はじめての調香 · 82
156件の記録にヒトの毒性データがあり、そのうち57件は被験者が子どもだ
· 6 分
毒性欄はたいていラットとマウスの話をしている。だが全庫には156件、ヒトの数字を持つ記録がある——表示は oral-man(102件)、oral-child(57件)、oral-human(67件)、oral-woman(1件)。うち121件は TDLo(最小中毒量)、89件は LDLo(最小致死量)だ。そしてサプライヤーの多い顔ぶれはマイナーな化学品ではない。ティーツリー油101社、サリチル酸メチル88社、酢酸82社、クマリン74社、カンファー66社、ビターアーモンド油37社。これらの数字はすべて誤飲の状況であって、肌に載せる用量とは無関係だ——ただしその存在自体が1つのことを語る。これらの材料は救急外来を通っている。
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毒性欄は見慣れると麻痺してくる。たいていこう書いてある。
経口ラット LD50 > 5000 mg/kg
**ラット、マウス、モルモット、ウサギ。**数百件も見ればその数字は背景になる。
「oral-man」を見るまでは。
156件
全庫の toxicity_oral 欄を走査してヒトの表示を探した。
| 被験者の表示 | 件数 |
|---|---|
| oral-man | 102 |
| oral-child | 57 |
| oral-human | 67 |
| oral-woman | 1 |
合計156件が少なくとも1つのヒトのデータを持つ(1件が複数の表示を持ちうる)。
経口毒性データを持つ記録は全部で5,185件なので、ヒトのデータは 3.0% にあたる。
データの種類はこう分かれる。
- TDLo(最小中毒量):121件——毒性影響が観察された最小の用量
- LDLo(最小致死量):89件——死亡が記録された最小の用量
89件。
それはマイナーな化学品ではない
サプライヤー数で並べる。
| 材料 | サプライヤー | ヒトのデータ |
|---|---|---|
| ティーツリー油 | 101 | TDLo 500 µL/kg |
| サリチル酸メチル | 88 | LDLo 355 mg/kg |
| 酢酸 | 82 | TDLo 1470 µg/kg |
| クマリン | 74 | TDLo 87 mg/kg |
| (±)-カンファー | 66 | TDLo 51 mg/kg |
| オルト-グアヤコール | 61 | LDLo 43 mg/kg |
| クスノキ樹皮油 | 50 | LDLo 50 mg/kg |
| 塩酸 | 48 | LDLo 2857 µg/kg |
| パイン油 | 38 | TDLo 4700 mg/kg |
| ビターアーモンド油 | 37 | LDLo 107 mg/kg |
| テレピン油 | 35 | LDLo 2857 µL/kg |
| メース油 | 34 | TDLo 400 mg/kg |
ティーツリー油、サリチル酸メチル、クマリン、カンファー、ビターアーモンド油——家にあるものばかりだ。
(クマリンとパイン油はこの連載で書いたが、そのときこの名簿に載っていることに気づいていなかった。)
これらの数字が語れること、語れないこと
**すべて誤飲の状況だ。**TDLo も LDLo も飲み込んだあとに起きたことを記録している。処方でやっているのは皮膚接触だ。用量も吸収経路もまったく違い、換算はできない。
**安全上限でもない。**LDLo は「記録された最小の致死量」——症例報告の最小値であって、線ではない。その下が安全という意味でも、上が必ず致死という意味でもない。
**標本は事故だ。**この種のデータは中毒症例と職業暴露の報告から来る。設計された実験ではない。だから数字があるかどうかは、誰かが救急外来に運ばれて報告に書かれたかどうかで決まる。
**57件の子どものデータはとくにそう読む。**存在するのは、それが起きたからだ。
では何の役に立つのか
**1.「この材料は救急外来を通った」という信号になる。**ヒトのデータが無いことは安全を意味しないが、有ることは現実に記録可能な被害を起こしたことを意味する。
**2.桁は比較できる。**同じ LDLo で、オルト-グアヤコール43 mg/kg、クスノキ樹皮油50 mg/kg、ビターアーモンド油107 mg/kg、サリチル酸メチル355 mg/kg。1桁違うものを同じ慎重さで扱うべきではない。
**3.保管と表示の問題を思い出させる。**これらは棚にあり、棚のそばには人がいるかもしれない。子どもと調香イベントをやるの記事で、コミュニティの意見のうち最も価値があったものはまさにこの点だった。
**4.脅しには使えない。**これらの材料は合法で、よく使われ、正しい使い方では問題にならない。毒性データの存在と「使えない」の間には、用量・経路・暴露状況の3つが挟まっている。
実際にどうするか
- **
oral-manやoral-childを見たら、まず TDLo か LDLo かを見る。**大きく違う。 - **誤飲の用量を皮膚の用量に換算しない。**経路が違う。
- **表示を付け、施錠し、食品容器に小分けしない。**この名簿のいちばん直接的な用途だ。
- **ヒトのデータが無いことは安全を意味しない。**引用できる症例が無いだけだ。
- **処方の用量を判断するなら IFRA スタンダードを見る。毒性欄ではない。**2つの欄は別の問いに答えている。
この記事が立証していないこと
- **これは欄の走査であって毒性学の分析ではない。**数えたのはデータベースの記載で、原典には1件も当たっていない。
- **156件は oral-man/child/human/woman の4つの文字列で引いた。**別の書き方は漏れるので、これは下限だ。
- **TDLo と LDLo の定義は一般的な説明を使っている。**出所によって判定が違いうる。
- 1件が複数のヒト表示を持ちうるので、4分類の合計は156を超える。
- これらのデータの年代は古いものが多く(パイン油のものは1981年)、症例報告の質もまちまちだ。
- **どの材料の IFRA 制限量も調べていない。**この記事は処方の用量をまったく扱っていない。
- **「ヒトのデータが有る=救急外来を通った」は推論だ。**職業暴露や臨床試験に由来するものもありうる。