はじめての調香 · 119
はじめての調香 #119:6,457件が「使うな」と言い、理由を述べたのは8件
· 8 分
前回、カテゴリ欄に「参考のみ、香料・香精には使用しない」と書かれた材料が6,457件あることを算出した。今回はそのなかから、かつて香料だったものを探した。条件は緩い。香調欄があり、サプライヤーがいればよい。該当したのは87件だけで、あの一類の1.3%にすぎない。そしてその87件のうち、法規欄か備考欄で退場の理由を述べているのは8件しかなく、75件(86%)は何も言っていない。最良の事例は2つの位置異性体だ。6-メチルクマリンの備考欄には「接触光アレルギーを起こす合成香料」と明記されているが、サプライヤー35社、FEMA GRAS、今も使われている。7-メチルクマリンの備考欄は None found でありながら、香料に使用しないと記され、サプライヤーは7社しか残っていない。文献に問題が記録されているほうが残り、記録のないほうが外された。
読了目安 4 分。
要点だけ
- カテゴリ欄に「参考のみ、香料・香精には使用しない」と書かれたものは 6,457件
- そのうち香調欄があり、サプライヤーもいるのは 87件(1.3%)。かつて香料だったように見えるもの
- その87件のうち、退場の理由を述べているのは 8件だけ。75件(86%)は何も言っていない
- 最良の事例。6-メチルクマリンの備考欄は光アレルギーを明記しているのに今も使われ、7-メチルクマリンの備考欄は
None foundなのに使用しないと記されている
何が見つかると思っていたか
前回、全庫を4回切った。 1回目でカテゴリ欄に「香料・香精に使用しない」と書かれた6,457件を落とした。 その群にはヨウ素も乳糖もチクロもいたが、musk ambrette もいた。
あそこには「かつて香料で、のちに退場した」材料が一群あり、それぞれに物語があると思っていた。
なかった。
かつて香料に見えるのは87件だけ
判定はかなり緩い。香調欄があること(誰かが嗅いで記述したということ)と、サプライヤーがいること(まだ買えるということ)。
| 件数 | |
|---|---|
| 「参考のみ」の総数 | 6,457 |
| 香調欄あり + サプライヤーあり | 87(1.3%) |
| さらに強度ランクあり | 12 |
6,457件のうち、匂いの材料として扱われたことがあるのは87件だけだ。 残る6,370件はもともと香料ではない。ヨウ素、乳糖、農薬、医薬品である。
その87件の86%は理由を述べていない
87件の法規欄、備考欄、化粧品用途欄を見て、退場の説明を探した。
| 欄の証拠 | 件数 |
|---|---|
退場を明記(withdrawn/not used anymore) |
8 |
| 法規欄はあるが退場とは言っていない | 4 |
| 説明がまったくない | 75(86%) |
サプライヤーの多いものを挙げる。
| サプライヤー | 材料 | 理由を述べているか |
|---|---|---|
| 20 | musk xylol | なし(法規欄が空) |
| 18 | musk ambrette | あり。接触光感作 |
| 13 | bromstyrol | なし |
| 9 | lemon verbena oil | なし |
| 7 | quinoline | あり。FEMA GRAS (withdrawn) |
| 7 | 7-methyl coumarin | なし(備考欄は None found) |
musk ambrette が3つの欄で退場理由を示しているのは例外であって、通例ではない。
最良の事例は1組の異性体だ
7-メチルクマリンが目に留まったのは、名前が隣の1本を思い出させたからだ。並べてみる。
| 6-methyl coumarin | 7-methyl coumarin | |
|---|---|---|
| CAS | 92-48-8 | 2445-83-2 |
| 分子式 | C10H8O2 | C10H8O2 |
| 分子量 | 160.17 | 160.17 |
| サプライヤー | 35 | 7 |
| カテゴリ | flavoring agents |
information only not used |
| 法規 | JECFA、FEMA GRAS、CoE、FLAVIS | (空) |
| 化粧品用途 | fragrance; oral care agents |
not used anymore |
| 備考 | 「接触光アレルギーを起こす合成香料」 | None found |
同じ分子式で、メチル基の位置が1つ違うだけ。
そして6-メチルのほうは、備考欄が自ら光アレルギーを起こすと書いている。 1978年に Kaidbey と Kligman が Contact Dermatitis でその光接触アレルギーを報告している(PMID 743874)。 かつて日焼け止め製品に大量に使われ、この問題で退場した。
**しかしこのデータベースでは今も正常な材料だ。**サプライヤー35社、4つの法規登録、FEMA 2699。
一方7-メチルのほうは記録された問題が何もなく、備考欄は None found でありながら、
「香料・香精に使用しない」と貼られ、サプライヤーは7社しか残っていない。
これは誤りとは限らない
最初は「この2件は貼り違えている」と書こうとしたが、立ち止まった。
6-メチルの行のカテゴリ欄を見る。flavoring agents であって fragrance agents ではない。
それこそがデータベースの符号化かもしれない。 化粧品や香水からは退場したが、食品香料としての身分は残っている。 FEMA GRAS も JECFA も食品用の登録であって、肌に塗ることとは別の話だ。
(ただし cosmetic_uses 欄には fragrance と書かれており、そこはカテゴリ欄と一致しない。
同じ記録の2つの欄を互いに検査する例がまた1つ増えた。)
そして7-メチルがなぜ外されたのかについて、このデータベースは答えを持っていない。
実務上の意味
このデータベースで「参考のみ、香料・香精には使用しない」を見たら。
- **理由が別の欄にあると仮定しないこと。**86%にはない
- **備考欄を見ること。**述べている8件はすべてそこに書いてある
- **その異性体や同族を見ること。**7-メチルクマリンの答えは自身の記録にはなく、 6-メチルの備考欄にあった。もっともその答えが指しているのは別の材料のほうだが
- **このラベルは「有毒」を意味しない。**quinoline はFEMA GRASが撤回されたが、
同じ群には
lemon verbena oil(レモンバーベナ油)もいる。あれは制限であって毒性ではない
この記事が示していないこと
- 「香調欄があり、サプライヤーもいる=かつて香料」は私が決めた判定だ。 香調欄が埋まっていない古い材料を取りこぼすし、香料でなかったが誰かが匂いを記述したものを拾う可能性もある。
- 86%が理由を述べていないというのは「このデータベースの欄にない」という意味だ。 本当の理由はIFRA基準、EU規則、供給元の文書にあるかもしれず、ここにないだけだ。
- 6-メチル/7-メチルの節では、7-メチルクマリンの現行法規を調べていない。 このデータベースが一方に説明を与え、他方に与えていないと言えるだけである。
- 「カテゴリ欄が
flavoring agentsだから食品用の身分が残っている」は私の読み方で、データベースはそう言っていない。 - 87という数字の6,457に対する比率(1.3%)は低く見えるが、それは「参考のみ」の一類がもともと大半は香料でないからだ。 「退場した材料の86%が理由を述べていない」ではなく、 「かつて香料だった87件の記録のうち86%が理由を述べていない」である。
- 化学データセットの自動クリーニングには専門の文献があり(PMID 27885862)、扱うのは欄の整合性だ。 「なぜ退場したか」という情報は、もともとその種の手順の範囲外にある。