データの読み方 · 11
Ambroxan の「400 時間」は、その試験が止まった場所であって、持った長さではない
· 11 分
元のフィールドは「> 400 hour(s) at 10.00 % in dipropylene glycol」——下限値、10 分の 1 の濃度、溶剤入り。数値カラムはそのどれも残さず、400.0 だけを渡してくる。原液の原料と三度並べて、三度とも成立しなかった。そして二つ目の誤りは、この誤差に向きがあると思い込んだことだった。
英語のフォーラムに、かなり具体的な質問が投稿された。Santal 33 と Tobacco Vanille の dupe(コピー品)用に調合済みのパフュームオイルを買っている。香りは 8 割ほど似ているが、拡散と持続がどうしても足りない。地元のサプライヤーに在庫がある材料——Iso E Super、Hedione、Cedramber、Cashmeran、Ambroxan、Galaxolide ほか——を列挙したうえで、このなかのどれを何パーセント足せば、元の香りを大きく変えずに性能を上げられるか、と尋ねている。
最も支持された返信は、処方を教えなかった。こう答えている。香水を今より長持ちさせることはできない。持続を上げるために足したものは、例外なく香りも変える。
これはデータで答えられるはずだ、と最初に思った。手元には 4 万件あまりの原料データがあり、持続時間の記録もある。では調べよう——Ambroxan は実際どれほど強いのか。
三度クエリを走らせた。三度とも成立しなかった。そして成立しなかった理由のほうが、元の質問よりずっと面白かった。
一度目:俗説が崩れたように見える
まず基準を定める。持続時間と供給元がそろっている原料は 1,871 件。この 1,871 件はそのままでは使えず、二種類を先に外す必要がある。266 件は打ち切り値で、「> 400」「< 1」のような閾値であって測定値ではない。別の 246 件は全濃度未満での評価か、濃度の記録がない。13 件が両方に該当するため、残りは 1,372 件、中央値 76 時間。前回と同じ基準である。
この 1,372 件のなかで Iso E Super は 172 時間。同等以上が 462 件あり、上位 33.7% に入る。 上位三分の一。悪くはないが、それだけのことだ。
Ambroxan は。カラムには 400 時間とある。強そうに見える。
ここで手を止めていたら、この記事はこう書かれていた——この二つは思われているほど特別ではない、長持ちする材料は何百とある、神格化をやめよう。
そしてそれは間違っていた。
二度目:入手しやすさ
先に進む前に、別のことを調べた。この二つがどれくらい買いやすいのか。
供給記録のある原料は 21,494 件、そして供給元数の中央値は 3 社である。90 パーセンタイルでようやく 13 社、99 パーセンタイルで 57 社。大多数の原料は二、三社しか扱っていない。
Iso E Super:79 社、上位 0.42%。 Ambroxan:61 社、上位 0.86%。
「買いやすい」どころではない。入手しやすさで全データベースの上位 1% に入っている。
なぜいつもこの二つの名前なのかは、これで説明がつく。投稿者が挙げたリストは彼が選んだものではなく、地元のサプライヤーにたまたま在庫があったものだ。そしてそのリストがああなるのは、これらが世界中で売られているからにほかならない。
そこでもう一度確かめた。買いやすい材料は本当に長持ちするのか。1,372 件で順位相関をとると Spearman ρ = −0.046。ゼロ、しかもごくわずかに負である。このデータでは、供給元数と持続時間のあいだに単調な関係は見えない。(明らかな単調傾向を否定するだけで、両者が何の意味でも無関係だと示すものではない。)
この時点で満足していた。筋の通った話だ——この二つは最強ではなく最も入手しやすいだけで、人は「よく耳にする」を「強い」と取り違えている。
ただし、いま計算したことの半分は無効だった。
三度目:元の文字列を開く
最後にしたのは、あの整った 400.0 がどこから来たかを確かめることだった。元のフィールドはこうなっている。
> 400 hour(s) at 10.00 % in dipropylene glycol
限定詞が三つ。どれひとつ数値カラムには残らない。
「>」——これは測定値ではなく下限である。試験は 400 時間で終了し、その時点でまだ残っていた。本当の数字は誰も知らない。400 より大きいことだけがわかっている。
「at 10.00 %」——10 分の 1 の濃度での測定。私が比較対象にした 1,372 件はすべて 100% である。
「in dipropylene glycol」——DPG に溶かした状態。これはプロピレングリコール(PG)とは別の物質で、後述のとおり同じデータ内に両方が現れる。
