原料図鑑 · 116
原料図鑑:ペルーバルサム —— その主成分表は、この連載がすでに書いてきた分子の並びだ
· 10 分
CAS 8007-00-9 を8件が共有し、油41社、バルサム本体29社、アブソリュート21社、レジノイド20社。de Groot 2025 はパッチテスト試薬を作るために揮発成分を分析し、主成分は安息香酸ベンジル、(E)-ネロリドール、安息香酸、ベンジルアルコール、(E)-ケイ皮酸、バニリン、(E)-ケイ皮酸ベンジルだった——このうち4つはこの連載の原料図鑑で書いている。そして皮膚科では基準パッチテストの一員だ。Guarneri 2021 は12,030人にペルーバルサムとフレグランスミックス1を同時に試験し、それぞれ3.6%が陽性だったが、重なるのは1.0%——互いに相手が見逃す約2.5%を拾っている。
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要点
- 名称:peru balsam(ペルーバルサム)、Myroxylon pereirae(マメ科)由来、CAS 8007-00-9
- 香調タイプ:balsamic——スイート、バルサミック、シンナミック、バニラ、アンバー、スパイシー、パウダリー、レジナス
- 強度:中、ランク2;残香400時間
- サプライヤー:油41社(FEMA 2117、CoE 298)、バルサム本体29社(FEMA 2116)、アブソリュート21社、レジノイド20社
- レジノイドの記録の備考欄:「感作性の可能性があるため、体のいかなる部位にも使用しないこと」
- 経口ラット LD50 > 5000 mg/kg、経皮ウサギ > 10000 mg/kg
- 皮膚科の基準パッチテスト系列の一員だ
その主成分表は、もう読んだことがある
de Groot らは2025年に《Contact Dermatitis》で実用的なことをした。商業パッチテスト試薬の製造に使われている Myroxylon pereirae 樹脂に何が入っているかを分析したのだ。方法はヘッドスペース SPME と GC-MS/水素炎イオン化検出。
主成分は7つ。
| 成分 | この連載で書いたか |
|---|---|
| 安息香酸ベンジル | 書いた |
| (E)-ネロリドール | まだ |
| 安息香酸 | まだ |
| ベンジルアルコール | 書いた |
| (E)-ケイ皮酸 | 関連:シンナミルアルコール、シンナムアルデヒド |
| バニリン | 書いた |
| (E)-ケイ皮酸ベンジル | まだ |
7つのうち4つは、この連載が1本ずつ記事にしてきた分子だ。
これは香調欄がなぜ「シンナミック、バニラ」と書いているかを説明する。比喩ではなく成分だ。そして、なぜこれが香料アレルギーの指標として使われるのかも説明する——既知の香料感作物質を複数、1つの天然材料の中にまとめて持っているからだ。
論文自体は別の問いを追っている。ペルーバルサム、ロジン(コロホニウム)、プロポリスはパッチテストで交差反応することがよく知られており、共通の感作成分があるのではないかという説がある。彼らの答えは否定だ。
M. pereirae 樹脂とコロホニウムの揮発画分の主成分はかなり異なる。揮発成分中の共通ハプテンでは交差反応性を容易に説明できない。
**きれいな否定的結果だ。**2つの材料はよく一緒に陽性になるのに、いちばん直感的な説明(成分の重なり)が自前のデータで排除された。
2つの検査が、それぞれ相手の見逃す2.5%を拾う
ペルーバルサムは皮膚科では香料ではなく試薬だ——長年、基準パッチテスト系列に置かれ、「香料アレルギー」の指標として使われてきた。
だがその位置が近年問われている。今ではほとんど「そのままの形で」使われないし、フレグランスミックス1(FM1)のほうが香料アレルギーの検出に敏感に見える。なら試験する必要はあるのか。
Guarneri らは2021年に《Contact Dermatitis》でこれに答えた。2018年から2019年にかけてイタリアの13の皮膚科クリニックでパッチテストを受けた接触皮膚炎患者12,030人のデータを後ろ向きに解析している。
| 陽性者数 | 割合 | |
|---|---|---|
| ペルーバルサム(MP) | 439 | 3.6% |
| フレグランスミックス1(FM1) | 437 | 3.6% |
| 両方陽性 | 119 | 1.0% |
| MP のみ陽性 | 310 | 2.6% |
| FM1 のみ陽性 | 304 | 2.5% |
2つの検査はそれぞれ3.6%を拾い、重なるのは1.0%しかない。
言い換えれば、**どちらの検査も相手が見逃す約2.5%を拾っている。**片方だけでは陽性者の半分以上を取り逃がす。
