「これは香料ではない」の旗であり、その精度は21倍違う。
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化学を知らなくてもできる3つの検査を書いた。その1つが値域だ。純度は100%を超えられず、屈折率は1を下回れない。
今回は同じ手法を logP に当てて、ほぼ全面的に失敗した。
まずこの欄について
logp(オクタノール/水分配係数)には **19,667件(46.6%)**の値がある。
そのうち19,604件に「(est)」が付いている——99.7%。
私が測った中で推定比率が最も高い欄だ(対照:蒸気圧94.0%、引火点56.6%)。実測はわずか63件である。
そして隣に xlogp3 欄がある。両方に値がある18,450件のうち、0.5を超えて食い違うのは32件(0.2%)だけだ。
要するに同じ数字が2つの欄に入っている。
値域検査は失敗した
有機分子の logP はたいてい −3 から +12 に収まる。−5 から +15 の外を拾うと **320件(1.63%)**出た。
そして1件ずつ見ると、ほとんどが正しい。
| logP | 分子量 | 材料 |
|---|---|---|
| −70.20 | 6,179 | イヌリン |
| −21.40 | — | キトサン |
| −17.20 | 1,297 | γ-シクロデキストリン |
| −7.40 | — | ヒアルロン酸 |
| −6.90 | — | マルトデキストリン |
| +15.60 | — | リコピン |
| +19.40 | — | ユビデカレノン |
| +42.20 | 1,426 | ペンタエリスリチルテトラベヘネート |
| +48.90 | 1,941 | ショ糖ヘキサステアレート |
イヌリンは分子量6千の多糖で、logP が −70 の桁になるのは当然だ。ショ糖ヘキサステアレートは分子量2千近い脂質で、+48.9 も正しい。
**私の「妥当な範囲」は、香料分子の直感を化粧品原料の入ったデータベースに当てはめたものだった。**その範囲は香料には正しく、これらには正しくない。
本当の誤りは1件だけ
| logP | 分子量 | 材料 |
|---|---|---|
| 389.00 | 334.4 | ストリキニーネ |
**他のすべての極端値は分子量が1,200を超えている。**分子量334の分子が logP 389を持つことはありえない——水より10³⁸⁹倍も親油であることになる。
これを拾ったのは値域検査ではなく、値域と分子量の突き合わせだ。
これは新しい種類の検査である。「この数字は妥当か」ではなく「この数字は同じ記録の別の数字と辻褄が合うか」。(これまでの検査はすべて単一の欄の中で完結していた。)
だがあの320件には思わぬ用途があった
捨てようとして、1つ確かめた。あれらのうち何件が香調型を持つのか。
| 件数 | 香調型あり | 香調欄あり | |
|---|---|---|---|
| logP が −5..15 の外 | 320 | 3(0.9%) | 2(0.6%) |
| logP が −5..15 の内 | 19,347 | 3,718(19.2%) | 3,648(18.9%) |
21倍の差だ。
分類欄も同じことを言っている。範囲外の組の上位は「天然物と抽出物」(113)、「情報のみ、香料にも風味にも使用しない」(45)、「エモリエント、皮膚コンディショニング」(14)、「間接食品添加物:接着剤とコーティング成分」(13)、「エモリエント、粘度調整」(11)。
logP が範囲外なのは「このデータが誤り」の旗ではなく、「これは香料ではない」の旗である。
**そしてそれこそ私が必要としていたものだ。**このデータベースには4万件余りが入っており、その大きな部分は化粧品原料、増粘剤、食品添加物である——logP は一行で書ける濾過器を与えてくれる。
ついでに:logP は残香を予測しない
相関を計算したついでにいくつか比べた。
| ρ | |
|---|---|
| 蒸気圧 vs 残香 | −0.647 |
| logP vs 分子量 | 0.435 |
| logP vs 蒸気圧 | −0.355 |
| logP vs 残香 | 0.289 |
logP と残香の相関は0.289しかなく、蒸気圧の −0.647 にはるかに及ばない。
どれだけ持つかを知りたいなら、logP ではなく蒸気圧を見る。(logP が語るのは油と水のあいだの分配であり、それは皮膚上に留まることには関係するが、ムエットから蒸発する速さとは別の話だ。)
実務として
- **値域検査は「その範囲は誰の範囲か」を先に問う。**私の −5〜+15 は香料分子の範囲であって、このデータベースの範囲ではなかった。
- **欄をまたぐ検査は、単一欄の検査が拾えないものを拾う。**ストリキニーネは logP と分子量を並べて初めて露見した。
- **
logpとxlogp3は同じ数字だ。**2つの独立な出典として扱わない。 - 香料でない記録を除きたいなら、
logp NOT BETWEEN -5 AND 15は安価な出発点になる。
この記事が立証していないこと
- 99.7%が推定値なので、この記事全体はあるモデルの出力についての話であって測定の話ではない。
- 「−5から+15」は私が適当に決めた香料の範囲であり、いかなる標準でもない。閾値を変えればあの320件も変わる。
- 1件ずつ見たのはサプライヤーの多い十数件と最も極端な8件だけで、320件すべてを確認したわけではない——「319件は正しい」は外挿であって数え上げではない。
- ストリキニーネの正しい logP は調べていない(文献値はおよそ1.9だが出典は引いていない)。389が分子量334と両立しないとしか言えない。
- 「0.9% 対 19.2%」の差は、あの320件がそもそもデータの乏しい記録だからかもしれない。「香料でないから香調型が無い」と区別できていない。
- 相関係数はいずれも値のある部分集合で計算しており、欄ごとに記入率が違うので、あの ρ たちは同じ記録の集合の上で計算されていない。