はじめての調香 · 63
「Pretty Oud は Shitty Oud に改名すべきだ」——八人が言い争っているのは同じことではない
· 12 分
r/DIYfragrance に、Firmenich の Pretty Oud はアニマリックのない優しいウードとして売られているのに、実際には嗅いだ中でいちばん糞のような匂いがする、という不満が投稿された。八件の返信のうち五人が同意せず、そのうちの一人が核心を書いている。原液ではまったく同じ経験をしたが、1% に希釈したらきれいになった、と。まず Pretty Oud がデータベースにあるかを調べたらあった。しかも agarwood specialty のレコードに入っていて、CAS はなく、天然での存在の欄は「自然界では見つかっていない」になっている。そのレコードの供給元は 41 社で、本物の沈香油のレコードは 26 社。替代品の 16 社を足すと、「沈香の形をしたもの」を売る供給元は沈香油を売る供給元の二倍以上になる。
所要 6 分。
十七時間前の投稿。
「Firmenich の Pretty Oud は、アニマリックな側面のない優しいウードの調子として売られている。**ところが嗅いだ中でいちばん糞のような匂いがする。**de kruiderie で買った。
この原料についての皆さんの経験を知りたい。名前とマーケティングが非常に誤解を招くと思う。中にシベットのようなアニマリックな臭さが大量に入っている」
八件の返信のうち、五人が同意していない。
「同意しない。私はかなり好ましいと思う。本物のウードを嗅いだことがないのだろう、これを『糞のよう』だと思うなら」(ihavezeroanswersbro)
「**単体で、全濃度でどう匂うかは、ほとんど関係がない。**処方の中では、比較的低い用量でも非常に好ましい西洋的なウードの効果を与える」(CapnLazerz)
「私にはほとんどレザーに感じる。レザーのようにアニマリックではあるが、糞的では決してないし、牛舎的でもまったくない」(brabrabra222)
「糞にもアニマリックにもまったく感じない。素晴らしい匂いで、それ自体で一つの香水になりうる」(ImJustWaySmarter)
そして一人が核心を書いている。
「**原液の状態ではまったく同じ経験をしたが、1% 溶液に希釈したら、このウードはきれいになった。**バニラ、タバコ、オークモスなどと複数の組み合わせで、どの組み合わせが美しく調和するかを試した」(hussellaza)
同じ材料、同じ経験、変数が一つ違う。
まずデータベースにあるかを調べる
あった。しかも答えは予想より面白い。
agarwood で検索すると全庫に六件ある。そのうちの一件が **agarwood specialty(#897)**で、供給元の製品名リストにこれが並んでいる。
Azelis UK; BLACK AGAR 296985; Azelis UK; **PRETTY OUD**; BMV Fragrances; Oudh 13; Oudh 882; Oudh Adeem; Oudh Balai; Oudh Hamid; Oudh Mumtaz; ...
Pretty Oud がその中にいる。
そしてそのレコードの項目はこうなっている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| CAS | なし |
| 天然/合成 | 天然/合成 |
| 天然での存在 | 自然界では見つかっていない |
| 純度 | 99.00 〜 100.00 |
| 供給元 | 41 社 |
これは沈香油ではなく、調合されたベースになる。
投稿者はこれを「本物の沈香」と比べていて、ihavezeroanswersbro は本物を嗅いだことがないのだろうと言った。後者は自分で思っている以上に正しい。
三層構造
六件を並べると、はっきりした階層が見える。
| レコード | CAS | 供給元 | 天然/合成 | 天然での存在 |
|---|---|---|---|---|
| agarwood oil #895 | 94350-09-1 | 26 社 | 天然 | 沈香樹の木材 |
| agarwood specialty #897 | なし | 41 社 | 天然/合成 | 自然界では見つかっていない |
| agarwood oil replacer #901 | なし | 16 社 | 天然/合成 | 天然でありうる |
| agarwood oil(別の樹種)#903 | 1333524-00-7 | 2 社 | 天然 | 別の植物 |
41 + 16 = 57 社がベースか替代品を売り、26 社が油を売っている。
「沈香の形をしたもの」を売る供給元は、沈香を売る供給元の二倍以上になる。
香調欄で区別がつく
三件の香調欄は違っていて、違いの場所が興味深い。
| 香調欄 | |
|---|---|
| 沈香油(本物) | 甘い、沈香、ウッディ、バルサミック、サンダルウッド、レザー、フルーティ、スモーキー、アニマリック、タバコ |
| agarwood specialty | 沈香、ウッディ、ベチバー、バルサミック、アニマリック、アーシー、アンバー、スパイシー、スモーキー |
| 替代品 | ウッディ、ベチバー、甘い、バルサミック、アニマリック、アーシー、アンバー、スモーキー |
二つある。
**一、ベースと替代品にはどちらも ベチバー があり、本物の沈香油にはない。**ベチバーは沈香の効果を再構成するときに最もよく使われる骨格で、その語が調合品にあって天然油にないのは筋が通る。
**二、替代品の香調欄には 沈香 という語がまったくない。**ウッディ、ベチバー、甘い、バルサミック、アニマリック、アーシー、アンバー、スモーキー。沈香の形をした輪郭であって、沈香ではない。
(brabrabra222 は Pretty Oud が「ほとんどレザー」だと書いている。レザー は本物の沈香油の欄にあり、specialty の欄にはない。それが彼の鼻なのか、買ったロットなのか、この欄が粗いのかは判断できない。)