臨床的関連性も報告されている。単独感作の症例のうち、MP は 75.2% が臨床的に関連あり(62.9% が現在、12.3% が過去)、FM1 は 76.3%。著者らの結論は、ペルーバルサムは FM1 とともに基準系列に置く価値が今もある、というものだ。
**処方への意味は間接的だが実在する。**肌に残るものを作るなら、対象となる集団の数パーセントがこの種の分子に反応し、しかもその人たち全員が同じ1つの検査で捕まるわけではない。
(「天然のほうが穏やか」という言い方の問題は〈合成は頭痛がするから天然しか使わない〉で測った。ペルーバルサムはあの記事の最も強い反例の1つだ。)
トマトの件
Paulsen らは2012年に《Contact Dermatitis》でトマトの接触皮膚炎を書いたとき、面白いことをついでに述べている。
トマトの果実はMyroxylon pereirae(ペルーバルサム)にも存在する香料化合物を含んでおり、それが交差反応性を説明しうる。
彼らはトマト植物のエーテル抽出物でパッチテストを行い、93人中8人(9%)が陽性だった。
**トマトを心配しろという話ではない。**これらの分子は思っているより広く分布しており、「香料成分」と「食品成分」に化学的な境界は無い、という注意喚起だ。
8件の記録、FEMA は2件
同じ CAS 8007-00-9 の下に8件ある。
| 記録 | サプライヤー | FEMA | 備考欄に警告? |
|---|---|---|---|
| ペルーバルサム油 | 41 | 2117 | 無し |
| ペルーバルサム(本体) | 29 | 2116 | 無し |
| ペルーバルサム・アブソリュート | 21 | — | 無し |
| ペルーバルサム・レジノイド | 20 | — | 有り |
| レジノイド代替品 | 6 | — | — |
| ペルーバルサム specialty | 3 | — | — |
| ペルーバルサム代替品 | 2 | — | — |
| ペルーバルサム油代替品 | 1 | — | — |
「体のいかなる部位にも使わない」の警告があるのはレジノイドの1件だけで、油、本体、アブソリュートには無い——同じ CAS、同じ木、香調欄もほぼ同じなのに。
**これはあの欄が一貫していないことのもう1つの例だ。**この警告を持つ全庫46件は〈データベースが肌に使うなと言う46件〉にまとめた。あの記事の要点はまさに、この一文の有無を安全かどうかの判断に使えない、ということだった。
(同じ CAS の記録の 35.6% は香調タイプすら食い違う——〈同じ CAS の下にある記録〉。ペルーバルサムのこの8件は全部 balsamic で、珍しく一致している。)
使い方
- **ベースノートで残香400時間。**香調欄のスイート、バニラ、シンナミックがグルマンやオリエンタルにつなぎやすい。データベースの相性欄はイランイラン、パチュリ、プチグレン、サンダルウッド、ローズ、スパイス類を挙げている。
- **色が濃い。**油は黄琥珀褐色、レジノイドは濃褐色の粘稠液体。完成品の色を考慮する。
- **肌に残る製品に使うなら先に IFRA を引く。**これは制限のある材料で、備考欄のあの一文は8件のうち1件にしか付いていない。
- **天然だから穏やか、とは推論しない。**その成分表は既知の感作物質の集合だ。
- 味の欄にも中身がある:苦い、暖かい、バルサミック、シナモン、ウッディ、バニラ、レザー感。40 ppm で評価。FEMA と CoE の番号を持つ。
この記事が立証していないこと
- **嗅いだことはない。**全文が欄と全庫統計と論文3本でできている。
- de Groot らが分析したのはパッチテスト試薬用の樹脂サンプルであって、市販の香料グレードのペルーバルサム油やアブソリュートではない。成分比は違いうるし、それが本稿最大の対応のずれだ。
- **あの論文が測ったのは揮発画分(ヘッドスペース SPME)だ。**不揮発の部分はあの成分表に入っておらず、樹脂の重量の大半は不揮発の樹脂類である。
- Guarneri らの 3.6% はパッチテストを受けた集団の割合で、接触皮膚炎が疑われて検査に来た人たちだ。一般人口の有病率ではない。
- **あれはイタリアの13クリニックの後ろ向きデータだ。**地域によって暴露源が違い、数字が外挿できるとは限らない。
- この材料に対する現行の IFRA スタンダードの条文は確認していない。
- トマトの段落は Paulsen らの論文中の一文で、その交差反応の仮説を支える一次データには当たっていない。
- 8件の表は名称のキーワードで引いたもので、別の命名は拾えていないかもしれない。