原料図鑑 · 155
原料図鑑:Cananga oil —— ylangの3等級と同じCASを共有しながら、比重の範囲が重ならない
· 9 分
CAS 68606-83-7、サプライヤー40社。このCASはylang ylangの等級I、II、IIIのCASでもあるので、CASで突き合わせればこの4本は1本に統合されてしまう。しかし物理欄は同意しない。カナンガの比重は0.906から0.923、ylangの完全油は0.948から0.968で、2つの範囲は重ならない。旋光度は−15から−30で、ylang IIIの−60から−40とも重ならない。香調欄はもっと直接的だ。カナンガには animal と leathery の2語があり、ylangには1つもない。同じ植物(Cananga odorata)のジャワ栽培型で、蒸気蒸留ではなく水蒸留され、残香は116時間。これは前回の記事のちょうど裏返しだ。VerdoxとVertenexはCASが違って物理欄がすべて同じ、この対はCASが同じで物理欄が違う。
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要点だけ
- 名称:cananga oil(カナンガ油)、CAS 68606-83-7、サプライヤー40社
- 香調型 floral。香調は甘い、フローラル、バルサミック、グリーン、スパイシー、アニマル、ウッディ、ワクシー、レザー
- 強度は中(ランク2)、残香 116時間。FEMA 2232、FEMA GRAS
- CASがylang ylangの等級I、II、IIIと完全に同じ
- しかし比重(0.906–0.923)はylang完全油(0.948–0.968)と範囲が重ならない
- 旋光度は−15から−30で、ylang IIIの−60から−40とも重ならない
- コーパスにはわずか 8件、使用量の中央値 0.86%
同じCASに4本の材料
前回ylangの22件を整理したところ、
3つの等級(I、II、III)がCAS 68606-83-7 を共有し、限定なしの完全油は 8006-81-3 だった。
この材料のCASも 68606-83-7 である。
つまり「同じCASなら同じ材料」という照合をすれば、カナンガはylang I、II、IIIと1本に統合される。
確かに同じ植物ではある。Cananga odorata だ。違うのは栽培型と産地で、notes 欄にはこう書かれている。
ジャワで栽培された Cananga Odorata Hook の花から水蒸留して得られる。
水蒸留であって、ylangでよく使われる水蒸気蒸留ではない。方法が違えば取れるものも違う。
物理欄が2つ、同意しない
CASは同じだと言い、測った数字は違うと言う。
| cananga oil | ylang ylang flower oil | |
|---|---|---|
| CAS | 68606-83-7 | 8006-81-3 |
| 比重 @25 °C | 0.90600 – 0.92300 | 0.94800 – 0.96800 |
| 屈折率 @20 °C | 1.49500 – 1.50500 | 1.49700 – 1.51100 |
| 残香 | 116時間 | 140時間 |
| サプライヤー | 40 | 93 |
**比重の2つの範囲はまったく重ならない。**上限0.923が下限0.948より低く、間に0.025の隙間がある。
これは実務で使える。比重瓶でこの2本を区別できる。 屈折率では区別できない(1.495–1.505対1.497–1.511で、ほぼ全域が重なる)。
旋光度でも区別できる。カナンガは −15から−30、ylang等級IIIは −60から−40。 2つの範囲は10度離れて接していない。
ナツメグとメースを書いたときは逆だった。 同じ木の2つの組織で、屈折率が重なりすぎて区別できなかった。この対には区別できる欄が少なくとも1つある。
香調欄にylangにはない2語がある
| 香調欄 | |
|---|---|
| cananga oil | 甘い、フローラル、バルサミック、グリーン、スパイシー、アニマル、ウッディ、ワクシー、レザー |
| ylang完全油 | フローラル、ペタル、ネロリ、リリー、スパイシー |
| ylang等級I | フローラル、ペタル、ジャスミン、ネロリ、スズラン、スパイシー、バルサミック、アーシー、ウッディ、ワイニー |
animal と leathery の2語は、ylang系のどれにも現れない。
これは安価でylangの代替として扱われることと整合している。 より劣ったylangなのではなく、アニマル・レザー方向に寄った別の材料なのだ。 ylangのあの清潔な花びらの香りが欲しいなら、カナンガに替えると頼んでいない層が1枚増える。
コーパスには8件しかない
| 件数 | 8(cananga oil 7、cananga essence 1) |
| 使用量の中央値 | 0.86% |
| 四分位 | 0.60% – 2.50% |
| 最高 | 10.0% |
ylangの152件と比べる。これはマイナーな材料だ。
しかも 8件のうちylangを同時に使っているのは1件だけ。実務上あまり一緒には現れず、 匂いの方向が違うことと符合する。同じ効果のために2本入れる人はいない。
使用量の中央値0.86%もかなり低い。私が測った全体の中央値は2.11%、 統合後のylangは2.50%だった。**ylangより3倍控えめに使われている。**あのアニマル感は多くは要らない。
前回の裏返し
前回のVerdoxでは、VertenexとはCASが違うのに、 分子式、分子量、蒸気圧、残香、強度ランクがすべて同じで、香調型だけが違った。
この材料はちょうど逆だ。CASが同じで、比重、旋光度、残香、香調欄がすべて違う。
| 識別子 | 物理欄 | 匂い | |
|---|---|---|---|
| Verdox / Vertenex | 違う | 同じ | 違う |
| cananga / ylang I–III | 同じ | 違う | 違う |
どちらの場合も識別子と測定値は別の話をしており、鼻は2回とも正しかった。
実務上の規則は単純だ。2本が同じ材料かどうかを1つの欄だけで判断しないこと。 CASは違うものを統合し、物理欄は同じものを分ける。
安全性と法規
- FEMA GRAS、FEMA 2232
toxicity_oralはNot determined。プレースホルダーである- 2016年に Zhang らが Phytomedicine で Cananga odorata 精油のマウスに対する抗不安作用を測り、 主要な活性成分を同定している(PMID 27912874)
あの論文が書いているのは「Cananga odorata 精油」だ。 このデータベースの分け方では、それはcananga oilかもしれないし、どのylang等級かもしれない。 論文は学名を使い、データベースは商業名を使う。その間に橋はない。
この記事が示していないこと
- **比重も旋光度も実測していない。**2つの範囲が重ならないのは欄の値の比較であって、私の測定ではない。
- 「水蒸留と水蒸気蒸留では取れるものが違う」は一般論だ。
notes欄はカナンガが水蒸留だとしか書いておらず、 ylangの方法は書いていない。それはylang側の記録のnotes(「花から水蒸気蒸留」)から読んだ。 - **8件の処方から堅牢な使用量の中央値は出ない。**0.86%は方向の目安にとどめること。
- 「アニマル/レザー」は香調欄の語であって、私が嗅いだものではない。
- CAS 68606-83-7 が4本を覆っている件について、CAS登録の原義は調べていない。 この番号はTSCAの定義では「Cananga odorata の抽出物およびその物理的改質誘導体」で、 もともと範囲が広い。だから共有していること自体は誤りとは限らない。 ただしCASを唯一の識別根拠にできないことは確かだ。