原料図鑑 · 162
原料図鑑:2-メチルウンデカナール(アルデヒドC-12 MNA)—— 1つの誤った沸点が蒸気圧まで引きずった
· 9 分
CAS 110-41-8、サプライヤー40社、C12H24O。沸点欄が同じ圧力で2つの値を書いている。171 °Cと233 °Cで、62 °C違う。同族列が裁定できる。炭素が1つ少ない2-メチルデカナールは170 °Cと登録されており、炭素を1つ足して沸点が1度しか上がらないことはない。直鎖のウンデカナールは223 °Cなので、分岐した炭素12のアルデヒドは233付近に落ちるのが筋だ。面白いのはこの誤りが沸点欄で止まっていないことだ。蒸気圧は1.428 mmHgと登録され est が付いている。以前8,048件で当てはめた関係式に171 °Cを入れると1.94、233 °Cを入れると0.039が出る。そして同じ分子式のドデカナールの登録値はまさに0.034である。あの推定された蒸気圧は、誤ったほうの沸点から計算されたように見える。コーパスでは5通りの表記を統合して67件、使用量の中央値は1.00%。香調欄は10語あり、メタリックとガス様を含む。
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要点だけ
- 名称:2-methyl undecanal、商業コード aldehyde C-12 MNA、CAS 110-41-8、サプライヤー40社
- C12H24O、分子量184.32。香調型 aldehydic
- 香調:フレッシュ、アンバー、アルデヒディック、モッシー、シトラス、チューベローズ、メタリック、ワクシー、クマリン様、ガス様
- 強度高(ランク3)、1%以下での評価を推奨。残香388時間
- 沸点欄が同じ圧力で171 °Cと233 °Cを書いている
- そして蒸気圧は誤ったほうの沸点から推定されたように見える
- コーパスでは5通りの表記を統合して 67件、使用量の中央値 1.00%
62度の開き
bp 欄。
171.00 °C. @ 760.00 mm Hg | 233.00 °C. @ 760.00 mm Hg
同じ圧力、2つの値、62度違う。
全庫を走査したばかりだが、208件がこの状態にあり、
9割は (est) の注記で解決できる。付いていないほうを残せばよい。
**しかしこの材料は両方に付いていない。**解決できない20件の1つだ。
同族列が裁定できる
アルデヒドの沸点は炭素数とともに規則的に上がり、1炭素あたりおよそ20度だ。この材料を同族列に置く。
| 材料 | 炭素数 | 構造 | 沸点 @760 | 蒸気圧 |
|---|---|---|---|---|
| decanal(アルデヒドC-10) | 10 | 直鎖 | 207–209 | 0.207 |
| undecanal(C-11 undecylic) | 11 | 直鎖 | 223 | 0.083 |
| 2-methyl decanal(C-11 MOA) | 11 | 分岐 | 170 | 0.102 |
| 2-methyl undecanal(C-12 MNA) | 12 | 分岐 | 171 か 233 | 1.428 |
| dodecanal(C-12 lauric) | 12 | 直鎖 | (185 @100 mmHg) | 0.034 |
要点は3行目だ。炭素が1つ少ない2-メチルデカナールが170 °Cと登録されている。
この材料が171なら、炭素を1つ足して沸点が1度しか上がらないことになる。同族列はそう動かない。
直鎖のウンデカナールは223 °C。分岐は沸点を10度あまり下げるが、この材料はウンデカナールより炭素が1つ多い。 2つの効果を合わせれば233が妥当な着地点になる。
つまり233が正しく、171が余計だ。
(ついでに。2-メチルデカナールの170 °C自体も疑わしい。 直鎖のウンデカナールが223なら、分岐した炭素11のアルデヒドが170まで落ちるのはおかしい。 あの2つの数字は同じ誤った出どころから来ているかもしれないが、そこまでは追っていない。)
そしてその誤りは沸点欄で止まらなかった
この材料の蒸気圧は 1.428 mmHg と登録され、(est) が付いている。推定値だ。
沸点 ≈ 181.5 − 36.5 × log10(蒸気圧)
