原料図鑑 · 156
原料図鑑:レモン油 —— 香調欄は3語だけ、notes欄は「肌に使わないこと」の一文だけ
· 8 分
CAS 8008-56-8、サプライヤー74社、FEMA 2625。香調欄には citrus、lemon、lemon peel と3語しか書かれていない。サプライヤーが50社以上の材料では香調の語数の中央値は8である。理由は記録が雑だからではなく、この材料の名前そのものが記述語だからだ。それが何の匂いかを言うのに別の語は要らない。notes欄も同じく短い。Do not use on skin、5語で、フラノクマリンによる光毒性のことを言っている。残香は4時間で、このコーパスの上位50材料のなかでも最も短い部類。旋光度は+57から+65.5で、90%を占めるd-リモネンによるものだ。保存期間は12か月しかない。コーパスでは127件の処方に使われ、使用量の中央値は4.44%。
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要点だけ
- 名称:lemon oil、CAS 8008-56-8、サプライヤー74社、FEMA 2625、FEMA GRAS
- Citrus limon の新鮮な果皮から冷圧搾
- 香調型 citrus。香調は citrus、lemon、lemon peel の3語だけ
- 強度は中(ランク2)、残香 4時間、旋光度 +57.00から+65.50
- 比重0.849–0.855、屈折率1.472–1.474、保存期間は12か月しかない
notes欄の要点は1文だけ。Do not use on skin.- コーパスでは 127件、使用量の中央値 4.44%
3語の香調欄
odor 欄にはこう書かれている。
citrus; lemon; lemon peel
3語だ。odor_descriptions はもっと短く、citrus lemon の2語しかない。
数えてみた。サプライヤーが50社以上の材料は293あり、香調の語数の中央値は8、四分位は6から9。 3語以下は **16件(5.5%)**しかなく、レモン油はその1つだ。
同じ組で最も少ないものはこうなっている。
| 語数 | サプライヤー | 材料 | 香調欄 |
|---|---|---|---|
| 1 | 109 | vanilla extract | vanilla |
| 1 | 88 | peppermint oil | peppermint |
| 1 | 53 | garlic oil | garlic |
| 2 | 53 | allyl isothiocyanate | pungent; mustard |
| 3 | 74 | lemon oil | citrus; lemon; lemon peel |
規則が見える。どれも名前そのものが記述語になっている材料だ。 バニラはバニラの匂いがし、ペパーミントはペパーミントの匂いがし、レモンはレモンの匂いがする。 別の語は要らない。その語がすでに日常の言葉にあるからだ。
対照。ylang等級Iの香調欄は10語ある。 フローラル、ペタル、ジャスミン、ネロリ、スズラン、スパイシー、バルサミック、アーシー、ウッディ、ワイニー。 それを指す日常語が1つもないからだ。
香調欄の長さが測っているのは材料の複雑さではなく、既成の語があるかどうかである。
notes欄には1文しかない
notes 欄の内容は、TSCA定義の半分を除けば5語だけだ。
Do not use on skin.(肌に使わないこと。)
説明もなく、濃度の上限もなく、条件もない。
背後にあるのはフラノクマリン(主にベルガプテンとオキシペウセダニン)だ。 この種の分子はUVAを吸収したあと皮膚のDNAと付加体を作り、遅発性の光毒性反応を起こす。 日光を浴びたあとに発症し、水疱ができ、引いたあとに色素沈着を残す。
1985年に Naganuma らが Arch Dermatol Res でレモン油の光毒性を専門に研究している(PMID 4096528)。 2001年には Kaddu らが J Am Acad Dermatol でより直接的な症例を報告した。 ベルガモット精油をアロマテラピーに使った人が、水疱性の光毒性反応を起こしている(PMID 11511848)。 同じ機構、同じ科の植物である。
実務上の意味。
- 肌に使うなら
furocoumarin reducedの記録を買う(サプライヤー15社、CAS 68916-89-2) - あるいはterpenelessのもの。その
notesにはFuro Coumarin Free.と書かれている - 洗い流す製品(シャンプー、石鹸)は滞留時間が短いのでリスクはずっと低い
4時間と+57度は同じ話だ
| 欄 | 値 |
|---|---|
| 残香 | 4時間 @100% |
| 旋光度 | +57.00から+65.50 |
| 保存期間 | 12か月 |
この3つの数字はどれも同じ成分を指している。d-リモネンだ。
圧搾レモン油の90%以上を占める(これはフォールド油の記録の notes 欄が書いている)。
リモネンは強い右旋性なので、瓶ごとの旋光度が+57以上まで振れる。
最も揮発しやすい部分でもあるので、残香は4時間しかない。
さらに空気中で自動酸化するので、保存期間は12か月と書かれる。多くの材料は24か月だ。
(ついでに。+57から+65.5は柑橘のなかでは高いほうではない。スイートオレンジ果皮油は+94から+99、 オレンジ油のテルペン留分は+92から+105。そしてスイートオレンジ果皮油はフォールドすると+78から+91に下がる。 リモネンを抜いた痕跡が、別の柑橘で再現している。)
何と一緒に現れるか
127件の処方で最もよく同席するもの。
| 材料 | 回数 | 材料 | 回数 | |
|---|---|---|---|---|
| dipg(溶剤) | 67 | benzyl acetate | 35 | |
| linalool | 53 | patchouli oil | 32 | |
| linalyl acetate | 42 | citronellol | 28 | |
| coumarin | 38 | lilial | 26 | |
| ベルガプテン除去ベルガモット油 | 37 | hedione | 25 |
クマリンが4位、ラベンダーの酢酸リナリルが3位。これはオーデコロンとフゼアの骨格だ。 そのなかでレモンが担うのは最初の30分である。
使用量の中央値は 4.44%、四分位2.00–8.00%、最高50%。 私が測った全体の中央値は2.11%なので、 一般の材料の倍ほど重く入れられている。長くもたないので、聞こえるようにするには多めに要るのだ。
この記事が示していないこと
- 「語数が測っているのは既成の語の有無」は私の解釈であって、データベースが言っていることではない。 293材料の語数分布を傍証にしたが、それはレモン油が少ないことしか示さない。
- 光毒性の機構は論文からの引用で、このデータベースからではない。
notes欄は5語しか書いておらず、理由を述べていない。 - IFRAのレモン油に対する使用量制限は調べていない。
Do not use on skinはこのデータベースの言い分であり、 実際の規制上の制限はIFRAの基準を見ること。 - **「リモネンが90%以上」はフォールド油の記録に書かれていることで、この記録ではない。**2件の情報をつないでいる。
- **旋光度と残香の因果は推論だ。**どちらもリモネンの含量と相関するが、成分分析は一切していない。
- 127件の統合は
lemonile、precyclemone b、isocyclemone eを除いている。 名前がレモンに似た合成材であって、レモン油ではない。