はじめての調香 · 98
香水は花を刻み、食品は果実を刻む——同じリンゴの木に、2つの語彙表
· 9 分
用途欄のタグは FR(香水)と FL(食品)の2つに分かれ、その形はまったく違う。FR はタグ522種で72,233回、1種あたり平均138回。FL はタグ590種でありながら11,132回しかなく、1種あたり平均19回、中央値はわずか3である。両方に現れるタグは119種だけ——FR 専用が403種、FL 専用が471種。違いは量だけではない。FR 専用の上位は woody、balsam、amber、fern、oriental、chypre——古典的な香調の語彙そのものだ。FL 専用の上位は tropical、tea、nut、chocolate、meat、tomato、cheese。最も明快な対照はリンゴにある。FL はリンゴのタグを25種持ち、ふじ、ガラ、ゴールデンデリシャス、グラニースミス、マッキントッシュ、レッドデリシャスの6品種を区別する。FR は6種しかないが、その中に apple blossom(237回)がある——そして FL 側の花を含むタグは、合計でわずか9回しか現れない。
読了目安 5 分。
以前 potential_uses 欄の香水側を書いた。今回は食品側と、両方を並べたときに見えるものを扱う。
両者の形は大きく違う
この欄を持つ7,807件の記録で、タグは FR(香水用途)と FL(食品用途)に分かれる。
| タグ種類 | 出現総数 | 1種あたり平均 | 中央値 | |
|---|---|---|---|---|
| FR | 522 | 72,233 | 138.4 | 96 |
| FL | 590 | 11,132 | 18.9 | 3 |
FL は種類が FR より多いのに、出現回数は7分の1しかない。
裾の形も違う。1回しか現れないタグは FL で31.5%、FR では19.7%。
両方に現れるタグは119種だけ——FR 専用が403種、FL 専用が471種である。
専用のリストは一目で分かる
FR にしか現れないもの、上位:
woody(1,186)、floral(1,170)、balsam(887)、amber(798)、fern(752)、oriental(698)、fruit(679)、chypre(506)、aldehydic(497)、bouquet(492)、moss(476)、lavender(474)
**古典的な香調の語彙そのものだ。**fern はフーゼア、chypre はシプレ——この2語は食品側に一度も現れない。
FL にしか現れないもの、上位:
tropical(428)、tea(325)、nut(313)、chocolate cocoa(256)、meat(248)、tomato(211)、caramel(199)、dairy(186)、beverage(163)、vegetable(160)、cheese(147)
食べ物の名前だ。
香水は自らが発明した抽象的なカテゴリーを名づけ、食品はものを名づける。(両側の上位30を1つずつ見た。FR は14個が抽象的な香調、FL は2個だけである。)
そして最も明快な対照はリンゴにある
同じ語で始まりながら、両側の刻み方はまったく違う。
FL のリンゴのタグは25種:
apple(53)、apple green apple(16)、apple red apple(10)、apple cider(3)、apple delicious apple(3)、apple spice(3)、apple baked apple(2)、apple cinnamon(2)、apple pie(2)、apple sour apple(2)、そして各1回の——apple fuji apple、apple gala apple、apple golden delicious apple、apple granny smith apple、apple mcintosh apple、apple red delicious apple、apple juice、apple sauce、apple butter、apple spiced apple、apple enhancer、apple fractions、apple apricot、apple cranberry、apple baked spice apple
**リンゴの品種が6つ。**ふじ、ガラ、ゴールデンデリシャス、グラニースミス、マッキントッシュ、レッドデリシャス。
**FR は6種のみ:**apple(484)、apple blossom(237)、apple green apple(152)、apple red apple(84)、apple candy apple(1)、apple crisp(1)
2番目に注目してほしい。
花はどちらの側にあるか
| blossom/flower を含むタグ | 出現総数 | |
|---|---|---|
| FR | 27種 | 3,717回 |
| FL | 2種 | 9回 |
413倍。
FR の花のタグ:orange blossom(357)、linden flower(294)、crabapple blossom(271)、cherry blossom(243)、apple blossom(237)、elder flower(217)、plum blossom(192)、iris blossom(184)⋯⋯
FL の花のタグは2つだけ:orange blossom(8回)、cherry blossom(1回)。
**同じリンゴの木——香水はその花を買い、食品はその果実を買う。**そして各産業は自分が買う側だけを徹底的に刻む。
この模様は繰り返される
| FL の細分 | FR の細分 | |
|---|---|---|
| リンゴ | 25 | 6 |
| 茶 | 11(ダージリン、烏龍、チャイ、ルイボス、ジャスミン、レモンティー⋯⋯) | 2 |
| オレンジ | 10 | 5 |
| チェリー | 8 | 5 |
| マンゴー | 2 | 4(mango flower 139回を含む) |
| プラム | 3 | 3(plum blossom 192回を含む) |
**茶の組がとくに明快だ。**食品側はダージリンや烏龍まで刻むが、香水側は green tea と orange pekoe tea の2つしかなく、後者は1回しか現れない。
なぜか
各産業は、それが売れる場所でだけ刻むからだ。
香料会社は「ふじりんごフレーバー」を売る。飲料メーカーが指名するからだ。「グラニースミスの調」を売る香水会社は無い——彼らが売るのは「アップル」か「アップルブロッサム」である。
そして逆も成り立つ。「アップルブロッサム味」のジュースを売る者もいない。
どちらが繊細かという話ではない。2つの語彙表は違う問いに答えている。
そして食品側の細分には分析化学が付いている。George らが2024年に《Food Chemistry》で行ったのがまさにそれだ——安定同位体希釈と HS-SPME-GCMS でパイナップルの主要香気揮発物を一度に定量している。
本手法は、'Aus Carnival'、'Aus Festival'、'Aus Jubilee'、'Aus Smooth(Smooth Cayenne)' など、人気のあるパイナップル品種が産生する主要な香気揮発性化合物の同定に適用された。
**5つの名前を持つパイナップル品種、26の標的化合物。**あの6つのリンゴ品種と同じことの2つの形だ——一方は語彙表、他方は質量分析計である。
実務として
- **食品用途を探すのに香水の語を使わない。**fougère は FL 側に存在しない。
- **花の素材を探すのに FL タグを当てにしない。**あちらには花を含むタグが9回しかない。
- 両方に現れる119種のタグが橋だ——2つの産業の双方にとって意味を持つ概念(fruity、citrus、green の類)である。
- 1つの材料が FL と FR のタグを大量に持つときは一度見る価値がある:両側で主流という珍しい位置にいるかもしれない。
この記事が立証していないこと
- タグは
;;と|で切った文字列であり、書き方が不規則なものは漏れる。 - 「FR 上位30のうち14が抽象的な香調」は私の手作業の判定で、その線引き自体に議論の余地がある(fruit は抽象か具体か)。
- **これらのタグの出所は確認していない。**データベース自身の分類であって、いかなる当局の一覧でもない。
- 「売れるから刻む」は私の解釈で、データベースは分け方の理由を説明していない。
- George 2024 は分析法の論文であり語彙表についてのものではない。品種レベルの差異に実測の裏づけがあることを示すために引いた。
- **タグの数は重要度ではない。**あるタグが400回現れるのは、ある一群の記録が一括で付けられただけかもしれない。