はじめての調香 · 76
その香調欄を書いたのは誰か——8,298件の匂い記述のうち、4分の1は同じ2人の署名だ
· 6 分
このデータベースには匂いの記述を持つ記録が8,298件あり、そのうち2,102件(25.3%)は Luebke か Mosciano のどちらかの署名を持つ。Luebke は1,712件に現れ、年は1981年から2021年まで。Mosciano は928件で、年は2001年で止まる。さらに注目すべきは2人の記録の習慣が大きく違うことだ。Luebke の1,719段のうち99.2%が評価濃度を記しているのに対し、Mosciano の928段では26.2%しか記していない。溶媒はもっと開いて36.9%対1.3%。だから2人の記述が矛盾して見えたとき、最初にすべきはどちらが正しいかの判断ではなく、濃度が書いてあるかを見ることだ。
読了目安 5 分。
この連載の原料図鑑は毎回、香調欄を引用している。100本を超えたあたりで、まだ問うていなかったことに気づいた。
あの語を書いたのは誰なのか。
2つの名前
odor_descriptions 欄には形容詞だけでなく、しばしば署名が付いている。全庫を走査した。
- 匂いの記述を持つ記録:8,298件
- Luebke, William:1,712件に登場(20.6%)
- Mosciano, Gerard:928件に登場(11.2%)
- 両方:538件(6.5%)
- 少なくとも一方:2,102件(25.3%)
4分の1だ。
残る6,196件(74.7%)は大半がサプライヤー自身の製品文だ——それは別種のもので、その不揃いさは〈サプライヤーは「非常にかすか」と書く〉で扱った。
長さの違う2つの期間
署名の中の年を見ると、2人の作業期間は違う。
| 記録数 | 年の範囲 | 最も密な年 | |
|---|---|---|---|
| Luebke | 1,712 | 1981–2021 | 1985–1989 |
| Mosciano | 928 | 1989–2001 | 1990–1994 |
Mosciano の記述は2001年で止まる——つまり今日読むあの928件は、最新のものでも25年前だ。Luebke のほうは40年にまたがる。
古い記述が誤りだという話ではない。ただ、同じページに並ぶ2つの文が20年隔たっていて、別の時代の語彙の習慣で書かれている可能性がある、という話だ。
本当の違いは濃度を書いているかどうかにある
これは予期していなかった結果で、「どちらの記述が正確か」よりずっと重要だ。
2人の記述を段ごとに取り出し、「何 % で」と「何に溶かして」が書かれているかを見た。
| 記述の段数 | 濃度あり | 溶媒あり | |
|---|---|---|---|
| Luebke | 1,719 | 99.2% | 36.9% |
| Mosciano | 928 | 26.2% | 1.3% |
Luebke はほぼ全段に濃度を記し、Mosciano は4分の1にしか記していない。
溶媒の差はもっと大きい。37% 対 1.3%。
これがその記述を再現できるかどうかを決める。「ジプロピレングリコール中10%で甘くバルサミック」は繰り返せる記述だが、「甘くバルサミック」は繰り返せない。原液と1%は別物だからだ——それは〈オリスバターは壊れたのか〉で測った。
解ける例:WS-3
WS-3 は涼感剤で、サプライヤー36社。その記録には2人とも言葉を残していて、一見矛盾している。
Luebke(2009):ジプロピレングリコール中 25.00%。穏やかなメントール感、ミント感。
Mosciano(2000):10.00% で。ほとんど無臭で、わずかにアルコール感と冷涼感。
一方はミント、一方はほとんど無臭。
だが濃度を読み込むと矛盾は縮む。**25% 対 10%、2.5倍の差だ。**蒸気圧が 0.000085 mmHg しかなく強度欄が「低」の材料なら、10% と 25% の間に「ほとんど無臭」と「穏やかなミント感」の差が出るのは筋が通る。
2人の見解の相違というより、同じものの2つの用量に見える。(この材料自体は原料図鑑に別途書いた。)
解けない例:アンブロキサン
同じ手は アンブロキサン では効かない。
Luebke(1987):ジプロピレングリコール中 1.00%。アンバーグリス、古紙、スイート、ラブダナム、ドライ。
Mosciano(1991):ウッディ、パイン、シダー様。グリーンな種子感とティー様のニュアンスを伴う。
**2つの文に共通する語が1つも無い。**片方はアンバーグリスと古紙、片方は松と茶だ。
そして今回は濃度で説明できない。Mosciano の段には濃度が書かれていないからだ。
彼が何 % で嗅いだのか、何に溶かしたのかが分からない。だからこの2文は比較できないのであって、どちらかが誤っているのではない。
(ちなみにその記録の下にはサプライヤーの文が10段あり、大半は「アンバー、ウッディ、ムスク」と言っている——それは第3の声で、商業的な動機がある。)
データベースを読む人にとっての意味
- **匂いの記述を見たら、まず「at X% in Y」の前置きを探す。**あればその文は再現できる。無ければ、それは誰かが未知の用量で得た印象だ。
- **2つの記述を多数決に使わない。**濃度も年代も溶媒も違いうる。
- **サプライヤー文は第3の種類として分けて見る。**署名も濃度も無く、商業的動機がある。
- **同じ材料の2つの記述に共通語が無くても、どちらかが誤りとは限らない。**まず比較可能かを確かめる。
- **私自身もこの規則に従う。**この連載で香調欄を引くとき、その段に濃度があれば濃度ごと書く。無ければ、それは私の引用の限界であって、その材料の性質ではない。
この記事が立証していないこと
- **この2人が誰か、評価手法や訓練の背景は調べていない。**この記事が扱うのは欄に残ったもの——名前、年、濃度、溶媒——だけだ。
- **署名の照合は文字列一致だ。**同じ人が別の書き方をしていれば漏れるので、20.6% と 11.2% は下限である。
- **「濃度あり」は
at N %の形を正規表現で探したものだ。**別の書き方で濃度を示している場合は「無し」に数えている。 - **「濃度が無ければ比較できない」は私の判断基準であって、あの2人の誤りではない。**雑誌の連載とデータベースの欄では体裁が違い、P&F の連載が毎回濃度を書く必要は無い。
- **年は署名の括弧から取った。**それは発表または収録の年で、必ずしも嗅いだ年ではない。
- **この2人の署名が無い74.7%は、それ以上分類していない。**サプライヤー文、無署名の記述、他の出所が混ざっているだろう。
- **この記事はどの記述の正確さも評価していない。**私はどの材料も嗅いでいない。