原料図鑑 · 119
原料図鑑:ロジノール(rhodinol)—— 1つの名前に2つの異性体、2つの植物由来、そして嗅ぎ分けられない旋光度
· 9 分
CAS 141-25-3、サプライヤー41社、FEMA 2980。全庫の香料で純度の幅が最も広い1本だ——70.00 から 100.00、30ポイント。理由は名前に書いてある。head_synonym 欄は「3,7-ジメチル-6 および 7-オクテン-1-オール」、2つの位置異性体が1つの商品名を共有している。そしてサプライヤー項目には「RHODINOL EX-CITRONNELLA」と「RHODINOL EX-GERANIUM」が並ぶ。同じ名前で2つの植物由来だ。旋光度欄も幅(−5から−10)で、ロットごとに鏡像異性体組成が変わることを意味する——だが Laska 1999 が20人に三点比較法を行ったとき、β-シトロネロールは被験者が区別できなかった7対の1つだった。
読了目安 5 分。
要点
- 名称:rhodinol(ロジノール)、CAS 141-25-3、C10H20O、分子量 156.27
- head_synonym:3,7-ジメチル-6 および 7-オクテン-1-オール
- FEMA 2980、CoE 76、FCC 収載 Yes、構造クラス I
- 香調タイプ:floral;香調欄には15語——フローラル、レッドローズ、スパイシー、ワクシー、パウダリー、ゼラニウム、スイート、ローズ、ファッティ、シトロネラ、フレッシュ、シトラス、マンダリン、レモン、ライム
- 強度:中;残香236時間;蒸気圧 0.018 mmHg
- 純度:70.00 から 100.00——全庫の香料で最も広い幅の1つ
- 旋光度:−5.00 から −10.00
- 由来:
occurrence欄は「シトロネラ油;ゼラニウム油」 - サプライヤー:41社
名前自体が混合物だと書いている
head_synonym 欄。
3,7-ジメチル-6 および 7-オクテン-1-オール
**「6 および 7」は誤植ではない。**二重結合が6位にあるものと7位にあるもの、2つの位置異性体が1つの商品名を共有している。
6位のほうがシトロネロールで、7位のほうがロジノールの狭義の定義だ。そして市販の「rhodinol」は両者の混合物で、比率は一定しない。
これがあの70から100という幅の出どころだ——不純物ではなく、この名前がもともと覆っている範囲である。(純度の幅が広くなる3つの成因は〈純度欄のあの幅はどれくらいか〉に整理した。ロジノールは「名前がそもそも混合物を指す」類の最も極端な例だ。)
(シトロネロールには独自の記録があり、サプライヤー198社のゲラニオールが同じ線の3本目だ。)
2つの植物由来、同じ名前
溶解度欄に収められたサプライヤー項目には、同じ Argeville 社のものがこう並んでいる。
RHODINOL EX-CITRONNELLA(シトロネラ由来)
RHODINOL EX-GERANIUM(ゼラニウム由来)
そして occurrence 欄はまさに「シトロネラ油;ゼラニウム油」と書いている。
つまり手に入る rhodinol には2つの変わる軸がある。異性体比と、どちらの植物から来たかだ。
香調欄の15語には**「シトロネラ」と「ゼラニウム」が同時に入っている**——矛盾ではなく、2つの由来の痕跡が同じ欄に残っているのだ。
2人の記述者、今回は100倍違う
この記録の匂い記述欄も例の2人だ。
Luebke(1987):100.00% で。フローラル、レッドローズ、スパイシー、ワクシー、パウダリー、ゼラニウム。
Mosciano(2000):1.00% で。スイート、ロージーなフローラル、ワクシー/ファッティ、シトロネラール様。フレッシュなシトラス、マンダリン、レモン、ライムのニュアンスを伴う。
100% 対 1%——100倍だ。
〈その香調欄を書いたのは誰か〉を書いて以降に見た中で、2人の濃度差が最も大きい記録である。前者は原液を、後者は100分の1の溶液を嗅いでいる。
**それは2つの見解ではなく、2つのまったく違う実験だ。**そして香調欄は両者の語を15語の1つのリストに統合してしまうので、読む側にはどれがどちらから来たか分からない。
旋光度も幅だが、そこは重要でないかもしれない
optical_rotation 欄は −5.00 から −10.00。
