はじめての調香 · 55
精油三滴を 10 mL に入れると何 % か——ついでに、コーパスの 89% が上限超えに見える理由
· 11 分
r/DIYfragrance に、結婚式用にイランイラン精油で香水を作ったら好評だった、私たちは複雑に考えすぎていないか、という投稿が立った。イランイランの最終製品での上限は 0.73% だという指摘が入り、そこから安全ガイドラインを信じるべきかという論争が三十件あまり続く。投稿者は実際の処方を二度書いている。アルコール 10 mL に三滴。換算した人は一人もいなかった。計算すると 1.09% から 2.17% で、区間の全体が線の上にある。別に作ったボディオイルは 0.62% から 1.23% で、線が真ん中を通る。そしてもっと説明する価値があるのが三つ目の数字で、当サイトの処方コーパス 954 件ではイランイランの使用量の中央値が 2.5%、用例の 89% が 0.73% を超えている。それらの処方は違反していない。
所要 6 分。
結婚式用に自分で香水を作ったら褒められた、処方はイランイラン精油とラベンダーをアルコールに入れただけ、という投稿があった。私たちは時々、物事を複雑にしすぎていないだろうか、と本人は書いている。
一人が数字を出した。
「イランイランが最終製品の 0.73% までという上限は計算に入れましたか。」(berael)
そこからの三十件あまりは、安全ガイドラインを信じるべきかという論争になる。投稿者は安全指針を「まったく信じていない」、常識と直感でやると書き、相手は研究をしていないなら知識とは言えないと返す。どちらも動かなかった。
そして投稿者はスレッドの中で二度、自分の実際の処方を書いている。
「精油三滴をアルコール 10 mL に。ゴマ油でボディオイルも作った。そちらは 10 mL に二滴」
42 件の返信のうち、その三滴を百分率に換算した人は一人もいなかった。
換算
データベースはイランイラン花油の比重を 0.948 から 0.968 としている(中間の 0.958 を使う)。エタノールは 0.772 から 0.786(0.779 を使う)。
精油用スポイトは 1 mL あたり 20 から 33 滴あたりに落ちることが多く、一滴 0.03 から 0.05 mL になる。どれを使っているか分からないので、区間の全体で計算する。
三滴をエタノール 10 mL に入れたときの重量百分率。
| 一滴の体積 | 濃度 | 0.73% との比 |
|---|---|---|
| 0.03 mL | 1.09% | 1.50 倍 |
| 0.04 mL | 1.45% | 1.99 倍 |
| 0.05 mL | 1.81% | 2.48 倍 |
| 0.06 mL | 2.17% | 2.97 倍 |
**区間の全体が線の上にある。**最小の妥当な滴量でも 1.5 倍になる。
この結論は彼のスポイトがどれかを知らなくても出る。妥当なスポイトのどれを使っても同じ答えになるからだ。
ボディオイルの方は違う
ゴマ油 10 mL に二滴(比重をおよそ 0.92 とする)。
| 一滴の体積 | 濃度 | 0.73% との比 |
|---|---|---|
| 0.03 mL | 0.62% | 0.85 倍 |
| 0.04 mL | 0.83% | 1.13 倍 |
| 0.05 mL | 1.03% | 1.41 倍 |
| 0.06 mL | 1.23% | 1.69 倍 |
線が真ん中を通っている。
スレッドには「キャリアオイル 10 mL に二滴は IFRA 上限を超えている」という書き込みがある。典型的な滴量では正しく、小さい滴量では成り立たない。
滴が単位にならない理由と、自分のスポイトの測り方は〈処方に滴数を使ってはいけない理由〉に書いた。ここで必要な一文だけ引く。Sklubalová と Zatloukal の 2005 年の論文は、条件を揃えれば滴量の変動係数は 3.3% しかないが、ノズルの設計、傾ける角度、押し出す速度の三つに有意な影響があると報告している。一滴は自分にとっては安定していて、ボトルが変われば安定しない。
その 89% は何なのか
ここからがこの記事の本題になる。
公開処方コーパス 954 件のうち、159 件がイランイランを使っていて 16.7%。使用量の中央値は 2.500%、90 パーセンタイルが 8.000%、最大 24.82%。
用例の 89% が 0.73% を超えている。
プロの処方が総崩れに見える。そうではない。
その 954 件は香料濃縮液の処方で、0.73% が管理しているのは最終製品になる。
濃縮液の中の 2.5% のイランイランは、20% 濃度のオードパルファムに仕上げればボトルの中で 0.5% になる。線の下だ。
濃縮液の中の 2.5% が最終製品で 0.73% を超えるには、濃縮液がボトルの 29.2% 以上を占める必要がある(0.73 ÷ 2.5)。それはもう香水級の濃度を超えている。
言い換えると、コーパスの中央値とあの上限はそもそも衝突していない。測っているものが違うからだ。
**投稿者の問題は入れすぎたことではなく、一つの工程を飛ばしたことにある。**精油をそのままアルコールに入れれば、その数字が最終製品の数字になる。プロの処方の 2.5% の後ろには、もう一度の希釈がある。
これは溶媒の回でも踏んだ落とし穴になる。濃縮液段階の最適解と仕上がり段階の最適解は別々の問題だ。分母を先に決めなければ数字に意味が出ない。
