原料図鑑 · 115
原料図鑑:アンゼリカルート油 —— 香調欄にムスクとアンブレットがあり、主成分はモノテルペン3本
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CAS 8015-64-3、サプライヤー46社、FEMA 2088。香調欄には11語あり、その中に ambrette(アンブレット)と musk がある。ところが Aćimović 2017 の分析によれば、根に含まれる精油は 0.10% で、主成分は α-ピネン 29.7%、δ-3-カレン 14.2%、β-フェランドレンとリモネン合計 13.2%。3つともモノテルペンで、どれもムスクではない。これが奇妙な欄の組み合わせも説明する——香調タイプは amber なのに、残香は31時間しかない。同じ記録の備考欄には「この油はその光毒性のため体のいかなる部位にも使用すべきでない」とあり、GHS 欄は皮膚感作性区分1を与えている。
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要点
- 名称:angelica root oil(アンゼリカルート油)、Angelica archangelica 由来、CAS 8015-64-3
- 香調タイプ:amber;香調は11語——ウィーディ、アンバー、テルペニック、インセンス、アンブレット、ムスク、セロリ、スパイシー、グリーン、ハーバル、ベジタブル
- 強度:中、ランク2;残香は31時間しかない
- サプライヤー:46社;FEMA 2088、CoE 56
- 引火点 43.33 °C——可燃性液体
- GHS:H226 引火性、H304 誤えん有害性、H317 皮膚感作性区分1、H401/H411 水生毒性
- 備考欄:「この油はその光毒性のため、体のいかなる部位にも使用すべきではない。」
- 経口ラット LD50 11160 mg/kg、経口マウス 2200 mg/kg
香調欄にムスクがあり、主成分にムスクは無い
この記録の香調欄には11語あり、うち2つが目を引く。**ambrette(アンブレット)と musk(ムスク)**だ。
このデータベースは別の場所でもその連想を支えている——ω-ペンタデカラクトン(エキサルトリド)の記録の由来欄にアンゼリカルートと書かれている。大環状ムスクがセリ科植物の根に生えている、というのがあの記事の骨格だった。
だが主成分ではない。
Aćimović らは2017年に《Natural Product Communications》で、セルビアの Ozren 山に自生する Angelica archangelica の根を水蒸気蒸留し GC-MS で分析した。
| 含量 | |
|---|---|
| 根に含まれる精油 | 0.10% |
| α-ピネン | 29.7% |
| δ-3-カレン | 14.2% |
| β-フェランドレンとリモネン(混合) | 13.2% |
**上位3つで合計 57.1%、すべてモノテルペンだ。**ムスクは1つも無い。
つまりあの2つのムスク系の記述語は、残り半分未満の成分から来ている——大環状ラクトンは精油中ではふつう痕跡量だ。
(「主成分が主香気ではない」のいちばん見事な例はガルバナムだ。主成分はテルペンなのに、あのグリーンさは含量の極めて低い含硫化合物から来ている。アンゼリカルートは同じ話の別バージョンだ。)
これがあの31時間も説明する
香調タイプは amber なのに、残香は31時間しかない。
この連載でアンバー型の材料はたいてい数百時間だ——ラブダナム、アンブレイン、アンブロキサンはいずれも400時間。アンゼリカルート油の31時間は不釣り合いに見える。
**成分表を入れると筋が通る。**57% がモノテルペンの油なら、速く飛ぶのが当然だ。α-ピネンもカレンもリモネンもトップノート級の分子である。
**匂いの方向はアンバーとムスクだが、物理的な振る舞いはトップからミドルの油だ。**2つは矛盾しない。欄がそれらを結びつけていないだけだ。
備考欄のあの指示
notes 欄の第1文。
「この油はその光毒性のため、体のいかなる部位にも使用すべきではない。」
