はじめての調香 · 75
精油とアブソリュートは同じ材料ではない——50組の対から見えた3つのこと
· 8 分
データベースには「X oil」と「X absolute」の両方の記録があり、どちらにもサプライヤーがいる植物が50種ある。並べると、データベース自身が3つの一貫した方向を示す。1つ、香調タイプ——45組が両方に値を持ち、14組(31%)で食い違う。しかも方向が読める。フランキンセンス油は terpenic がアブソリュートで balsamic に、ラバンジンは floral が herbal に、ゼラニウムは floral が green に。2つ、強度欄——7組が両方に値を持ち4組で食い違うが、その4組すべてでアブソリュートが油より1段低い。例外は無い。3つ、残香——6組が両方に値を持ち、2組でアブソリュートが長く(ガルバナムは72時間から400時間)、4組が同じ、短い組はゼロ。サプライヤー総数は油2,287社に対しアブソリュート534社。
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前回、同じ CAS の記録の 35.6% が別の香調タイプに分類されていることを測り、いちばん多い原因が抽出法の違いだと書いた。
今回はそれを、項目ごとに比較できる1つの問いに絞る。同じ植物の油とアブソリュートは、何が違うのか。
データ
名前が「X oil」と「X absolute」の形で、どちらにもサプライヤーがいる植物を引くと50組ある。
同じ欄が全部埋まっているわけではないので、以下の3つは標本数が違う。各項目の分母を明記する。それがその結論の硬さを決めるからだ。
1.香調タイプ:31% が食い違い、方向は読める
45組が両方に香調タイプを持ち、うち14組が食い違う——31%。
| 植物 | 油 | アブソリュート |
|---|---|---|
| フランキンセンス | 93社 · terpenic | 10社 · balsamic |
| ラバンジン | 51社 · floral | 37社 · herbal |
| ゼラニウム | 38社 · floral | 22社 · green |
| コリアンダーシード | 86社 · floral | 2社 · herbal |
| マジョラム | 65社 · spicy | 2社 · herbal |
| アンゼリカルート | 46社 · amber | 1社 · musk |
| ラベージルート | 37社 · spicy | 3社 · herbal |
| アンゼリカシード | 33社 · terpenic | 1社 · spicy |
| コリアンダーリーフ | 30社 · green | 1社 · herbal |
| オークモス | 1社 · green | 42社 · mossy |
| トンカビーン | 1社 · coumarinic | 40社 · tonka |
| ヘイ(干し草) | 6社 · herbal | 34社 · hay |
| マスティック | 8社 · balsamic | 15社 · resinous |
| flouve | 3社 · mossy | 2社 · tonka |
**方向はランダムではない。**上の6行を見てほしい。油の側の語は terpenic、floral、spicy、green——揮発性の高い分子が主導している。アブソリュートの側は balsamic、herbal、mossy、musk、tonka——重くて残るものばかりだ。
**水蒸気蒸留は揮発性の高いものしか運べない。溶剤抽出はワックスも色素も高沸点のものも一緒に運ぶ。**両者の香調タイプは、その差に付いた名前だ。
2.強度欄:4組が食い違い、アブソリュートは全部1段低い
両方に強度欄の値があるのは7組しかない(この欄のカバー率は低い)。そのうち4組が食い違う。
| 植物 | 油 | アブソリュート |
|---|---|---|
| ラブダナム | 高 | 中 |
| アンブレットシード | 高 | 中 |
| シスタス枝葉 | 高 | 中 |
| ミルラ | 中 | 低 |
4組すべてでアブソリュートが1段低く、逆は1つも無い。
