原料図鑑 · 132
原料図鑑:ラバンジン油 —— 3件の記録が同じ一文で自分を定義しながら、違う CAS と違う香調型を持っている
· 11 分
データベースにはラバンジン油の記録が3件ある。grosso(サプライヤー66社)、lavandin oil(51社)、abrialis(36社)だ。3件は FEMA 2618 を共有するが、CAS は2つある。最も奇妙なのは真ん中の2件で、lavandin oil と abrialis lavandin oil の別名欄は一字違わず同じ一文「Lavandula hybrida var. abrial の開花した草本から蒸留した精油」であり、比重も屈折率も残香216時間も強度段階2も同じでありながら、異なる CAS を持ち、香調型は一方が floral、他方が herbal である。D'Addabbo らは2021年に3つのラバンジン品種を測り、リナロールは40%から66%まで開いた。そして lavandin oil の備考欄の TSCA 定義には、ヒルガオ科の Convolvulus scoparius と書かれている。ラベンダーとは何の関係も無い。
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要点
- 名称:lavandin oil(ラバンジン油)、FEMA 2618;データベースには主要な記録が3件
- 交雑種である:真正ラベンダー × スパイクラベンダー、1920年代末に現れた
- 香調型:一方は floral、他方は herbal;共通するのはカンファー感と石鹸感
- 強度は中(段階2);残香216時間
- サプライヤー:grosso 66社/lavandin oil 51社/abrialis 36社
- 文献でのリナロール含量は 34%から66%
まず3件の記録について
| grosso #21892 | lavandin oil #21881 | abrialis #21889 | |
|---|---|---|---|
| サプライヤー | 66 | 51 | 36 |
| CAS | 8022-15-9 | 8022-18-2 | 8022-15-9 |
| FEMA | 2618 | 2618 | 2618 |
| 別名欄が書く品種 | hybrida grosso | hybrida var. abrial | hybrida var. abrial |
| 香調型 | floral | floral | herbal |
| 香調 | フレッシュ、海藻、ラベンダー、ハーバル | フローラル、ハーバル、ラベンダー、カンファー、石鹸 | ハーバル、スパイシー、カンファー、石鹸、フローラル、バルサミック、ウッディ、海藻 |
| 残香 | —(空) | 216時間 | 216時間 |
| 比重 | —(空) | 0.889〜0.910 | 0.889〜0.910 |
真ん中の2列を見てほしい。lavandin oil の別名欄は var. abrial だと言い、その隣に abrialis lavandin oil という記録があって、別名欄の一文は一字違わず同じである。
2件が同じ一文で自分を定義し、物性も完全に同じでありながら、違う CAS を持ち、香調型は一方が floral で他方が herbal だ。
しかも CAS のまとまり方が名前と噛み合わない。8022-15-9 は grosso と abrialis を覆い、自ら abrial と名乗る記録が 8022-18-2 である。
これは前回の記事で扱った現象の最も明快な例だ——FEMA 番号、CAS、名称、別名欄という4つの識別手段が、この一族の中で互いに矛盾している。
この油は人が作ったものだ
notes 欄が来歴を語っている。
ラバンジン油の物語は大成功の物語である。1920年代末まで知られておらず、今日この精油は天然由来の世界十大香料油の一つに数えられる。ラバンジンは交雑植物であり、真正ラベンダー(Lavandula officinalis)とアスピックすなわちスパイクラベンダーを交配して作られた。得られた植物は Lavandula hybrida と呼ばれ、非常に多くの形態が存在し、そのうち少数が他より明らかに興味深い。
**「非常に多くの形態」が上の表の出どころである。**grosso、abrial、super、sumian⋯⋯それぞれが栄養繁殖された系統だ。
交雑種は通常不稔で挿し木で殖やす——だから1つの品種は遺伝的に完全に同一の広大な一面であり、品種どうしは大きく違いうる。
(grosso の notes は交雑のもう半分を補っている。lavandula hybrida = lavandula officinalis + lavandula latifolia。latifolia がスパイクラベンダーであり、それがカンファーを含む——香調欄の「カンファー感」の出どころであり、真正ラベンダーとの最も明快な境界線でもある。)