アンゼリカはセリ科(Umbelliferae/Apiaceae)で、セロリ、パースニップ、アンミと同じ科だ——この科はフロクマリンで知られる。その分子は UVA を吸収したあと皮膚の DNA と反応する。柑橘の線は〈柑橘精油はなぜ光毒性を持つのか〉に書いた。アンゼリカは非柑橘の例だ。
全庫でこの指示を持つ記録は46件あり、理由は光毒性と感作性の2つに分かれる。名簿は別記事にまとめた。アンゼリカルート油は光毒性の組でサプライヤー数3番目だ。
同じ植物のアブソリュート(1社)にも同じ一文が付いていて、その香調タイプは musk(パンジェント、ハーバル、ムスク)だ——同じ植物で、油は amber、アブソリュートは musk。前回測った同じ CAS で香調タイプが食い違う例がまた1つ増えた。
GHS 欄は空でなく、感作性区分1がある
H226 — 引火性の液体および蒸気 H304 — 飲み込んで気道に入ると生命に危険のおそれ H317 — アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ(皮膚感作性区分1) H401/H411 — 水生生物に毒性、長期継続的影響も
**皮膚感作性区分1だ。**全庫で GHS 欄に皮膚感作性を含むのは63件で、その中には日常的に使う材料が多く含まれる——ゲラニオール(198社)、シトラール(135社)、シトロネロール(119社)、オイゲノール(97社)。
**だから「感作性の区分がある」こと自体は使えないという意味ではない。**使用量と濃度の問題だ。ただしアンゼリカルート油は光毒性の備考も同時に持っており、理由が2つ重なっている。
de Groot と Schmidt が2016年に《Dermatitis》の導入で示した規模はこうだ。**接触アレルギーが記載された精油は80種ある。**同時に彼らは構造的な問題も指摘している——精油の化学組成のデータは皮膚科の共同体が読まない雑誌に発表されるため、臨床側と化学側が互いのデータを見ていない。
引火点 43 °C
引火点 43.33 °C。これは輸送上意味のある境界だ。モノテルペン含量の高い油は引火点が低く、それが送れるかどうかと送り方に影響する。その規則は〈可燃性液体を送る〉に書いた。
保存欄は「冷暗所、密閉、熱と光を避けて」、保存期限は24か月。
使い方
- **肌に残る製品には使わない。**備考欄が自分でそう言っており、理由は光毒性だ。
- **これはトップからミドルの油で、保留剤ではない。**残香31時間。amber という香調タイプに惑わされない。
- **セロリとウィーディの方向は本物だ。**香調欄には celery、weedy、vegetable があり、味の記述欄は「25 ppm で:グリーン、ハーバル、アンブレットとムスク様、ベジタブルとスパイシーのニュアンスを伴う」。
- ムスク効果をこれに頼らない。ω-ペンタデカラクトンがその分子そのもので、しかもこの油の中では痕跡量だ。
- 引火点43 °C、発送前に確認する。
- 同じ植物のアブソリュートは別の材料だ(香調タイプ musk、1社)。入れ替えられない。
この記事が立証していないこと
- **嗅いだことはない。**全文が欄と全庫統計と論文2本でできている。
- **Aćimović らが測ったのはセルビアの野生の根1ロットだ。**産地、栽培か野生か、収穫期で比率は変わるし、商業のアンゼリカルート油の多くはベルギー、オランダ、フランス、ドイツ、ハンガリー、インドの栽培品だ(備考欄自身が挙げている)。1つの分析はこの材料の一般則ではない。
- **「ムスクの記述語は痕跡成分から来る」は推論だ。**Aćimović らは主成分しか報告しておらず、大環状ラクトンの含量は挙げていない。アンゼリカルート油中の ω-ペンタデカラクトンの定量データも見つけていない。
- 「31時間はモノテルペンが多いから」は出所の違う2つのデータを並べた推論だ——残香はデータベースの欄、組成は論文で、同じロットの油ではない。
- 光毒性の機構の段落はセリ科についての一般的な記述で、この油のフロクマリンの定量は調べていない。
- GHS の区分はサプライヤーの申告で、社によって食い違いうるし、この欄の全庫カバー率は 0.9% しかない。
- この油に対する現行の IFRA スタンダードの条文は確認していない。