原料図鑑 · 157
原料図鑑:フォールデッド・スイートオレンジ油 —— サプライヤー122社で原油より多く、1件の記録が5倍から50倍まで覆う
· 10 分
CAS 8008-57-9、サプライヤー122社。スイートオレンジ原油の99社より多く、このデータベースで最もサプライヤーの多い柑橘の記録である。溶解度欄が思いがけず市場を開いて見せる。Orange Oil 5 X、10 X、20 X、Italian 5 Fold 10 Fold、Folded 5 fold to 20 fold、そして Orange Essential Oil 50 Fold。1件の記録が5倍から50倍までのすべての商品を覆っている。そして倍率には算術的な上限がある。原油のテルペン比率をfとすると、テルペンだけを抜く限り倍率は1/(1−f)を超えられない。90%なら10倍、95%なら20倍、50倍を作るには原油の98%がテルペンでなければならない。旋光度は+91から+78と登録されているが、完全脱テルペンのスイートオレンジは+11から+24であり、あの区間では50倍の製品を覆えない。残香欄は空で、原油は140時間、脱テルペンは212時間である。
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要点だけ
- 名称:sweet orange peel oil folded、CAS 8008-57-9、サプライヤー122社
- **スイートオレンジ原油(99社)より多い。**このデータベースで最もサプライヤーの多い柑橘の記録はフォールド油であって原油ではない
- 香調型 citrus。香調は甘い、フレッシュ、ジューシー、タート、オレンジピール
- 旋光度 +91.00から+78.00、比重0.854–0.865、保存期間12か月
- 残香欄は空。原油は140時間、脱テルペンは212時間
- コーパスでは 146件(スイートオレンジ類を統合)、使用量の中央値 3.11%
- 溶解度欄が市場の 5倍から50倍までの商品名を並べている
最も多く売られているスイートオレンジ油は原油ではない
| 記録 | サプライヤー | 旋光度 | 残香 | 外観 |
|---|---|---|---|---|
| sweet orange peel oil folded | 122 | +91 ~ +78 | (空) | 濃い褐色がかったオレンジ |
| sweet orange peel oil | 99 | +94 ~ +99 | 140 h | 黄橙から濃橙 |
| sweet orange peel oil terpeneless | 31 | +11 ~ +24 | 212 h | 無色から黄 |
**フォールド油のサプライヤーが原油より多い。**これ自体が注目に値する。 オレンジ油は世界で最も生産量の多い精油の1つでありながら、市場の主力形態は圧搾したままのものではなく濃縮品なのだ。
理由は前回のあの notesにある。柑橘油は9割以上がテルペンで、
それらは香りにほとんど寄与せず、アルコールに溶けず、酸化もする。輸送も保管も純粋な無駄である。
溶解度欄が市場を開いて見せる
solubility 欄は本来溶剤を並べる欄だが、サプライヤーのサンプル情報も収めているので、
思いがけず市場のリストになっている。
Orange Oil 10 X;Orange Oil 20 X;Orange Oil 5 X; Orange Oil Italian 5 Fold, 10 Fold;Orange Oil Folded 5 fold to 20 fold; Orange Essential Oil 50 Fold
1件のデータベース記録が、5倍から50倍までのすべての商品を覆っている。
「5倍」とは体積を5分の1に濃縮したという意味だ。買っているのは何かを足したものではなく、何かを抜いたものである。
倍率には算術的な上限がある
これを明快に説明したものを見たことがないが、単なる割り算だ。
原油のテルペン比率を f とし、フォールドの工程がテルペンだけを抜くとする。 テルペンをすべて抜いたあとに残るのは 1 − f の体積なので、倍率の上限は 1/(1 − f) になる。
| 原油のテルペン比率 | テルペンのみ抜く場合の倍率上限 |
|---|---|
| 90% | 10倍 |
| 95% | 20倍 |
| 98% | 50倍 |
データベースは柑橘油が「90%超がテルペン」だと述べている。 つまり市場のあの「50 Fold」を逆算すると、原油の98%がテルペンでなければならない。 スイートオレンジは確かに柑橘のなかでリモネン比率が最も高いので98%はありうるが、上限に張り付いている。
