はじめての調香 · 83
皮膚毒性欄の94.5%はウサギの致死量で、感作性は1件しかない
· 6 分
前回はヒトのデータを持つ記録を数えた。今回はもっと基本的な問いを立てる——毒性欄が測っているのは、あなたが実際に使う経路なのか。サプライヤー10社以上の3,156本のうち、経口毒性にデータがあるのは51.7%、皮膚は31.2%、吸入はわずか6.6%——調香師がいちばん使わない経路のカバー率がいちばん高い。しかもその985件の皮膚データを開いても中身は求めているものではない。94.5%が LD50 の致死量で、被験動物は888件がウサギ、そして「感作」は1件、「刺激」は4件しか出てこない。皮膚の問いに本当に答えている欄は toxicity_dermal ではなく ghs_classification だ。
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前回はヒトのデータを持つ156件を数え、それらが誤飲の状況だと書いた。
今回は一歩戻って問う。毒性欄が測っているのはどの経路なのか。
カバー率が必要性と逆になっている
サプライヤー10社以上の材料は3,156本。3つの毒性欄のカバー率はこうだ。
| 経路 | データあり | カバー率 |
|---|---|---|
| 経口 | 1,632 | 51.7% |
| 皮膚 | 985 | 31.2% |
| 吸入 | 207 | 6.6% |
調香師がいちばん使わない経路のカバー率がいちばん高い。
そして吸入——嗅ぐという行為そのもの、この産業が存在する理由——は6.6%しかない。
さらに658本は経口だけあって皮膚が無い。飲み込んだらどうなるかは引けるが、塗ったらどうなるかは引けない材料だ。
皮膚データがあっても中身が違う
985件の皮膚毒性データの中身を分けてみる。
| データの型 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| LD50(致死量) | 931 | 94.5% |
| LDLo(最小致死量) | 128 | 13.0% |
| 刺激 | 4 | 0.4% |
| TDLo(最小中毒量) | 3 | 0.3% |
| 感作 | 1 | 0.1% |
95%近くが「どれだけ塗ると死ぬか」だ。
被験動物はこうなる。
| 動物 | 件数 |
|---|---|
| ウサギ | 888 |
| マウス | 181 |
| ラット | 151 |
| モルモット | 111 |
皮膚毒性欄の実際の中身は、ウサギの急性致死量である。
だが調香師の問いは別だ
材料を香水に入れるとき心配になるのは、
- アレルギーを起こすか。(感作性)
- 肌が赤くなったりヒリつくか。(刺激性)
- 日光で反応するか。(光毒性)
この3つに toxicity_dermal 欄が答えた回数は、1回、4回、0回だ。
欄の名前が皮膚の問いに答えているように見せているが、答えているのは急性毒性学の問いだ。
答えは別の欄にある
皮膚の問いに答えるのは ghs_classification のほうだ。
GHS の分類項目にはこれらがある。
- H317 — アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ(皮膚感作性)
- H315 — 皮膚刺激
- H319 — 強い眼刺激
以前に測った:全庫で GHS 欄に皮膚感作性を含むのは63件で、ゲラニオール198社、シトラール135社、ユーカリ油129社、シトロネロール119社、オイゲノール97社——どれも日常的に使う材料だ。
具体的な対照:ティーツリー油はサプライヤー101社で、すべての精油の中で最も多くの公表アレルギー症例を起こしている。その toxicity_dermal 欄は一文だけだ。
経皮ウサギ LDLo 5000 mg/kg
そして GHS 欄には H315(皮膚刺激)と H317(皮膚感作性区分1)が同時に入っている。
同じ材料、2つの欄、まったく違う情報量。(この材料は原料図鑑に別途書いた。)
ただし GHS 欄のカバー率は低い
公平に書く。GHS 欄は全庫で359件(0.9%)、サプライヤー10社以上の3,156件では337件(10.7%)しか埋まっていない。
だから正しい言い方は「GHS 欄を見ればいい」ではなく、こうなる。
toxicity_dermalにデータはあるが、それはあなたの問いの答えではない。ghs_classificationが正しい欄だが、9割の材料は空だ。- どちらも引けないとき、本当の答えは IFRA スタンダードとサプライヤーの SDS にある。
実際にどうするか
- **
toxicity_dermalで肌に使えるかを判断しない。**測っているものが違う。 - **まず
ghs_classificationに H315/H317/H319 があるかを見る。**あればそれが直接の答えだ。 - 両方空でも安全を意味しない。0.9% のカバー率では「書いていない」にほとんど情報量が無い。
- **処方の用量は IFRA を引く。**その問いのために作られた文書だ。
- 光毒性は3つめの問いで、それは
notes欄にある。46件が肌に使うなと直接書いている。
この記事が立証していないこと
- **これは欄の中身の分類であって毒性学の評価ではない。**キーワード(LD50、sensit、irritat)で欄の文字列を照合しただけで、原典は読んでいない。
- 「感作は1件」はこの文字列が
toxicity_dermal欄に現れた回数であって、世界で1本しか感作試験をしていないという意味ではない。感作のデータはたいてい別の場所(GHS 欄、IFRA 文書、REACH 一式)にある。 - サプライヤー10社以上は私が設けた閾値だ。
- 3つの毒性欄のカバー率は「内容が空でなく、かつ
Not determinedでもない」ことを数えたもので、内容の質も年代も評価していない。 - どの材料の SDS も IFRA の条文も調べていない。
- GHS 区分はサプライヤーの申告で社ごとに食い違いうる——β-カリオフィレンでは GHS 欄と毒性欄が矛盾していた。