これは幅であり、ロットごとに鏡像異性体組成が違うことを意味する。(S)-ロジノールはデータベースでは別記録(CAS 6812-78-8、15社)で、純度欄は同じく70から100だ。
問題は、人に嗅ぎ分けられるのか、である。
Laska と Teubner は1999年に《Chemical Senses》で直接的な試験をした。20人の被験者、強制選択の三点比較法、10対の鏡像異性体を繰り返し提示し、違う1本を当てさせる。
結果は4層ある。
- 集団としては、α-ピネン、カルボン、リモネンの3対しか有意に区別できなかった。
- メントール、フェンコン、ローズオキサイド、カンファー、α-テルピネオール、β-シトロネロール、2-ブタノールの (+) と (−) は区別できなかった。
- 個人差が大きい——10対中6対を有意に区別できた人もいれば、9対で失敗した人もいた。
- 10対のいずれにおいても、等濃度で提示された対掌体の主観的強度に有意差は報告されず、誤答率はセッション間で安定していて、学習や訓練の効果は観察されなかった。
β-シトロネロールは2番目——区別できなかった組にいる。
(この論文はローズオキサイドの記事で使った。あのとき関係していたのはローズオキサイドの対で、それも区別できなかった7対の1つだった。ここで関係するのは β-シトロネロールの対だ。同じ研究の別の行である。)
つまり、ロジノールの旋光度の幅は測定できる変異ではあるが、嗅ぎ分けられる変異ではないかもしれない。
(あの論文は α-テルピネオールも区別できない組に入れている。そして α-テルピネオールはちょうど等級が最も多い1本——5つの等級を持つ。測れる差と嗅げる差は別だ、というのはこのデータベースで繰り返し出てくる。)
**過剰に一般化しないよう注意が要る。**あの論文が測ったのは純粋な鏡像異性体どうしの比較であって、旋光度の違う商業サンプルの比較ではない。旋光度が変わるとき、異性体比と植物由来も同時に変わっており、その2つをあの論文は扱っていない。
毒性欄にマーケティング文が混入している
この記録には記しておく価値のあるデータ品質の問題がある。toxicity_oral 欄の内容はこうだ。
「経口ラット LD50 5540 mg/kg このシトロネラ由来の天然ロジノール抽出物は、明るく、花びらのようにフレッシュで、見事にバランスの取れた丸みのあるローズの香りを持ち⋯⋯」
毒性データの直後にサプライヤーのマーケティング文が続いている。
これは欄の汚染で、珍しいことではない。この連載で既にいくつか記録している——Veramoss の備考欄が「自然界に存在しない」と書いている(誤り)、アンブレインの備考欄がマッコウクジラを「sperm blue whale」と書いている。
どの欄を引用するときも、そのセルを最後まで読む。
使い方
- **ローズ調の骨格材料の1つで、残香236時間。**香調欄のレッドローズ、ゼラニウム、ワクシーが主線だ。
- 買うときは3つ訊く:純度(70から100のどこか)、異性体比、由来がシトロネラかゼラニウムか。
- **サプライヤーを替えたら評価し直す。**この1本は変異の軸が多くの材料より多い。
- **旋光度に金を払わない。**Laska らは人が β-シトロネロールの2つの対掌体を区別できないと報告している——ロジノールの場合と完全に同じではないが。
- **シトロネロールの同義語ではない。**重なりはあるが別だ。精確さが要るならシトロネロールを買う。
この記事が立証していないこと
- 嗅いだことはないし、ex-citronella と ex-geranium の商品を比較してもいない。
- 「6位と7位の異性体」という化学的身元は
head_synonym欄から読んだもので、CAS 141-25-3 の公式定義がどこまで覆うかは調べていない。 - Laska らが測ったのは純粋な対掌体どうしの比較で、商業サンプルではない。それを「旋光度の幅は重要でない」に外挿したのは私の推論で、本文中に限界を明記した。
- あの論文の被験者は20人で、しかも個人差が大きい——それ自体があの論文の発見の1つだ。
- 2人の記述者は濃度が100倍違うので、あの2文は比較できない。香調欄は両者の語を統合している。
- **旋光度の幅と異性体比、植物由来の関係についてのデータは持っていない。**3つは相関しているかもしれないし、独立かもしれない。
- **毒性欄へのマーケティング文の混入は、この1件でしか確認していない。**全庫に何件あるかは数えていない。