実務上の意味。倍率は宣伝の数字ではなく、逆に原油のテルペン含量を教えてくれる。 20倍を謳うオレンジ油は、その原油が少なくとも95%テルペンだったことを含意する。
あの旋光度の範囲では覆えない
optical_rotation は +91.00から+78.00 と登録されている。
前回の階段に照らす。
| 旋光度 | |
|---|---|
| スイートオレンジ原油 | +94 ~ +99 |
| フォールド(この記録) | +78 ~ +91 |
| スイートオレンジ脱テルペン | +11 ~ +24 |
**+78から+91は原油よりわずかに低いだけだ。**5倍油ならそれで記述できるが、 20倍や50倍の油はすでに脱テルペンに近く、旋光度は20台まで落ちるはずである。
13度幅の区間では、5倍から50倍までの製品ラインを覆えない。
これはデータベースの誤記ではなく、1件の記録がスペクトル全体の記述を求められているということだ。 ylangの4等級を書いたときと同種の問題である。 **粒度が足りない。**違うのは、ylangは少なくとも4件に分かれていたが、フォールドオレンジ油は1件しかないことだ。
実務では、フォールド油を買うなら必ず倍率を訊き、旋光度を測ること。 売り手が20倍と言うのに+85を測ったなら、それは20倍ではない。
色は両方向に動く
3件の appearance 欄。
| 外観 | |
|---|---|
| 原油 | 黄橙から濃橙 |
| フォールド | 濃い褐色がかったオレンジ |
| 脱テルペン | 無色から黄 |
フォールド油は原油より濃く、脱テルペン油は原油より薄い。
筋の通る説明の1つは工程の向きが違うことだ。フォールドはテルペンを上から留去するので、 有色成分は釜に残って濃縮され、色が濃くなる。脱テルペンが含酸素成分を留出させる方式なら、 色素は残渣に残り、製品は無色になる。
**これは私の推論で、データベースは何も言っていない。**ただし2つの色の欄は確かに逆方向に動いており、 この説明と矛盾しない。
残香欄は空だ
原油140時間、脱テルペン212時間、その中間のこの記録には値がない。
私が算出した関係に従えば両者の間に入り、 倍率が高いほど212に近づくはずだ。しかしそれも内挿であって測定ではない。
この記録の2つめの粒度の問題である。必要なのは1つの数字ではなく、倍率に伴って変わる曲線だ。
処方のなかで
スイートオレンジ類を統合すると 146件、使用量の中央値 3.11%、四分位2.00–6.00%、最高73.2%。
最もよく同席するもの。dipg(68)、linalool(63)、benzyl acetate(53)、coumarin(40)、 alpha-hexyl cinnamaldehyde(38)、hedione(36)、lilial(36)。
ただしコーパスの表記はほとんどが限定なしの orange oil(52)、orange oil florida(20)、
orange oil brazil(17)で、倍率を書いたのは orange peel oil 5 fold、7 fold、10 fold が各1件だけである。
レモンのときと同じだ。処方を書く人は規格を書かない。
安全性と法規
- FEMA GRAS、FEMA 2825
- 経口LD50 > 5,000 mg/kg(ラット)
- 保存期間 12か月。レモン油と同じく短く、リモネンが自動酸化するためである
notes欄は「医薬品の賦香と着香に使われる」と述べている
2020年に Oyedeji らがスイートオレンジ果皮精油と単一成分の2種の貯穀害虫に対する活性を測定し(PMID 32711776)、 2017年には Hong らがMDGC-MSで各種柑橘の対掌体組成を測定している(PMID 28444796)。
この記事が示していないこと
- **倍率上限の算術は「フォールドがテルペンだけを抜く」と仮定している。**実際の工程では含酸素成分も一部失われ、 実際の上限はさらに低くなる。算出したのは理論上界である。
- 「50 Foldは原油98%テルペンを意味する」はその算術の逆算であって測定ではない。 その製品の「50倍」の定義が体積濃縮と違う可能性もある。
- **色の段落は私の推論だ。**データベースは3つの
appearance値を与えただけで、工程の向きは述べていない。 - 旋光度は測っていない。+78から+91が50倍を覆えないという判断は、脱テルペンの記録の+11から+24を参照して推したものだ。
- 残香の内挿はしていないし、勧めもしない。残香欄は順位として使うべきだと書いた。
- **146件の統合はネロリとビターオレンジを除いている。**それらは別の材料だ。