原料図鑑 · 102
原料図鑑:アセトアルデヒド —— 供給元 94 社、そして室温で沸騰する
· 7 分
CAS 75-07-0、供給元 94 社で、この庫でも供給元の多い方に入る。沸点 20〜21 °C、引火点 −40 °C、蒸気圧 902 mmHg @ 25 °C、GHS は H224 極めて引火性が高い。保存欄は「密封容器で冷蔵」で、全庫に 145 件ある書き方だが、この一本は理由が違う。沸点が室温の上にある。残香欄は「1 時間未満」でこれも最短。天然での存在の欄はビールに 265,926 ppm、つまり 26.6% と記録している。評価は 0.10% 以下の溶液を推奨。
**要点:**この庫で最も極端な揮発性の材料でありながら、供給元の多い方に入る。買う前に知るべきなのは香りではなく沸点になる。
項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| CAS | 75-07-0 |
| EINECS | 200-836-8 |
| 同義語先頭 | エチルアルデヒド |
| 分子式 | C2H4O、分子量 44.053 |
| データベース分類 | 化粧品・フレーバー成分 |
| 外観 | 無色澄明の液体(実測) |
| 純度 | 99.00 〜 100.00 |
| 融点 | −125 〜 −123 °C |
| 沸点 | 20〜21 °C @ 760 mmHg |
| 引火点 | −40.00 °C |
| 蒸気圧 | 902.0 mmHg @ 25 °C |
| 蒸気密度 | 1.5(空気 = 1) |
| logP | −0.30(推定) |
| 比重 | 0.775〜0.785 @ 25 °C |
| 水溶解度 | 1,000,000 mg/L @ 25 °C(実測)、水と混和 |
| 溶解性 | アセトン;アルコール;エチルエーテル;水 |
| 香調タイプ | エーテル的 |
| 香調 | 刺激的、エーテル的、アルデヒド的、フルーティ、フレッシュ、マスティ |
| 強度 | 高。0.10% 以下の溶液での評価を推奨(ランク 3) |
| 残香 | 1 時間未満(100% 原液) |
| 保存期間 | 12 か月 |
| 保存 | 密封容器で冷蔵 |
| 天然での存在 | ビール 265,926 ppm;白パン 40,221 ppm;リンゴジュース 3,643 ppm;バター 109 ppm;ほか数百項目 |
| 供給元 | 94 社 |
| 規制 | JECFA 80、FEMA 2003、CoE 89、FLAVIS 05.001 |
| 構造クラス | I |
| GHS | H224 極めて引火性の高い液体および蒸気;H319 強い眼刺激;H335 呼吸器への刺激;H351 発がんのおそれの疑い;H402 水生生物に有害 |
| 経口毒性 | ラット LD50 661 mg/kg |
| NOEL | 125 mg/kg 体重/日 |
| 備考 | 無色の引火性液体で、酢酸、香水、香料の製造に用いられる。アルコール代謝の中間体でもある |
三つの数字
**沸点 20〜21 °C。**多くの人の室温はその範囲かそれ以上になる。純品は机の上で沸騰する。
**引火点 −40 °C。**全庫で摂氏の引火点が読めた 13,166 本の中で最も低い側に入る。エタノールは 9.44 °C になる。
**蒸気圧 902 mmHg @ 25 °C。**大気圧は 760 mmHg。
前回書いたサリチル酸フェネチルの蒸気圧は 0.000002 mmHg だった。両者の差は 4 億 5,100 万倍で、しかも同じデータベースの同じ欄に入っている。
(材料をまたいで蒸気圧を比べるときに注意が要るのはこのためになる。この欄の桁の広がりは多くの人の予想より大きい。コーパスでよく使われる材料の範囲は 83,333 倍で、それでもキャップを嗅ぐ回で計算した「よく使われる部分」だけの数字になる。)
保存欄が「冷蔵」と書いている
保存欄の標準的な書き方は「冷暗所に密封して熱と光を避ける」で、この欄を持つ全庫 1,232 件のうち 1,045 件を占める。
この一本は refrigerate in tightly sealed containers(密封容器で冷蔵) と書いている。
**訂正(2026-08-28):**初版で「唯一の一本」と書いたのは誤りだった。この欄を持つ記録のうち冷蔵を求めるものは **145 件(11.8%)**あり、ほかに 42 件が窒素下での保存を求めている。私自身が書いた原料図鑑の中にも冷蔵指定が六本ある。(E)-β-ダマスコン、γ-デカラクトン、酪酸エチル、酢酸ゲラニル、β-イオノン、α-イオノン。当時は記憶で照合し、全庫を走査していなかった。
珍しいのは冷蔵そのものではなく、その理由になる。冷蔵を求める他の材料は酸化や重合を嫌うものが多いのに対し、この一本は沸点が室温の上にある。
保存期間も 12 か月しかない。多くの材料は 24 か月以上になる。
残香 1 時間未満
残香欄は < 1 hour(s) at 100.00%。
残香の回で「より大きい」は下限だと書いた。ここは逆向きになる。「未満」は上限であり、1 時間はこの庫の最短の刻みになる。
実務上は、処方の中に留めるための材料ではないということになる。最上端の一瞬のためのものだ。
ビール 265,926 ppm
天然での存在の欄は長く、数字が最も大きいのはビールで 265,926 ppm、つまり 26.6% になる。
この数字は慎重に読む必要がある。ある分析報告における揮発性成分の中の比率であって、ビール全体の重量比ではない(そうだとするとビールの四分の一がアセトアルデヒドになってしまう)。この欄は分母を書いておらず、私には確認できない。
(天然での存在の欄の百分率がどれほど当てにならないか、同じ植物でも産地で数百倍振れることは天然の振れ幅の回で測った。)
読みやすいのは備考欄の一文の方になる。**これはアルコール代謝の中間体である。**エタノールは体内でまずアセトアルデヒドになり、次に酢酸になる。二日酔いに関係するのはこちらだ。
(だからビール、パン、ヨーグルトといった発酵食品に現れるのは筋が通る。同じ経路の別の端になる。)
logP −0.30
親水性で、水と混和する(1,000,000 mg/L は実測値)。
香料では珍しい。私が書いてきた材料の多くは logP が 2 から 7 のあいだで、この一本は負になる。
実務上の意味は、油相にとどまってくれないことと、水を含む媒体では水相に分配されることになる。
この記事が立証していないこと
- **私はこれを嗅いでいない。**全編がデータベースの項目と論文一本による。
- **上記の物性はすべて純品のもの。**実際に売られているのは 10% 以下のエタノール溶液が多く、沸点も引火点も蒸気圧も挙動が異なる。
- 初版の「冷蔵を指定する唯一の一本」は誤りで、全庫に 145 件ある。訂正は上に残した。教訓は、「唯一」と書く前に全庫を走査すること。
- **ビールの 265,926 ppm は分母を確認できない。**この欄は揮発性成分中の比率か全体の重量比かを書いていない。
- **蒸気圧 902 mmHg は実測値で、サリチル酸フェネチルの 0.000002 は推定値になる。**4 億 5,100 万倍は実測対推定の比になる。
- **H351「発がんのおそれの疑い」の根拠は調べていない。**GHS 分類欄の文言であって、原評価は読んでいない。
- Liaw 2007 から引いたのは混合物の引火点が成分から予測できるという点で、あの論文はアセトアルデヒドを測っていない。
- **コーパスの統計は取っていない。**954 件の処方コーパスでの出現率は調べていない。