原料図鑑 · 122
原料図鑑:パイン油(pine oil)—— まったく違う2つの製法が1つの名前を共有し、等級は商品名に直接書かれている
· 8 分
CAS 8002-09-3、サプライヤー38社、純度欄は80.00から100.00。TSCA の定義はこれを「テレピン油残渣の高温蒸留、またはピネン類の接触水和」の産物だと言う——化学的にまったく違う2つの経路が、1つの名前と1つの CAS を共有している。そしてサプライヤー項目には PINE OIL 50%、65%、90% が並び、同じデータベースには「pine oil 60」(純度60から100)と「pine oil 85」という独立記録まである。等級が商品名に入っているのだ。さらにこれは全庫で数少ないヒトの毒性データを持つ記録でもある——経口毒性データのある5,185件のうち、ヒトのデータを含むのは129件(2.5%)しかない。
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要点
- 名称:pine oil(パイン油)、別名 dertol、CAS 8002-09-3
- 分類:fragrance agents(FEMA 無し、
fcc_listedは No) - 香調タイプ:herbal;香調:パイン、ハーバル、ウッディ、干し草、グリーン、テルペニック、レジナス
- 残香:欄は「16 Hour(s)」——濃度の記載が無い
- 純度:80.00 から 100.00
- サプライヤー:38社
- 経口ラット LD50 3200 mg/kg;経口ヒト TDLo 4700 mg/kg
「パイン油」は物質ではなく製造カテゴリーだ
notes 欄が収める TSCA 2008 の定義は明快だ。
抽出物およびその物理的改質誘導体。テレピン油残渣の高温蒸留、またはピネン類の接触水和によって製造されるテルペンの複雑な組み合わせ。主に異性体の三級および二級環状テルペンアルコールから成る。テルペン炭化水素を含みうる⋯⋯
その「または」に注目してほしい。
この2つの経路は化学的に同じことではない。
- テレピン油残渣の高温蒸留——テレピン油をすでに蒸留したあとの残りをもう一度蒸留する。得られるのは天然由来の残留組成だ。
- ピネン類の接触水和——α-ピネンに水を加え、触媒でテルペンアルコールに変える。これは合成反応である。
一方は天然物の分留、他方は化学合成。それが1つの名前と1つの CAS を共有している。
(1つの CAS の下に別物が入る問題は、このデータベースでは CAS を共有する組の 35.6% が香調タイプすら食い違う形で現れる——〈同じ CAS の下にある記録〉。パイン油はその製法版だ。)
等級が商品名に直接書かれている
たいていの材料では等級を formulations 欄で探すことになり、しかもその欄は 1.7% の記録にしか無い。
パイン油では探す必要が無い。等級が名前に付いている。
溶解度欄が収めるサプライヤー項目。
PINE OIL 65% ⋯⋯ PINE OIL MIN. 50% ⋯⋯ PINE OIL MIN. 90% ⋯⋯ PINE 65 ⋯⋯ Pine Oil 50%
そして同じデータベースには独立記録が2つある。
| 記録 | CAS | サプライヤー | 純度欄 |
|---|---|---|---|
| パイン油 | 8002-09-3 | 38 | 80.00 から 100.00 |
| pine oil 85 | 94266-48-5 | 10 | 85.00 から 100.00 |
| pine oil 60 | 94266-48-5 | 6 | 60.00 から 100.00 |
名前の中の数字がそのまま等級で、純度の幅が名前についてくる。「pine oil 60」の規格は60から100——40ポイントだ。
**これは純度の幅の記事で分けた3つの成因とは別の書き方だ。規格欄で等級を区別するのではなく、等級を商品名に作り込んでいる。**買うときに選んでいるのは規格の範囲ではなく商品そのものになる。
(ついでに、pine oil 85 と pine oil 60 の CAS は 94266-48-5 で、本体の 8002-09-3 とは違う——CAS まで分かれている。)
あの「16時間」には濃度が無い
残香欄の元の文字列はこうだ。
16 Hour(s)
「at N%」も溶媒も無い。
〈その香調欄を書いたのは誰か〉で2人の主要な記述者の記載習慣を測った(Luebke は99.2%が濃度を記し、Mosciano は26.2%)。残香欄は別の欄だが、この記録には基準そのものが無い。
**だからその16時間が何%で測られたのか分からない。**他の材料の残香値と直接比較できない——数値欄はできるように見せるが。
ヒトの毒性データがあり、それは珍しい
toxicity_oral 欄には2件ある。
経口ラット LD50 3200 mg/kg(Food and Chemical Toxicology, 1983)
経口ヒト TDLo 4700 mg/kg:行動——興奮;行動——運動失調;行動——頭痛(Archives of Toxicology, 1981)
**「oral-man」はこのデータベースでは珍しい。**経口毒性データを持つ5,185件のうち、ヒトのデータを含むのは129件(2.5%)だけだ。
その129件でサプライヤーの多いものは、ティーツリー油101社、酢酸82社、クマリン74社、オルト-グアヤコール61社、塩酸48社、そしてパイン油38社と続く。
**TDLo は「最小中毒量」であって LD50 ではない。**毒性影響が観察された最小の用量を記録するもので、この記録が挙げる影響は興奮、運動失調、頭痛だ。
処方への意味は限られる——これは誤飲の用量であって経皮接触のものではない。ただし1つ分かることがある。この材料は家庭用製品の原料として使われており、その用途がヒトの暴露データを生むのだ。
McKenzie らは2010年に《Pediatrics》で、1990年から2006年に米国の救急外来で扱われた家庭用清掃製品関連の傷害を分析しており、その製品分類の一覧に「パイン油系クリーナー/消毒剤」が、排水管クリーナー、アンモニア、テレピン油、食洗機用洗剤と並んで入っている。
**これは香水の文脈ではない。**引用したのはパイン油の主たる身元を示すためだ——工業用・家庭用製品の原料であり、香水はその用途の1つにすぎない。FEMA 番号が無く fcc_listed が No であることの説明にもなっている。
使い方
- **買うときは名前の数字を見る。**50%、60%、65%、85%、90% は別の商品だ。
- **トップからミドル。**残香16時間(基準不明)で、香調欄のパイン、テルペニック、グリーンはいずれも揮発性の高い方向だ。
- **「干し草」という語は注目に値する。**香調欄に hay があり、松からの直感的な連想ではない。テルペンアルコールの側から来ているのかもしれない。
- FEMA が無いので、食べるものには使わない。
- **純粋なパイン感が欲しければパインニードル油を検討する。**同じ庫の
pine needle oil dwarf(12社)は香調タイプが terpenic で、別のものだ。
この記事が立証していないこと
- 嗅いだことはないし、等級違いの商品を比較してもいない。
- **2つの製法の違いが匂いに現れるかどうかのデータは無い。**TSCA の定義は両方の経路を認めているだけで、産物に差があるかは述べていない。
- **「pine oil 60/85」と本体の関係は調べ切れていない。**CAS は違う(94266-48-5 対 8002-09-3)のに名称と用途は重なり、データベースは両者の関係を説明していない。
- 残香16時間に基準が無いので、この連載の他の材料の残香値と比較できない。
- TDLo は誤飲の状況のデータで、香水の経皮暴露とは無関係だ。引用したのはヒトのデータがこのデータベースで稀だからであって、使用上のリスクを推すためではない。
- **McKenzie らの論文は救急外来の傷害の疫学であって香料研究ではない。**製品分類だけを引用し、パイン油の主たる身元が家庭用製品の原料であることを示すのに使った。
- この油に対する現行の IFRA スタンダードの条文は確認していない。