原料図鑑 · 6
原料図鑑:ゲラニオール — 198社が扱う、手の届くローズ骨格
· 7 分
実測ローズ油のゲラニオールは約15.63〜27.76%。ローズ香の主要骨格で、データベースで最も広く供給される原料です。最初のローズアコードに向きます。
天然のローズ油は初心者には高すぎます。ただ、ローズの香りの主柱のひとつは安くてどこでも手に入ります。
先に要点
- ゲラニオールはローズの主要成分のひとつで、ダマスクローズ油の実測では約16〜28%を占めます。ローズを学ぶなら、まずこれとその一族から。
- リナロールと同じ授業の生徒です:純品は弱い感作原、酸化すると感作性が明らかに強まる。密封、遮光、開栓日の記録を。
- 供給業者198社、当社データベースで最も広く扱われる原料です。安くて、どこでも買えます。
基本記録
| CAS | 106-24-1 |
| 分子式 | C₁₀H₁₈O(リナロールと同じ分子式 — 同じ原子の別の組み方) |
| 分子量 | 154.25 |
| 香調 | 甘い、フローラル、フルーティ、ローズ、ワキシー、シトラス、シトロネラ |
| 強さ | 中 |
| 持続性 | 60時間(原液、ムエット上) |
| 比重 | 0.870–0.885(25 °C) |
| 推奨保存 | 24か月以上(冷暗所、密封) |
| 収載名簿 | GRAS、JECFA、CoE、FEMA GRAS、IFRA |
「同じ分子式で組み方が違う」ことを異性体と呼びます。ゲラニオール(C₁₀H₁₈O)とリナロール(C₁₀H₁₈O)は原子のリストが同じで配線が違い、片方はローズ、片方はフローラルウッディに香ります。分子の世界で最もありふれた親戚関係です。持続60時間はミドル後半で、リナロールの12時間よりずっと長い。
ローズのどれだけを占めるのか
「ゲラニオールはローズの匂い」には実測の裏付けがあります。2023年、Kumar らは Scientific Reports 誌でダマスクローズ6品系(新規選抜4+対照品種2)の精油輪郭を分析しました。
無環モノテルペンアルコールの**シトロネロール(20.35–44.75%)とゲラニオール(15.63–27.76%)**が最も高く、次いでノナデカン(13.02–28.78%)などの長鎖炭化水素だった。
読み方は2つ:
- ゲラニオールとシトロネロールを合わせるとローズ油の約4〜7割(2つの実測範囲の端点を足した当方の推算で、論文の原文ではありません)。この2本にフェネチルアルコールを足せば、ローズの香りの骨格が手に入ります。(当社データベース:ゲラニオール198社、シトロネロール119社、フェネチルアルコール110社。)
- 同じローズでも品系が違えば数字は大きく違います。シトロネロールは20%から45%まで。ロット差の回の品系版です。「ローズ油」という言葉はひとつの決まった処方を指しません。
完全なローズには微量成分(とりわけダマセノン類)の支えもあり、骨格の先にまだ細部が残っています。それでも入門には、骨格が正しい出発点です。
古い瓶にレモンが出る理由
ゲラニオールは酸化によりシトラールを含む生成物を作り、香りと感作性が変わりえます。反応、保存、小分けは「開封した瓶はもう同じ原料ではない」へ。本稿は手の届くローズ骨格としての役割へ戻ります。
嗅ぐときは
当社の記録の香気語は7つ:甘い、フローラル、フルーティ、ローズ、ワキシー、シトラス、シトロネラ。
- 評価は10%で。中程度の強さですが、原液はワキシーでくどくなります。
- ローズの「甘い」半分を担当します。シトロネロールはワキシーで革っぽく、フェネチルアルコールは乾いた花弁と蜂蜜。ゲラニオールは3本の中で最も甘く明るい香りです。私も最初に三本を並べて嗅いだとき、ようやくローズがほどけて聞こえました。
- 入門実験:ゲラニオール5+シトロネロール3+フェネチルアルコール2(重量比)を10%希釈。いちばん安い「ローズアコード第一課」です。
一族:1本のアルコールと、並んだエステル
ゲラニオールに別々の酸をつなぐとゲラニルエステルの列になります。甘さと果実感はそれぞれ違います:
| 品目 | 何であるか |
|---|---|
| geraniol(198社) | 本体。甘いローズ |
| geranyl acetate(130社) | 酢酸エステル — より明るく果実的でラベンダーの縁。本体と併用が定番 |
| geranyl butyrate / propionate / formate(61/49/48社) | 果実調の変奏 |
| citral(135社) | 酸化生成物のひとつ(アルデヒドの半分)— 新鮮なものを1本対照に買えば、「傷んだゲラニオール」がどこへ向かうか分かります |
法規
GRAS、JECFA、CoE、FEMA GRAS、IFRAに収載。これらの名簿は使用上限を示しません。ゲラニオール自体が香料アレルギーのスクリーニング標準品目のひとつです(Hagvall 論文の記述)。肌用処方は現行IFRAスタンダードと供給業者規格書を確認し、ロットの新鮮さを気にしてください。上記のとおり、主な感作原は酸化物です。
買うときは
- 198社。当社データベースで最も相見積もりの効く原料です。原価の回の宿題はこの1本で最も報われます。
- 製造日を見ること。理由はリナロールと同じで、買っているのは「酸化までの残り時間」です。
- 同じ注文でシトロネロールとフェネチルアルコールも。ローズ三点セットが一度に揃います。
→ データベースのゲラニオール:全物性、供給業者一覧、推奨の組み合わせ。 → シトロネロール|フェネチルアルコール|シトラール|香調で検索:「ローズ 甘い」で隣人を探せます。
参考文献
L. Hagvall ほか, Fragrance compound geraniol forms contact allergens on air exposure, Chemical Research in Toxicology, 20(5), 807–814 (2007). PMID 17428070
A. Kumar ほか, Phenotyping floral traits and essential oil profiling revealed considerable variations in clonal selections of damask rose (Rosa damascena Mill.), Scientific Reports, 13, 8101 (2023). PMID 37208367