品種間でどれだけ違うか:40%から66%
D'Addabbo らは2021年、《Molecules》で3つのラバンジン品種(Abrialis、Rinaldi Cerioni、Sumiens)の組成を GC-FID と GC-MS で測った。
| 成分 | Rinaldi Cerioni | Sumiens | Abrialis |
|---|---|---|---|
| リナロール | 約66% | 約48% | 約40% |
| 酢酸リナリル | — | 14.9% | 18.3% |
| カンファー | 11.5% | — | — |
| 1,8-シネオール | — | 12.1% | — |
同じ交雑種の3品種で、リナロールは40%から66%——26ポイントの開きだ。
そして Kamali らが2012年に加圧流体抽出で測った組成はまた違う。リナロール34.1%、酢酸リナリル30.5%、1,8-シネオール8.1%、カンファー7.3%。
2本を合わせると、リナロールの範囲は34.1%から66%になる。
**そしてこの3件の記録はすべて FEMA 2618 を共有している。**前回、FEMA 番号が答えているのは「食品に使ってよいか」であって「これは何か」ではないと書いた——ここがその一文の代償である。
(2本の抽出法が違うことに注意してほしい。D'Addabbo が測ったのは精油、Kamali は加圧流体抽出だ。方法は組成に影響するので、あの34.1%を40%と直接並べることはできない。)
備考欄に混入が1件ある
lavandin oil #21881 の notes 欄の末尾はこうだ。
tsca definition 2008: extractives and their physically modified derivatives. convolvulus scoparius, convolvulaceae.
Convolvulus scoparius はヒルガオ科の植物(カナリア諸島のいわゆる「ローズウッド」)であり、ラベンダーとは何の関係も無い。あの TSCA 定義は別の材料のもので、この記録に貼られている。
grosso の同じ欄と比べてほしい。そちらには正しく lavandula hybrida = lavandula officinalis + lavandula latifolia, labiatae と書かれている。
これはこのシリーズで集めた4件めの欄の混入である——先の3件は veramoss の「自然界に存在しない」(誤り)、アンブレインの「マッコウ・シロナガスクジラ」、ロジノールの毒性欄の後ろに続く販促文だ。
notes 欄を読むときは、別の記録の内容が混ざっているかもしれないと考える。
香調欄の「海藻」と「石鹸」
3件のうち2件の香調欄に **algae(海藻)**が現れる——grosso と abrialis だ。この記述語が珍しいことはツリーモスの記事でも注記した。
そして **soapy(石鹸感)**は lavandin oil と abrialis の2件に現れる。
**「石鹸感」は欠点ではなく、この油の職務である。**ラバンジンは真正ラベンダーよりはるかに収量が高く、価格はずっと安い。そしてカンファーがアルカリ環境でも持ちこたえさせる——洗剤と石鹸の香料の背骨であり、その「石鹸の匂い」は、あなたが人生で嗅いできた石鹸にこれが入っていたからだ。
使い方
- **真正ラベンダーの安価版ではない。**カンファーとシネオールがより鋭く清潔感のある印象を与え、真正ラベンダーはより甘く柔らかい。
- **買うときは品種を指名する。**grosso と abrial は別のものであり、CAS や FEMA だけでは見分けられない。
- 残香216時間、強度は中で、機能性香料の条件に持ちこたえる。
- **カンファー含量が鍵となる規格だ。**上の表では一品種が11.5%、別の品種はほぼゼロで、処方はその差を感じ取る。
- 経口 LD50 > 5000 mg/kg(1976)——急性毒性はこの材料の問題ではない。IFRA のリナロールと酢酸リナリルの制限を確認するほうが重要だ。
この記事が立証していないこと
- **どの品種も嗅いでいない。**全体が欄位、全庫統計、2本の論文である。
- その2本は香水のために書かれたものではない——D'Addabbo は殺線虫活性を、Kamali は抽出条件の最適化を測った。引いたのは組成のデータだけである。
- 2本の抽出法が違うので、34.1%と40〜66%を直接並べることはできない。
- 「lavandin oil と abrialis が同じもの」は別名欄の字面からの推論であり、データベースがなぜ異なる CAS を与えたのかは確認できていない。
- TSCA の一文は貼り間違いだと判断したが、TSCA の原簿で 8022-18-2 の下に何が書かれているかは確認していない。
- 「石鹸香料の背骨」は業界の常識で、使用量のデータは持っていない。
- IFRA の条文は確認していない。