三つ目が皮肉なところだ。同じスレッドの最上位の返信は、市販の調合済みオイルをこう切り捨てている。「どうせ DPG か何かでさんざん薄められている」。 コミュニティが「水増しの証拠」として挙げるその溶剤こそ、この権威ある数字が測定された環境だった。
そして致命的なのは、Ambroxan はそもそも 1,372 件に入っていないという点である。打ち切り値であり、かつ全濃度未満——除外規則に二重で該当する。私は二度とも、まったく種類の違うものを並べて順位をつけていた。
二つ目の誤りは、この誤差に向きがあると思ったこと
順位づけが無効だと気づいたあと、最初に浮かんだのは反転させることだった。10 分の 1 の濃度で 400 時間の試験を超えているなら、計算より強いはずだ、と。
その反応もまた誤りで、しかも一度目より見えにくい。
DPG は有効成分を 10 分の 1 にするだけのものではない。それ自体が別の測定媒体であり、蒸発にも、試香紙への吸着にも、気相に到達する濃度にも影響する。そしてこのフィールドは、付与量も基材も温湿度も反復回数も、嗅いだ人も記録していない。それらがない以上、10 分の 1 濃度での 400 時間を「原液ならもっと長い」と言う根拠はない。「もっと短い」と言う根拠がないのと同じである。
擁護できる言い方はひとつだけだ。この数字は、あの順位表のどこにも置けない。上にも下にも置けない。
「Ambroxan は長持ちする」はおそらく正しい。ただしその確信は、このフィールドから来たものではない。
「Ambroxan を足せば性能が上がる」という期待については、このデータでは判定できない。一つの原料の持続を完成した香水の持続と取り違えており、このフィールドは後者を測ったことがないからだ。3% 足して得られるのは 400 時間ではなく、「Ambroxan が 3% 増えた香水」である。
最上位の返信はもっと強く言っていた。強くするものは、必ず別のものにも変える。 それは経験を積んだ人の判断であって、このデータが裏づけも反証もできるものではない。知覚できる、そして受け入れがたい変化になるかどうかは、処方と用量と、実際に嗅ぐことが決める。ここに置いたのは、それが向きとして正しいからであって、私が検証したからではない。
400 という数字を何件が共有しているか
1,372 件に戻る。そのうち 182 件、13.3% が、ちょうど 400 時間である。
7 件に 1 件が同じ値を共有している。
ここは「400 はこの試験が止まる場所だ」と書くつもりだった。事実確認で止められた。クリーンな標本のうち 9 件が 400 を超えている——最高 901 時間、いずれも at 100.00 % で > はない。データベース全体では 17 件が 400 を上回る。つまり 400 は硬い上限ではなく、物差しはその先まで届いている。
そのぶん、あの 182 件の意味は単純どころか厄介になる。どれが本当に 400 時間を測った値で、どれが途中で打ち切って 400 と記録した値なのか、区別がつかない。 カラム上では見分けがつかないのだ。
さらに厄介なのは、除外した 266 件の打ち切り値の多くがこうなっていることである。
> 400 hour(s) at 10.00 % in dipropylene glycol
> 400 hour(s) at 3.00 % in propylene glycol
3% の希釈で 400 時間を超えた材料と、100% で 400 時間と記録された材料が、数値カラムでは同じ 400.0 に収まる。どちらが強いかは分からない。前節と同じ理由で、濃度も溶剤も違い、換算する手立てがないからだ。分かるのは、カラムが両者を同じものに見せているということだけである。
全体では 1,871 件のうち 499 件——26.7%——が、数値カラムの捨てた限定詞を抱えている。4 件に 1 件は、あなたが尋ねたのとは別の問いに答えた数字を返してくる。
では何を問うべきか
投稿者は「何を足せば強くなるか」と尋ねた。このデータでは答えられない。持続が積み増せるものだという前提が入っており、フィールドが測っているのは試験条件下の単一原料だからだ。
より役に立つ問いはこうなる。この数字はどこから来たのか。
どの濃度で測ったのか。測定値か、それとも上限に当たったのか。何に溶かしてあるのか。原料の名前は人を欺く——Iso E Super はここでは patchouli ethanone として登録されている——厳密な系統名ではなく慣用の材料名であり、Iso E Super 自体も異性体混合物に対する商品名である——ので、商品名で検索しても何も出てこない——そして原料の数字は、別のやり方で欺く。嘘はつかない。ただ、わかっていたことの一部を捨てて、きれいに見える浮動小数点数を渡してくるだけだ。
このフィールドにやられたのは、これで三度目になる。一度目は沸点で代用しようとしたとき。二度目は打ち切り値を除外しそこねたとき——しかも除外したと記事に書いていた。今回は 10% 希釈値を原液と並べた。
三度に共通する原因は同じである。数値カラムはそのまま使えるように見える。だからそのまま使った。