逆に2つの候補沸点を入れる。
| 入れた沸点 | 関係式が返す蒸気圧 |
|---|---|
| 171 °C | 1.94 mmHg |
| 233 °C | 0.039 mmHg |
**データベースの登録値は1.428。**171のほうに近い。
そして同じ分子式の直鎖異性体 dodecanal の登録蒸気圧は0.034で、 233 °Cが予測する0.039にほぼ一致する。
あの推定された蒸気圧は、誤ったほうの沸点から計算されたように見える。
1つの誤りが2つめの誤りを生み、両者が互いに整合している。 このデータベースで見た最も完全な誤りの伝播だ。
(#112でこの材料の蒸気圧がドデカナールと42倍違うことには気づいていたが、 そのときは異常として記録しただけだった。どこから来たのかが分かったのは今回である。)
あの388時間も連動して合わない
odor_substantivity は 388時間 @100% と書いている。
蒸気圧と残香の関係は算出した。 蒸気圧が1桁下がると残香は約5.85倍になる。 蒸気圧が本当に1.428なら、この材料はd-リモネン(1.55で4時間)と 同じ階級にあるはずで、388時間にはならない。
**修正後の0.039で計算すれば合う。**同じ分子式のドデカナール(0.034)は368時間と登録されており、 この材料の388とほぼ同じだ。
**残香の欄は正しく、蒸気圧の欄が誤っている。**そして蒸気圧から推論すれば正反対の結論になる。
どんな匂いか
香調欄は10語ある。
フレッシュ、アンバー、アルデヒディック、モッシー、シトラス、チューベローズ、メタリック、ワクシー、クマリン様、ガス様
評価欄の記述はもっと直接的だ。
ガス様、拡散性が強く、メタリック、ワクシー。クマリンとシトラスのニュアンスを伴う。
**「メタリック」と「ガス様」は脂肪族アルデヒドの看板だ。**この種の材料は低濃度で「明るく、勢いがある」と読めるが、 入れすぎると火のつかないガスコンロになる。だから推奨評価濃度が 1%以下、強度ランク3なのだ。
そしてこれは分岐している。2番炭素にメチル基が1つ付く。そのメチル基が直鎖アルデヒドのワクシーさを抑え、 より明るく「清潔な」効果に置き換える。同族の直鎖ドデカナール(C-12 lauric)の香調欄はファッティ、 シトラス、ワクシーで、メタリックもガス様もない。
自然界にはほとんどない
occurrence 欄は2件しかない。
キンカン油;ヘンルーダ
**2つの産出源、どちらも含量の記載なし。**同族のドデカナールの産出リストはずっと長い。
notes 欄は1文だけで Used as a food additive [EAFUS]、
法規欄はJECFA、FEMA GRAS、CoE、FLAVISの4項目すべてを通り、FEMA 2749。
使用量と保管
コーパスには5通りの表記があり(aldehyde c-12 mna 60回、aldehyde mna 6回など)、
統合すると 67件の処方になる。
| 使用量 | |
|---|---|
| 中央値 | 1.00% |
| 四分位 | 0.50% – 2.50% |
| 最高 | 15.0% |
強度ランク3の全体中央値は0.76%なので、やや高い。
保存期間は 12か月しかなく、窒素下での保管が要る。 すべてのアルデヒドと同じく、空気中でカルボン酸に酸化されるからだ。
この記事が示していないこと
- 沸点も蒸気圧も測っていない。「233が正しい」は同族列からの推論であり、 「蒸気圧が誤った沸点から計算された」はデータベースの値を私自身が当てはめた関係式に入れた結果だ。
- **その関係式の残差の標準偏差は34 °Cある。**171と233を区別することはできるが、正確な値は与えない。
- 2-メチルデカナールの170 °Cは疑わしいと記しただけで、追っていない。
- 「1つの誤りが2つめを生んだ」は最も単純な説明であって、唯一の説明ではない。 2つの欄がそれぞれ別の誤った出どころから写された可能性もある。
- RIFMの評価はその二メチルアセタール(CAS 68141-17-3)についてのもので、この材料自身ではない。 110-41-8に対する評価は見つけられなかった。
- 香調の解釈(メチル基がワクシーさを抑える)は一般論であって、この2記録の実測比較ではない。