本物の沈香とは何か
植物材料ではなく、傷の反応になる。
データベースが agarwood oil に与えている備考が明確だ。
「この油は真菌に感染した沈香樹(Aquilaria Agallocha)の木材から水蒸留されたもので、樹はインド北東部に生育する。」
Zhou らは 2026 年に World J Microbiol Biotechnol で、沈香から分離した三株の内生真菌を接種し、GC-MS で分析した。形成様式の異なる沈香精油から 83 種の揮発性代謝物が同定され、セスキテルペンが 66.27%、残りは主にクロモン類だった。真菌の接種は揮発性の組成を大きく変え、特にセスキテルペンとクロモンを増やした(p < 0.05)。
Ma らは 2026 年に Frontiers in Plant Science でさらに細かく調べた。メタボロミクスと GC-MS で 14,784 の代謝物を同定し、その中に 118 種の沈香特徴的なセスキテルペン骨格と 2-(2-フェニルエチル)クロモンが含まれていた。
**118 の骨格。**再構成が別物になるのはこのためであって、再構成が下手だからではない。
そして Ma の論文の冒頭にはもう一つ、買い手に関わる一文がある。天然の沈香形成は遅く、人工誘導された沈香の品質は依然として不安定である。
データベース自身が書いている一文
沈香油のレコードの香りの記述欄に、こういう評が収められている。
「ウード、フレッシュウッディ、バルサミック、アニマリック=牛舎的。これは本物で、美しく複雑で、驚くほど持続する。ほぼ確実に産地の段階で混ぜ物をされている。天然のウードはほとんどすべてそうだからだ。」
私が書いた文ではなく、データベースが収録している評になる。
(天然原料の成分が数百倍振れることは〈天然原料はどれだけ振れるのか〉で測った。沈香はその極端に位置する。)
その変数
フォーラムの食い違いに戻る。八人のうち濃度に触れたのは一人だけだった。
「原液の状態ではまったく同じ経験をしたが、1% 溶液に希釈したら、このウードはきれいになった。」
CapnLazerz が言っているのは同じことのもう半分になる。「単体で、全濃度でどう匂うかは、ほとんど関係がない。」
**濃ければ糞、薄ければ花。これは香料では有名な現象になる。**その機構と、なぜ全員が同じ濃度で切り替わるわけではないのかはインドールの回に書いた。
投稿者は材料を買い、瓶を開けて原液を嗅ぎ、それで判断した。そしてデータベースが沈香油に与えている香りの記述欄も「at 100.00%」と注記されている。データベース自身の記述も原液の記述であって、希釈後の版はその欄にない。
(届いたらまず希釈して嗅ぐという話はアセチルピラジンの回にもあった。材料が悪くなったと思った人が、実は原液を嗅いでいた。)
もう一つの買い手の罠
六件目は agarwood oil (aetoxylon sympetalum)、CAS 1333524-00-7、供給元 2 社。
**別の植物になる。**Aetoxylon sympetalum は Aquilaria ではなく、産地では gaharu buaya(ワニ沈香)と呼ばれ、市場では White Oud と表示されることがある。
香調欄は、沈香、アロマティック、ウッディ、うま味、モッシー、アーシー、マッシュルーム、スモーキー、アニマリック。
うま味とマッシュルームの二語は、本物の沈香油の欄にはない。
独自の CAS があるので書類の上では区別がつく。名前では区別がつかない。
実際にどうするか
- **買うのが油かベースか替代品かを先に確かめる。**CAS(94350-09-1)があるものが油、CAS がないものが調合品になる。
- **ベースは劣った油ではなく、別のものになる。**CapnLazerz の言うとおりで、処方の中での用途があり、原液で判断するのは問いが違う。
- **届いたら希釈する。原液を嗅がない。**この種の材料は原液の評価と 1% の評価が正反対になりうる。
- **White Oud を見たら学名を調べる。**Aetoxylon sympetalum と Aquilaria は別の植物になる。
- **天然の沈香油は元々組成が不安定になる。**論文自身が人工誘導の品質は不安定だと書き、データベースの評は天然のウードはほとんどすべて混ぜ物をされていると書いている。
- **香調欄は照合に使える。**本物の油には「サンダルウッド、レザー、タバコ」があり、ベースには「ベチバー」があり、替代品には「沈香」という語すらない。
この記事が立証していないこと
- **どれも嗅いでいない。**全編がデータベースの項目と論文二本による。
- **Pretty Oud の組成は確認していない。**確認したのは、それが
agarwood specialtyのレコードの供給元製品リストに現れること、そしてそのレコードに CAS がなく天然での存在の欄が「自然界では見つかっていない」であることまでになる。供給元リストの名前は、そのレコードの項目がその製品の規格であることを意味しない。 - **香調欄はそれらのレコードの記述であって、条件を揃えた比較ではない。**評価者も年代も違い、ブラインドでもない。
- **「57 社対 26 社」は供給元の件数。**同じ会社が複数を扱っている可能性があり、重複除去はしていない。
- **brabrabra222 の「レザー」は帰属できない。**ロットかもしれず、鼻かもしれず、欄が粗いだけかもしれない。
- **Zhou 2026 と Ma 2026 が扱ったのは人工誘導の沈香。**天然の野生沈香が同じ組成分布を持つかには答えていない。
- 「天然のウードはほとんどすべて混ぜ物をされている」はデータベースが収録した評で、私が検証した事実ではなく、比率も示されていない。
- 1% という濃度はフォーラムの一件の書き込みから来ていて、追試もしておらず、どの溶媒を使ったかも分からない。
- コーパスの統計は取っていない。