原料図鑑 · 163
原料図鑑:メープルフラノン —— 0.01%以下で嗅ぐよう勧めながら、強度ランク欄が空だ
· 10 分
CAS 698-10-2、サプライヤー67社、C7H10O3。強度欄には「非常に高い」とあり、0.01%以下の溶液での評価を勧めている。全庫でここまでの希釈を求める材料は9件しかなく、その中でサプライヤーが最も多いのがこれだ。しかし strength_rank 欄は空である。調べると理由がわかった。あの欄は3段階しかなく、形容詞は4段階ある。low はランク1、medium はランク2、high はランク3に例外なく対応するが、「非常に高い」の12件はすべて数字のランクを持たない。このデータベースで最も強い12の材料が、強度ランクの欄には存在しないのだ。ほかに3つ問題がある。沸点欄が0.50 mmHgで2つの値(102–103と83–86)を書いており、どちらにも推定の注記が付いていない。融点範囲31から35 °Cが、同じ分子式で異なるCASの shoyu furanone とまったく同じ。そして両者の蒸気圧は353倍違う。
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要点だけ
- 名称:maple furanone、系統名 5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン(abhexon)、CAS 698-10-2
- C7H10O3、分子量142.15、サプライヤー67社。FEMA 3153、法規4項目すべて通過
- 香調型 caramellic。香調はメープル、甘い、フルーティ、カラメル、フェヌグリーク、黒糖、ナッティ、チコリ、プラリネ、バタースコッチ
- **強度欄は
very high、0.01%以下での評価を推奨。**全庫で9件しかない - そして
strength_rank欄は空だ - 沸点欄は0.50 mmHgで2つの値を持ち、融点は別の同分子式材料とまったく同じ
強度ランクは3段階、形容詞は4段階
odor_strength 欄にはこうある。
very high ,recommend smelling in a 0.01 % solution or less
そして strength_rank 欄は空だ。記入漏れかと思ったが、全庫を調べると系統的なものだった。
| 形容詞 | 件数 | 対応する数字ランク |
|---|---|---|
low |
7 | すべて ランク1 |
medium |
431 | すべて ランク2 |
high |
352 | すべて ランク3 |
very high |
12 | すべてランクなし |
前の3段階は例外なく一対一で対応し、4段階目には数字がない。
つまり、このデータベースで最も強い12の材料は、強度ランクの欄に存在しない。
これには結果がある。強度ランクと実際の使用量の関係を測ったとき、 ランク1は8.07%、ランク2は2.69%、ランク3は0.76%だった。 **あの分析は最初から最後まで、最も強い一群を含んでいなかった。**ランクがないからだ。
0.01%を勧めるのは9件だけ
全庫の推奨評価濃度の分布。
| 推奨濃度 | 件数 |
|---|---|
| 0.01% | 9 |
| 0.1% | 45 |
| 1% | 204 |
| 10% | 527 |
| 50% | 12 |
その9件はこうなっている。
| サプライヤー | 材料 | 香調型 |
|---|---|---|
| 99 | 2,3,5-trimethyl pyrazine | nutty |
| 67 | maple furanone | caramellic |
| 41 | caramel furanone | caramellic |
| 28 | (Z)-4-heptenal | green |
| 24 | propyl mercaptan | alliaceous |
| 16 | isopropyl mercaptan | alliaceous |
| 13 | ortho-cresol | phenolic |
| 9 | denatonium benzoate | — |
| 8 | meta-cresol | phenolic |
メルカプタン2本、クレゾール2本、フラノン2本、ピラジン1本、グリーンアルデヒド1本。 このデータベースで最も強烈な一群であり、メープルフラノンはその中で2番目に多く売られている。
(denatonium benzoate は変性用の苦味剤で、最も苦い物質であって最も香る物質ではない。
これがこの表にいるのは、強度ランクの判定基準が匂い以外のものと混ざっているからだ。)
沸点欄は解決できない
102.00 to 103.00 °C. @ 0.50 mm Hg | 83.00 to 86.00 °C. @ 0.50 mm Hg
同じ圧力、2つの値、20度違う。
