はじめての調香 · 103
蒸気圧が1桁下がるごとに残香は約3倍になる——トップ・ミドル・ベースは仕様書から計算できる
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ここ数回は欄を剥がし続けたので、今回は逆をやる。蒸気圧から、そのまま使えるものを計算する。蒸気圧と「100%で測定した」残香時間の両方を持つ1,288件を取ると、両者のSpearman相関は−0.647であり、階級に分けると完全に単調になる。蒸気圧0.0001 mmHg未満の残香中央値は336時間、0.001〜0.01が142時間、0.01〜0.1が48時間、0.1〜1が12時間、1〜10は4時間しかない。1桁ごとに約3倍だ。そして1 mmHgと0.01 mmHgで3つの帯に切ると、その配置は伝統的なトップ・ミドル・ベースと一致する。トップ帯は酢酸エチル、cis-3-ヘキセノール、酪酸エチル。ミドル帯はゲラニオール、シトラール、リナロール、酢酸リナリル。ベース帯はラクトン類、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルセドリルケトン。ただし大前提がある。蒸気圧の94.0%は推定値だ。
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ここ数回はずっと欄を剥がしてきた。今回は逆をやる。1つの欄から、そのまま使えるものを計算する。
問い
「この材料はトップかベースか」はたいてい経験か、誰かに教わるかで決まる。だが揮発の速さは物理であり、物理には数字がある。
データベースには vapor_pressure 欄(9,020件、21.4%)と残香欄がある。前者が後者を予測できるなら、材料がどこに座るかを仕様書から計算できる。
相関
蒸気圧と、100%で測定した残香時間の両方を持つ記録を取った——この制限は重要だ。残香欄の濃度表記では躓いたので、希釈して測った数字を原液の数字と並べることはできない。
条件を満たすのは1,288件。
Spearman ρ = −0.647。
負の相関で、しかも弱くない。蒸気圧が高いほど残香は短い——物理が予期するとおりだ。
そして階級に分けると完全に単調だ
| 蒸気圧(mmHg @ 25 °C) | 件数 | 残香の中央値 |
|---|---|---|
| < 0.0001 | 49 | 336時間 |
| 0.0001 – 0.001 | 58 | 321時間 |
| 0.001 – 0.01 | 308 | 142時間 |
| 0.01 – 0.1 | 374 | 48時間 |
| 0.1 – 1 | 314 | 12時間 |
| 1 – 10 | 136 | 4時間 |
| > 10 | 49 | 4時間 |
336時間から4時間まで、一度も引き返さない。
大雑把な規則:蒸気圧が1桁下がるごとに、残香はおよそ3倍になる。
(上2つと下2つの階級は平らになっている——残香欄の上限と下限が効いているためで、400時間が天井であることは測った。)
3つの帯に切る
| 帯 | 蒸気圧 | 残香の中央値 | 代表的な材料 |
|---|---|---|---|
| トップ | > 1 mmHg | 4時間 | 酢酸エチル、cis-3-ヘキセノール、酪酸エチル、ベンズアルデヒド、2-メチル酪酸エチル |
| ミドル | 0.01 – 1 | 24時間 | ゲラニオール、シトラール、リナロール、酢酸ゲラニル、ベンジルアルコール、シトロネロール、酢酸リナリル |
| ベース | < 0.01 | 212時間 | γ-ウンデカラクトン、γ-デカラクトン、δ-デカラクトン、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチルセドリルケトン |
**この3組はそのまま教科書のトップ・ミドル・ベースだ。**とくにミドルの一群は綺麗である——ゲラニオール、リナロール、シトラール、シトロネロール。どの入門書もハートに置く名前だ。
香調型の分布も付いてくる。トップ帯はフルーティ(34)、グリーン(21)、エーテル様(12)が中心;ベース帯はフローラル(79)、フルーティ(26)、ウッディ(26)、バルサミック(14)が中心である。
いくつかの照合
| 材料 | 蒸気圧 | 残香 |
|---|---|---|
| エタノール | 44.6 mmHg | 1時間 |
| リナロール | 0.016 | 12時間 |
| ゲラニオール | 0.021 | 60時間 |
| サリチル酸ベンジル | 0.00017 | 384時間 |
| Iso E Super | 0.001 | 172時間 |
リナロールとゲラニオールに注目してほしい。蒸気圧はほぼ同じ(0.016対0.021)なのに、残香は5倍違う。
**ρ = −0.647 は1.0ではない。この差がその0.353の姿だ。**蒸気圧が与えるのは区間であって答えではない。
だが大前提がある
9,020件の蒸気圧のうち8,479件に「(est)」が付いている——94.0%。
私が測った欄の中で推定の比率が最も高い。(対照:引火点は56.6%。)
**つまり上の相関は、本質的に「推定した蒸気圧」と「測定した残香」のあいだの相関である。**成立することはあの推定値が正確であることを意味しない——あの推定モデルが同じ物理量を捉えている、という意味にすぎない。
それはむしろ結論を使いやすくする:実測の蒸気圧が無くても、推定値で順位づけできる。だが精密な値として引用してはいけない。
実務として
- **見知らぬ材料を手にしたら、まず蒸気圧を見る。**1より大きければトップ、0.01より小さければベース、あいだがハートだ。
- **同じ帯の内部で順位をつけない。**リナロールとゲラニオールは5倍違い、蒸気圧では見えない。
- **残香の数字が100%で測られたものかを先に確認する。**でなければ2つの数字は並べられない。
- この欄を持つ記録は21.4%しかない——見つからないときは沸点が次善の代理だ(相関の向きは同じ)。
この記事が立証していないこと
- 蒸気圧の94.0%は推定値であり、その推定法は確認していない。この記事の結論はすべてそのモデルの上に立っている。
- 使ったのは残香が100%で記された1,288件だけ——全庫2,035件の残香記録の一部であり、その2,035件自体が全庫の4.8%にすぎない。標本には選択が入っている。
- ρ = −0.647 は単調相関であって線形関係ではない。「1桁ごとに3倍」は階級の中央値から見た粗い記述で、当てはめたパラメータではない。
- 最上と最下の階級は残香欄の上限と下限で平らになっており、両端の実際の差は表より大きい。
- 3つの帯の閾値(1と0.01 mmHg)はデータから見た便宜的な切り方であって、いかなる標準でもない。
- ムエットでの試験は一切していない。