はじめての調香 · 117
はじめての調香 #117:規格の両端が丸い数字なら、その範囲は3倍から5倍広い
· 11 分
屈折率と比重は、このデータベースで最も測定値らしい2つの欄だ。4千件あまりを走査すると、屈折率の範囲幅の中央値は0.0060、比重は0.0080だった。そして化学の知識がなくても使える信号が見つかった。両端がどちらも小数点以下2桁の丸い値である場合(1.40000 to 1.60000のような)、範囲幅の中央値は0.0200で、それ以外の3.3倍になる。比重では0.0300対0.0064で4.7倍だ。丸い端点は、その区間が測られたのではなく打ち込まれたことを意味する。この線をたどると、広い範囲の38%から54%は名前に fragrance や specialty を含む調合物だった。そもそも単一の規格を持てないものである。仮説も1つ検証した。マイナーな記録ほど点検されていないのではないか。成り立たなかった。サプライヤー数と規格幅の相関はわずか−0.055である。
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要点だけ
- 屈折率は 4,094件が解析でき、範囲幅の中央値は 0.0060。比重は 4,181件で中央値 0.0080
- 両端がどちらも「小数点以下2桁の丸い値」の記録は、明らかに範囲が広い。
| 欄 | 丸い端点の記録 | その組の幅の中央値 | それ以外の中央値 | 倍数 |
|---|---|---|---|---|
| 屈折率 | 391(9.6%) | 0.0200 | 0.0060 | 3.3× |
| 比重 | 496(11.9%) | 0.0300 | 0.0064 | 4.7× |
- 広い範囲の記録の **38%から54%**は名前に
fragrance/specialty/flavorを含む調合物 - 端点が降順に書かれているもの:屈折率9件、比重18件
- 「マイナーな記録は点検されていない」という仮説を検証し、成り立たなかった(ρ = −0.055 と −0.024)
前回が残した形
前回フォールデッド・スイートオレンジ油を書いたとき、 1件の記録が5倍から50倍までのすべての商品を覆う必要があるのに、旋光度の区間は13度幅しかなく覆えないという問題を見た。
ylangの4等級も同じ形だ。
2度あったので問いたくなった。この「1件の記録がスペクトル全体を記述する」状況は、規格の範囲幅から直接見えないだろうか。
まず基準線を作る
屈折率と比重は、このデータベースで最も測定値らしい2つの欄だ。物理定数であって、 残香や香調のように主観的ではない。
| 欄 | 解析可能 | 幅の中央値 | 四分位 |
|---|---|---|---|
| 屈折率 | 4,094 | 0.0060 | 0.0040 – 0.0100 |
| 比重 | 4,181 | 0.0080 | 0.0060 – 0.0140 |
純化合物の屈折率は1つの定数で、実際の規格は測定と純度の余裕を少し取る。 0.006前後がその余裕のあるべき姿である。
丸い端点は信号だ
これらを見てほしい。
egyptian musk fragrance 1.40000 to 1.60000
rosemary fragrance 1.40000 to 1.58000
apple fragrance 1.34000 to 1.50000
longifolene 1.42000 to 1.60000
ginger root oil cochin 0.87000 to 1.50000
**両端がどちらも小数点以下2桁の丸い値だ。**これほど都合よく揃う測定値はない。
これを規則として全庫を走査すると、予想外にきれいな結果が出た。
| 欄 | 丸い端点 | 幅の中央値 | それ以外 | 倍数 |
|---|---|---|---|---|
| 屈折率 | 391件(9.6%) | 0.0200 | 0.0060 | 3.3× |
| 比重 | 496件(11.9%) | 0.0300 | 0.0064 | 4.7× |
それが何の材料かを知る必要はない。両端が丸いかどうかを見れば、その区間が測られたものか打ち込まれたものかがわかる。
これは純度の既定値 95.00 to 100.00 を見つけたときと同じ方法だ。
数値が正しいかを検査するのではなく、数値の形が測定結果らしいかを検査している。
広い範囲の半分は調合物だ
幅が中央値の4倍を超える記録を取り出し、名前を見る。
| 欄 | 広い範囲の記録 | うち fragrance/specialty/flavor を含む |
|---|---|---|
| 屈折率 | 283件(6.9%) | 153件(54%) |
| 比重 | 486件(11.6%) | 183件(38%) |
egyptian musk fragrance、rosemary fragrance、apple fragrance、
jasmin specialty、herbal specialty、peach fragrance。