**n=4 なので、これは方向の示唆であって規則ではない。**ただし前節と整合してはいる。アブソリュートでは揮発性の高い成分が蒸留器の外に置いてきぼりになっており、「強度」という欄が測っているのは嗅いだときの衝撃力だ。
3.残香:アブソリュートが油より短い組はゼロ
両方に残香値があるのは6組だけ。
| 植物 | 油 | アブソリュート |
|---|---|---|
| ガルバナム | 72時間 | 400時間 |
| ネロリ | 116時間 | 192時間 |
| パチュリ | 400 | 400 |
| シスタス枝葉 | 400 | 400 |
| ラブダナム | 400 | 400 |
| アンブレットシード | 332 | 332 |
2組でアブソリュートが長く、4組が同じ、短い組はゼロ。
ガルバナムの組は 5.6 倍違う。4組が同じなのは、どれも 400 に当たっているからだ——それはこの欄の天井なので、ここでの「同じ」は「どちらも欄が測れる範囲を超えた」という意味になる。
**この欄の標本は6組しかなく、うち4組が天井に食われている。**厳密には、このデータベースが実際に差を見ているのは2例だけだ。
サプライヤー:油はアブソリュートの4.3倍
これは50組すべてに値があり、カバー率が完全だ。
- 油の合計 2,287社
- アブソリュートの合計 534社
- アブソリュートのほうが多いのは9組だけ——オークモス、トンカビーン、ヘイ、ラブダナム、シスタス、マスティックなど
その9組には共通点がある。**ベースノートとして使われる材料だ。**オークモス、トンカビーン、ヘイ、ラブダナム——誰もその「油」を買わない。その植物の価値が重い側にあるからだ。
論文の側は何と言っているか
同じ植物の油とアブソリュートを直接比較した論文は見つけられなかった。これがこの記事の最大のデータの欠落で、ここで明記しておく。
ただ、十分に近い論文が1本ある。Léva らは2026年に《Molecules》で2種類の蒸留を比較した——実験室規模の水中蒸留(HD、乾燥バイオマス)と半工業規模の乾式水蒸気蒸留(SD、生バイオマス)で、真正ラベンダー、セージ、ヒソップ、ペパーミント、スペアミント、セイヨウノコギリソウ、トウヒの7種を対象にしている。
結果は2層ある。
HD は一貫して SD より化学的に多様な揮発物プロファイルを与えた。
教師なしの主成分分析と階層的クラスター分析は、すべての種について HD 画分と SD 画分の絶対的な二分分離を達成した。
**これは2つの蒸留法の間の差だということに注意してほしい。**どちらも水と熱で、違うのは乾料か生料か、実験室か半工業かだけ。それでも統計的には完全に分かれる。
**なら水蒸気蒸留と溶剤抽出の差はもっと大きいはずだ。**これはあの論文の結論ではなく私の推論だが、方向ははっきりしている。
実際にどうするか
- 材料を伝えるときは抽出法も一緒に伝える。「ゼラニウム・アブソリュート」と「ゼラニウム油」はこのデータベースでは別の香調タイプだ。
- **ベースが欲しければアブソリュート、トップからミドルなら油。**アブソリュートのサプライヤーが多い9組はすべてベース材料だ。
- **油の使用量からアブソリュートの使用量を推定しない。**強度欄の4組はすべて1段違う。
- **アブソリュートは色も粘度も違う。**溶剤抽出が運んできたワックスと色素が完成品に入る。
- 抽出法を替えたら評価し直す。新しい材料として扱う。
この記事が立証していないこと
- 3項目の標本数は大きく違う——香調タイプ45組、強度7組、残香6組。後の2つは方向の示唆にとどまる。
- **50組は「X oil」「X absolute」の文字列照合で引いた。**別の命名(concrete、resinoid、CO2 extract)は入っておらず、同じ植物にはもっと多くの形態がありうる。
- **香調タイプも強度も残香もデータベースの判断であって私の測定ではない。**食い違いは実差かもしれないし、別々の時期の編集かもしれない。この限界は前回にも書いた。
- 残香欄の400は天井なので、「4組が同じ」は本当に同じ長さという意味ではない。
- **Léva らの論文が比べたのは2つの蒸留法であって油とアブソリュートではない。**そこから取っているのは「抽出条件が統計的に分離可能な組成差を生む」ことで、溶剤抽出への外挿は私の推論だ。
- どの組についても実際の成分分析は調べていない。
- サプライヤー数は収録状況であって販売量ではない。