その線が管理しているもの
イランイランの急性毒性の数字は恐ろしいものではない。データベースが与えているのはラット経口 LD50 5000 mg/kg 超、ウサギ皮膚 LD50 5000 mg/kg 超。
制限は急性毒性のためではない。同じレコードの GHS 欄には H315(皮膚刺激を起こす)と **H317(アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ)**が並んでいる。
スレッドの一人が言っていたのはこの項目のことになる。
「本当のところ、アレルギーを発症してイランイランを二度と使えなくなることがある。多くの材料で同じだ」(_nate69)
この発言には数字を添えられる。Geier らが 2022 年に Contact Dermatitis でドイツ語圏 IVDK のデータを分析したところ、皮膚炎の患者 10,930 人に 12 種類の精油をパッチテストして、イランイラン(I + II)油の陽性率 3.9% が十二種類で最も高かった。この論文の詳細と、それを一般人口の確率として読めない理由は〈合成のものは頭が痛くなるから天然だけ使う〉で扱った。
ここでは、あちらで触れなかった角度を一つ足しておく。同じ研究はマッサージ師と美容従事者が陽性者の中で比率が高いことも見つけている。違いは接触の頻度と原液を扱うかどうかにあって、材料の側にはない。
前の記事で見落としていたこと
この記事を書きながらイランイランのレコードを見直して、〈原料図鑑:イランイラン油〉で引いた数字に問題があることに気づいた。
あちらにはこう書いた。一般のイランイラン油の残香は 140 時間、等級 I は 319 時間で倍以上あり、分留の間に確かに差がある、と。
数字はどちらもデータベースにあり、条件も同じ(ともに 100% 原液)になっている。問題は向きの方だ。業界の分留の説明はこうなっている。
「Extra はよりトップ寄りで、フローラルのインパクトが強く残香はやや短い。第三分留は長持ちするがフローラルのインパクトはやや弱く、枝のような側面がある」(oval_euonymus)
第一分留は残香が短い側のはずで、データベースが与えている数字はコンプリートの 2.3 倍になっている。
そして等級 II と III、業界が長持ちすると言っている二つは、残香欄が空になっている。
どちらが正しいかは判断できない。確かなのは、私が当時は数字だけを読んで業界の説明と突き合わせていなかったこと、そして分留を選ぶ主な理由が残香の違いだということになる。あちらの記事には訂正を追記した。
(残香の欄で足をすくわれるのはこれで二度目になる。前回は同じ分子が 8 時間と 388 時間になっていたローズオキサイドで、あれは測定条件の違いだった。今回は条件が同じで向きが逆になっている。)
実際にどうするか
- **分母を先に決める。**濃縮液の百分率に、ボトルの中での濃縮液の比率を掛けたものが最終製品の百分率になる。どんな上限を見ても、まずどの層を管理しているのかを問う。
- **自分のスポイトを一度測る。**秤に 20 滴落とし、20 で割り、比重で割る。五分で済む。
- 処方は滴数ではなく重量百分率で書く。
- イランイランをそのままアルコールに入れるなら、0.73% は 10 mL あたり 1.2 滴(一滴 0.05 mL、比重 0.958 で逆算)。
- **高い濃度で作るなら、先に濃縮液を作ってから希釈する。**コーパスの中央値 2.5% はそうやって出ている。
- **日常的に触れる人ほどリスクが高い。**原液を扱うときの手袋は安い保険になる。
この記事が立証していないこと
- **IFRA 基準の原文は読んでいない。**0.73% はスレッドからの引用で、第三者のウェブページでも同じ数字を見た。どの製品カテゴリーのものか、第 51 改訂での現行値かどうかは調べていない。
- **IFRA のカテゴリー分類(1 から 12)はまったく扱っていない。**同じ材料でもカテゴリーによって上限は大きく違い、「最終製品」の指す内容も変わる。上の倍率にとって最大の不確実要因になる。
- **一滴 0.03 から 0.05 mL は一般的な値であって測った値ではない。**Sklubalová らが測ったのは点眼液(水溶液)で、精油は表面張力も粘度も違う。あの論文で支えているのは「滴量はノズルと手技に左右される」という点になる。
- ゴマ油の比重 0.92 は一般値で、このデータベースにゴマ油のレコードはない。
- **イランイラン油の比重は区間の中点を使った。**両端で計算すると三滴の方は 1.79% から 1.83% になり、結論は変わらない。
- 29.2% という交点は中央値 2.5% で計算したもので、159 件それぞれの実際の希釈倍率ではない。各濃縮液が最終的にどこまで薄められたかは分からない。
- コーパスが濃縮液の処方だというのは処方の構造からの推定(多くがアルコールを含まず、総量が部で書かれている)。少数は元から仕上がりの処方かもしれず、一件ずつは確認していない。
- Geier 2022 は皮膚科の受診者集団で、3.9% を一般人口の感作率として読むことはできない。測ったのは I + II の分留になる。
- 残香の 140 対 319 は、条件が同じであることと業界の説明と向きが逆であることまでしか確認していない。