**これらは材料ではなく調合物だ。**供給元ごとに「アップルフレグランス」の処方は違うので、 その記録が単一の規格を持てるはずがない。1.34から1.50と書くのは「だいたいこのあたり」と言っているだけである。
問題は数字が誤っていることではなく、その欄がその種の記録に対して意味を持たないことだ。
この表にいてはいけない純化合物が1つ
longifolene(#22800、サプライヤー16社)は単一化合物で、C15H24、CAS 475-20-7。
その規格。
屈折率 1.42000 to 1.60000 (幅0.18、中央値の30倍)
比重 0.93000 to 1.11000 (幅0.18)
旋光度 +14.00 to +54.00 (幅40度、中央値は10度)
3つの欄がすべて丸い端点で、すべて異常に広い。
同じ分子式の他のセスキテルペンはこうなっている。
| 材料 | サプライヤー | 屈折率 | 比重 |
|---|---|---|---|
| beta-caryophyllene | 61 | 1.498 – 1.504 | 0.899 – 0.908 |
| valencene | 44 | 1.498 – 1.510 | 0.910 – 0.922 |
| alpha-cedrene | 19 | 1.500 – 1.503 | 0.926 – 0.937 |
| alpha-humulene | 16 | 1.499 – 1.505 | 0.889 – 0.895 |
| (−)-isolongifolene | 11 | 1.495 – 1.501 | 0.926 – 0.932 |
| longifolene | 16 | 1.420 – 1.600 | 0.930 – 1.110 |
自身の構造異性体である (−)-isolongifolene の規格は30倍きつい。
そして正常なセスキテルペンの屈折率はすべて1.495から1.510に集まっている。 longifolene の真値もそこにあるはずで、1.42から1.60という区間はそれを含んではいるが、何も教えてくれない。
仮説を1つ検証し、成り立たなかった
longifolene のサプライヤーが16社しかなく規格がこれほど悪いのを見て、説明を1つ思いついた。 マイナーな記録は使われないので、壊れていても気づかれない。
この仮説は検証できる。サプライヤー数で分けて規格幅を見た。
| サプライヤー | 屈折率の幅の中央値 | 比重の幅の中央値 |
|---|---|---|
| 0社 | 0.0078 | 0.0120 |
| 1–4 | 0.0060 | 0.0070 |
| 5–19 | 0.0060 | 0.0070 |
| 20–49 | 0.0060 | 0.0080 |
| 50社以上 | 0.0060 | 0.0080 |
0社の組がやや広いほかは、まったく平らだ。 相関係数は ρ = −0.055(屈折率)と −0.024(比重)で、関係がないに等しい。
**仮説は成り立たない。**規格の良し悪しは売っている業者の数と関係がない。 longifolene のサプライヤー16社は alpha-humulene と同数であり、後者の規格はまったく正常である。
(辛うじて残るのは0社の組と、「丸い端点」の比率が50社以上の組では4%しかないことだ。 他の階級は9%から14%ある。最も人気のある材料は確かに丸い端点が少ないが、差は大きくない。)
自分の仮説を公に覆すのはここ数回で2度目になる。 前回は残香欄の長い側だった。
自分で走らせられる3つの規則
任意の材料のページを開いて。
- 屈折率か比重の両端が丸い数字か。(
1.40000 to 1.60000)→ 打ち込まれたものだ - **範囲は0.01より広いか。**屈折率の中央値は0.006で、0.02を超えると上位11%に入る
- 名前に
fragrance/specialty/flavorがあるか。→ 調合物なので規格にもともと意味がない
1番目が最も有用だ。基準線を必要としないからである。屈折率の正常な範囲を知らなくても、 その2つの数字が整いすぎていないかを見るだけでよい。
そして同族の材料を並べて比べられるなら(上のセスキテルペンの表のように)、それが最も強い。 同じ分子式の2本の材料で、規格が30倍違ってよいはずがない。
この記事が示していないこと
- **どの材料の正しい屈折率も比重も調べていない。**全体は形と分布の比較である。
- **「丸い端点」の判定は私が決めたものだ。**小数点以下ちょうど2桁の有効数字とした。 別の定義(たとえば3桁)にすれば数字は変わる。
- **幅の中央値0.0060はこのデータベースのものだ。**機器の精度でも業界規格でもない。
- 調合物の段落は名前で判断している。
specialtyのいくつかは実際には単一材料かもしれないが、1件ずつは見ていない。 - **longifolene については同族と不一致であることしか示していない。**どの数字が正しいかは示していない。
- **サプライヤー数の仮説は2つの欄でしか検証していない。**別の欄(残香や沸点など)では結果が違うかもしれないが、試していない。
- 化学データセットの自動クリーニングには専門の文献がある。Mansouri らの2016年の手順(PMID 27885862)は 同種の問題を扱っている。ここでやったのは目視で追える3つの規則にすぎない。