前回この状況を走査した。208件がこうなっており、
9割は (est) の注記で解決できる。付いていないほうを残せばよい。
**しかしこの材料は両方に付いていない。**解けない6件の1つだ。
融点が別の材料とまったく同じ
mp 欄は 31.00から35.00 °C。
そして shoyu furanone(#36501、サプライヤー46社、CAS 27538-09-6)の融点欄も
31.00から35.00 °C。まったく同じだ。
両者は同じ分子式(C7H10O3)、同じ分子量(142.15)だが、別の化合物であり、CASが違う。 別々の2つの化合物が完全に同じ融点範囲を持つことはない。片方は写しである。
全庫を走査した。「同じ分子式+完全に同じ融点範囲」を共有しCASが異なる組は40組ある。
多くは同じものが二重登録されたもの(anethol と (E)-anethol、cinnamic acid と (E)-cinnamic acid)で、
それは問題ない。しかしいくつかは本当に別の化合物だ。この対のほかに、
myrcene と gamma-terpinene がどちらも−10 °Cと書かれている。
そして蒸気圧が353倍違う
| maple furanone | shoyu furanone | |
|---|---|---|
| CAS | 698-10-2 | 27538-09-6 |
| 分子式/分子量 | C7H10O3/142.15 | C7H10O3/142.15 |
| 融点 | 31–35 °C | 31–35 °C |
| 蒸気圧 @25 °C | 0.000034 | 0.012 |
| 残香 | 400時間 @1% | 168時間 |
| 強度 | very high(ランクなし) |
high(ランク3) |
| サプライヤー | 67 | 46 |
どちらの蒸気圧にも (est) が付いており、353倍違う。
2つの推定値が一致していても証拠にならないと書いたばかりだが、 ここはその裏面だ。2つの推定値が353倍違うということは、少なくとも一方が推定式の適用範囲の外にある。
ついでに、logPの2欄は同じ欄だ
この材料を調べていてもう1つ気づいた。logp が 0.90 (est)、xlogp3 も 0.90 (est)。
全庫を走査した。両欄に値がある18,450件のうち18,402件(99.7%)で数字が完全に一致しており、 差の中央値は0.00である。
それは2つの独立した推定ではなく、1つの欄を2つに複製したものだ。 ある材料のlogPとxlogp3が一致しているのを見て安心するなら、その安心は偽物である。
これは何なのか
系統名は5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、通称 abhexon。 ソトロン(フェヌグリークラクトン)のエチル同族体だ。
occurrence 欄はブラックベリー、ブルーベリー、コーヒー、ラズベリー、醤油。
notes 欄は1文だけで Prod. in protein hydrolysates(タンパク質加水分解物中で生成)。
「醤油」と「タンパク質加水分解物」は同じことの2通りの言い方だ。 この種のフラノンはメイラード反応とタンパク質の分解過程で生じるので、 醤油にもコーヒーにもメープルシロップにも同時に現れる。
2012年に Collin らが J Agric Food Chem でジュラ産のフロールシェリーワインの主要な匂い物質を分析しており、 ソトロンとabhexonの相対的寄与がまさにその主題である(PMID 22117650)。 2024年にはRIFMがCAS 698-10-2の完全な香料成分安全評価を出している(PMID 38016534)。
コーパスでは0回
954件の処方で maple furanone は 0回。
同族の strawberry furanone は4回、furaneol は5回現れる。
**それは筋が通る。**これは食品香料の材料であり(FEMA 3153)、このコーパスは香水の処方だ。 メープルとフェヌグリークは香水が向かう方向ではない。
この記事が示していないこと
- 「
very highに数字ランクがない」は全庫の突き合わせの結果であって、データベースの説明ではない。 あの12件がまだ埋められていないだけの可能性もある。 - **どちらの融点が正しいかは調べていない。**別の2化合物が1つの範囲を共有すべきでないと言えるだけだ。
- **蒸気圧が353倍違うことについて、どちらが正しいかは判断していない。**どちらも推定値である。
- 「
logpとxlogp3は同じ欄」は99.7%一致から推したもので、それらを生成したプログラムは見ていない。 - denatonium benzoate があの表にいる理由の説明は私の推測だ。
- 沸点の2つの値は解決していない。前回挙げた6件の未解決案件の1つである。