はじめての調香 · 84
「材料の万能度ランキング」に見える欄があるが、上位100本のうち7本はサプライヤー0社だ
· 6 分
データベースには誰も使っていない potential_uses という欄がある。記録しているのは「この材料はどの香型に使えるか」——7,807件の記録、72,233件の香水用途、ハーバル、ウッディ、フローラルからフゼア、シプレ、オリエンタルまで。新手が欲しがるもの、つまり客観的な万能度ランキングそのものに見える。だがサプライヤー数と突き合わせると崩れる。香型数の上位100本のうち38本はサプライヤーが10社未満、7本は0社。上位500本では33本が0社だ。そして供給数との Spearman 相関は 0.365 しかない。最も直接的な反例はパチュリ油——954件の処方で14類すべてにまたがると測ったのに、この欄が与える香型数は77で、サプライヤー0社のズドラヴェツ・アブソリュートより下にいる。
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データベースに、これまで使ってこなかった欄が1つある。potential_uses だ。
記録しているのは相性のよい材料ではなく、香型——この材料はどんな種類の作品に使えるか。
規模は小さくない
- 7,807件の記録に内容がある(全庫の18.5%)。サプライヤー10社以上は2,616件
- 標識は FR(香水)72,233件、FL(風味)11,132件、FL/FR 4,492件
- 1件あたりの用途数:中央値3、平均12.4、最大326
香型の名前は見慣れたものだ。
| 香型 | 出現数 |
|---|---|
| ハーバル | 1,260 |
| ウッディ | 1,186 |
| フローラル | 1,170 |
| バルサム | 887 |
| アンバー | 798 |
| シトラス | 797 |
| フゼア(fern) | 752 |
| グリーン | 734 |
| スパイス | 730 |
| オリエンタル | 698 |
| ⋯ | |
| シプレ(chypre) | 506 |
新手がいちばん欲しがるリスト、つまり「1本の材料がいくつの香型に入れるか」に見える。
ランキングはこうなる
香水(FR)の用途を重複除去して並べる。
| 材料 | 香型数 | サプライヤー |
|---|---|---|
| リナロール | 269 | 135 |
| coranol(Firmenich) | 265 | 15 |
| 左旋リナロール | 262 | 25 |
| エチルリナロール | 247 | 26 |
| freesia heptanol | 246 | 35 |
| ズドラヴェツ・アブソリュート | 201 | 0 |
| citrus ocimenol acetate | 186 | 1 |
| leerall | 182 | 40 |
| citronellyl senecioate | 174 | 5 |
| β-セスキフェランドレン | 169 | 1 |
| バニリン | 166 | 193 |
1位のリナロールは筋が通る——このデータベースで最も多く現れる分子だ。
だが6位のズドラヴェツ・アブソリュートはサプライヤー0社である。
これがどれくらい一般的かを測る
FR 用途を持つ材料は4,618本(中央値5、平均16.5、90パーセンタイル55、99パーセンタイル116)。
上位群を分けて見る。
| サプライヤー10社未満 | サプライヤー0社 | |
|---|---|---|
| 香型数 上位100本 | 38本 | 7本 |
| 香型数 上位500本 | 196本 | 33本 |
上位100本の3分の1以上が、ほとんど買えない材料だ。
全体の相関も高くない。香型数とサプライヤー数の Spearman 相関係数は 0.365。
ゼロではない——この欄には確かに信号がある。だが「この材料がどれだけ使われているか」の代理指標ではない。
最も直接的な反例
〈「主力原料」は測れる〉では、954件の公開処方を題名で14の類型に分け、各材料がいくつの類型にまたがるかを数えた。
そのときの結果は、パチュリ油が14類すべてにまたがる最も万能な1本だった。
そしてこの欄がパチュリ油に与える香型数は77——coranol(265種、15社)やズドラヴェツ・アブソリュート(201種、0社)よりずっと下だ。
2つの「万能度」の測り方が、違う答えを出す。
なぜこうなるのか
この欄がどう生成されたかは確認できないが、データの形が手がかりをくれる。
potential_uses の値は香型ページへのリンクの束だ。つまり1本の材料の「香型数」は、実際にはいくつの香型ページがそれを載せているかである。
その数字が反映しているのは編纂者の相互参照がどれだけ充実しているかであって、産業が実際にどれだけ使っているかではない。マイナーだが詳細に記載された材料が、よく使われるが記載の簡素な材料より上に来る。
サプライヤー0社の材料が上位10位に入れる理由はこれで説明がつく。
では何に使えるのか
- **ランキングではなく「この材料をどの方向で考えられるか」の発想リストとして使う。**フゼアとシプレの下に載っているなら、それは試す価値のある方向だ。
- 逆向きに使うほうが確かだ:シプレを作りたいなら、chypre と標識された506件がどの材料かを見る。それはランキングではなく候補名簿だ。
- **「どれだけ使われているか」を判断するならサプライヤー数か処方コーパスを使う。**どちらにも偏りはある(サプライヤー数の罠、コーパスの偏り)が、少なくとも測っているのは使用だ。
- 高スコアで低サプライヤーの組み合わせ自体が意味のある信号だ——たいていそれは、詳細に記載されているが市場ではマイナーな材料である。
この記事が立証していないこと
potential_usesがどう生成されたかは分からない。「香型ページの相互参照」はデータの形からの推論であって、確認した機構ではない。- **Spearman 0.365 は相関であって因果ではない。**サプライヤー数自体も使用量の完全な代理ではない。
- **FR と FL/FR の標識だけを重複除去して数えた。**FL(風味)の11,132件は扱っていない。
- 「香型」の命名は標準化されていない(herbal と fern は別の階層のものだ)ので、269 と 77 の比較自体が精確ではない。
- パチュリの対照はまったく別の2つのデータ源にまたがる——一方は954件の処方の14類型、他方はこの欄の香型ページ。分類の粒度が違うので「77 対 14」は同じ物差しではない。
- どの用途標識の正確さも評価していない。