原料図鑑 · 121
原料図鑑:ネロリドール(nerolidol)—— 1つの CAS に4層の異性体が重なり、シスとトランスの香調タイプが違う
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CAS 7212-44-4、サプライヤー54社、FEMA 2772。純度欄は「96.00 から 100.00、異性体の合計」、旋光度欄は「−2.00 から +2.00」——ゼロをまたぐ幅だ。そして同じデータベース内で (E)-ネロリドールと (Z)-ネロリドールは別記録になっており、香調タイプはそれぞれ floral と waxy。備考欄はさらに、自然界では (S) 体が多く、しかも主に (S)-(E) 異性体の形で存在すると書いている。強度欄は「低」でランク1なのに、残香は100時間ある。Chan 2016 の総説は生物学上の位置をくれる——ネロリドールは植物が DMNT を作る中間体で、DMNT は草食動物に食べられて初めて誘導される揮発物だ。
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要点
- 名称:nerolidol(ネロリドール)、3,7,11-トリメチル-1,6,10-ドデカトリエン-3-オール、CAS 7212-44-4
- 分子式 C15H26O、分子量 222.37——セスキテルペンアルコール
- FEMA 2772、JECFA 1646、FLAVIS 02.018、CoE 67、構造クラス I、FCC 収載 Yes
- 香調タイプ:floral;香調:フローラル、グリーン、ワクシー、シトラス、ウッディ
- 風味タイプ:green(香調タイプと違う)
- 強度:低、ランク1;残香100時間;蒸気圧 0.001 mmHg
- 純度:96.00 から 100.00、異性体の合計
- 旋光度:−2.00 から +2.00
- サプライヤー:54社
1つの CAS に4層の異性体が重なる
この連載で見た中で、異性体の層が最も多い商品だ。
**第1層:幾何異性体。**ネロリドールには (E) と (Z) があり、データベースはそれを別記録にしている。
| 記録 | CAS | サプライヤー | 香調タイプ |
|---|---|---|---|
| ネロリドール(商品) | 7212-44-4 | 54 | floral |
| (E)-ネロリドール | 40716-66-3 | 5 | floral |
| (Z)-ネロリドール | 3790-78-1 | 3 | waxy |
| (+)-ネロリドール | 142-50-7 | 3 | — |
| ネロリドールオキシド | 1424-83-5 | 2 | — |
**(E) はフローラル型、(Z) はワクシー型。**データベース自身が、同じ分子の2つの幾何異性体を別の香調族に振り分けている。
**第2層:光学異性体。**旋光度欄は −2.00 から +2.00——**ゼロをまたぐ幅だ。**商品が左旋でも右旋でもラセミに近くてもよく、規格はそのすべてを許している。
**第3層:商品が混合物である。**純度欄は「96.00 から 100.00、異性体の合計」——その96%の中に (E) と (Z) がどんな比率で入るのかを規格は語らない。
**第4層:自然界の偏り。**備考欄はこう書く。
(S)-エナンチオマーのほうが一般的で、主に (S)-(E)-異性体として存在する。
つまり54社が売る「ネロリドール」は、4つの次元すべてに自由度がある商品だ。
そして第1層には結果がある。(E) がフローラルで (Z) がワクシーなら、異性体比の変動は純度の問題ではなく匂いの問題になる。
(「異性体の合計」という書き方は Javanol で扱ったが、あの記録は異性体ごとに別の香調タイプを与えてはいなかった。この記録は与えている。だから証拠がより直接的だ。)
強度は「低」なのに残香100時間
| 強度欄 | 低(ランク1) |
| 残香 | 100時間 |
| 蒸気圧 | 0.001 mmHg |
**静かで持続する組み合わせだ。**ランク1はこの欄の最下位で、100時間はミドルから後半にあたる。
この一族は〈サプライヤーは「非常にかすか」と書き、残香欄は394時間と書く〉で測った。サプライヤー10社以上で強度と残香の両方に値がある1,193本のうち、189本(15.8%)が低か中の強度で残香350時間以上——重量を支える一族だ。ネロリドールの100時間はその閾値には届かないが、性格は同じである。
**主役ではなく下地だ。**匂いの記述欄に的確な一文がある。「香水ではウッディ、ティー様の調子に使われる。」
香調タイプと風味タイプが違う
odor_type:floralflavor_type:green
同じ記録の2つの欄が違う分類を与えている。そして味の記述欄は Mosciano が 25 ppm で記したものだ。
グリーン、フローラル、ウッディ。フルーティ・シトラスとメロンのニュアンスを伴う。
風味の用途欄には「主に紅茶と桃のフレーバーに、またラズベリーや他のフローラル系フルーツフレーバーにも」とある。
**矛盾ではなく、2つの分類体系が同じ材料の別の面を見ているだけだ。**ただし片方の欄しか読まなければ、違う印象を持ち帰ることになる。
植物の警報シグナルの中間体だ
Chan らが2016年に《Molecules》で書いた総説の冒頭が、生物学上の位置を与えている。
ネロリドールは天然に存在するセスキテルペンアルコールで、フローラルな匂いを持つさまざまな植物に存在する。これは (3E)-4,8-ジメチル-1,3,7-ノナトリエン(DMNT)の生産における中間体として合成される。DMNT は草食動物によって誘導される揮発物で、植物を草食動物の被害から守る。
その総説は幾何異性体の件も確認している。「化学的には、ネロリドールはトランス体とシス体の2つの幾何異性体として存在する。」
「食べられて初めて作る匂い」という線はこの連載に出てきている。青葉アルコールの記事の主題がそれだった——刈った草の匂いは実は植物の警報シグナルだ、と。ネロリドールは同じ話の上流にいる。それ自体が警報なのではなく、警報を作るための原料だ。
(あの総説の本体は薬理活性だが、そこは書かない——香水と無関係だし、私にはあのデータを評価する能力が無い。)
使い方
- **ウッディとティー感の下地として。**強度が低く残香100時間なので、前に出てこない。
- 買うときは異性体比を訊く。(E) と (Z) の香調タイプはデータベース上で違うのに、規格は「合計96%」しか保証しない。
- **旋光度に金を払わない。**規格の幅がゼロをまたぐのは、それが制御されたパラメータでないことを意味する。
- **フローラル、グリーン、シトラス、ウッディの4本の線につながる。**香調欄にその4語があるからだ。
- 風味の文脈では緑茶と桃の系統で、25 ppm で評価する。
この記事が立証していないこと
- 嗅いだことはないし、(E) と (Z) の商品を比較してもいない。「(E) はフローラル、(Z) はワクシー」はデータベースの2つの記録であって、私が行った対照評香ではない。
- (Z)-ネロリドールはサプライヤー3社、(E) は5社で、どちらも商品の記録より欄が薄い。少数の記録の香調タイプから商品中の異性体比の影響を推すのは、推論であって測定ではない。
- **「異性体比が匂いに影響する」は2つの記録の香調タイプからの推論だ。**2つの異性体の匂いの閾値や強度を定量比較したデータは見つけていない。
- **Chan らの総説の薬理部分はまったく扱っていない。**引用したのは化学と生物学の背景の記述だけだ。
- DMNT の線はあの総説の一文で、ネロリドールから DMNT への酵素学の文献には当たっていない。
- **旋光度の幅がゼロをまたぐことは商品がラセミであることを意味しない。**規格がその範囲を許すという意味だ。
- 香調タイプと風味タイプの違いは2つの分類体系の結果で、それぞれの定義は調べていない。