原料図鑑 · 161
原料図鑑:ジペンテン —— 旋光度欄が空で、それが正しい
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CAS 138-86-3、サプライヤー37社、C10H16。ラセミ体のリモネンであり、データベースの旋光度欄は空だ。それは記入漏れではなく正しい。2つの鏡像分子が等量混じれば偏光は動かない。対照は2つの単一対掌体で、d-リモネンは+87から+102、l-リモネンは−118から−108。しかし同じ3件の記録の蒸気圧が合わない。ジペンテンは1.550 mmHg、l体は1.541、d体だけが0.198で7.8倍違う。対掌体の蒸気圧は定義上同じで、ラセミ体もほぼ同じなので、あの0.198が異常なほうだ。そして私は#109でそれを使っていた。d-リモネンの0.198を2-アセチルピラジンの0.188と並べ、揮発度が近いのに残香が100倍違うと書いた。あの対照はもう成り立たない。さらに備考欄には掃除されずに残った ==(R)== という記法があり、全庫でこれを持つのは2件だけ、もう1件はリナロールである。
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要点だけ
- 名称:dipentene、
head_synonymはそのまま limonene、CAS 138-86-3、サプライヤー37社 - C10H16、分子量136.24。香調型 citrus。香調はシトラス、ハーバル、テルペン、カンファー様
- **旋光度欄は空で、それが正しい。**ラセミ体だからだ
- 残香 3時間、私が見たなかで最も短い部類。保存は窒素下
- コーパスでは 9件、使用量の中央値 2.09%
- しかし3件のリモネン記録の蒸気圧が合わない。1.550/1.541/0.198
- 備考欄に掃除されずに残った
==(R)==があり、全庫でこれを持つのは2件だけ
空欄が正しいこともある
ここ数十回、空の欄と壊れた欄を追ってきた。この材料はその逆だ。 旋光度欄が空で、それこそがあるべき姿である。
ジペンテンはラセミ体のリモネン、右旋と左旋が等量混じったものだ。 2つの鏡像分子が偏光を逆向きに同じだけ回すので、**合わせるとゼロになる。**書ける数字がない。
2つの単一対掌体と並べる。
| CAS | サプライヤー | 旋光度 | 香調 | |
|---|---|---|---|---|
| dipentene(ラセミ) | 138-86-3 | 37 | (空) | シトラス、ハーバル、テルペン、カンファー |
| dextro-limonene | 58555-74-1 | 82 | +87 ~ +102 | シトラス、オレンジ、フレッシュ、甘い、ピール |
| laevo-limonene | 5989-54-8 | 46 | −118 ~ −108 | テルペン、パイン、ハーバル、ペッパー |
前回旋光度を書いたとき、 旋光度を持つ359件のうち24%が範囲でゼロをまたぎ、その多くは実際には旋光しないものだと述べた。 ジペンテンはさらに徹底している。範囲すらない。
香調欄も分かれる。右旋は「オレンジ」、左旋は「パイン、ペッパー」、ラセミ体はその中間でカンファー感を帯びる。 同じ分子式で3通りの嗅ぎ方がある。
蒸気圧の欄が3件で合わない
| 蒸気圧 @25 °C | 残香 | |
|---|---|---|
| dipentene | 1.550 | 3 h |
| laevo-limonene | 1.541 | 4 h |
| dextro-limonene | 0.198 | 4 h |
**対掌体の蒸気圧は定義上まったく同じだ。**鏡像分子どうしは分子間力が等しく、沸点も蒸気圧も等しい。 ラセミ体はわずかに違いうる(結晶格子が違う)が、液体状態で1桁も違うことはない。
**1.550と1.541はほぼ同じで、0.198は7.8倍違う。**あの1件が異常だ。
そしてリモネンの沸点は176 °Cで、このデータベースで蒸気圧1.5前後の材料と同じ階級にある。 0.198はそれ自身の沸点と噛み合わない。
そして私はその誤った数字を使っていた
これははっきり書いておかなければならない。
#109で残香欄を書いたとき、d-リモネンを対照に使った。
2-アセチルピラジンの蒸気圧0.188はd-リモネンの0.198とほぼ同じで、 一方は400時間、もう一方は4時間と書かれている。
あの対照は0.198の上に立っており、その0.198が誤りに見える。 リモネンの真値が1.55なら2-アセチルピラジンより8倍揮発しやすく、 「揮発度が近いのに残香が100倍違う」という言い方はずっと弱くなる。
あの記事の主要な結論(400時間はバケットのラベル、どのバケットも広い、きれいなのはバケット中央値)は この例に依存していないが、あの例そのものは撤回する。
備考欄に記法が残っている
notes 欄にこんな一節がある。
300を超える精油で見つかり、
==(R)==型が最も広く分布し、次いでラセミ体、その次に (S) 型。
==(R)== の等号は組版記法の残留だ。どこかの出典が == で強調か上付きを表しており、取得時に除去されなかった。
全庫を走査した。備考欄にこの残留を持つ材料は2件だけで、
もう1件は linalool(サプライヤー135社)。
そちらは「2つの立体異性体:licareol は ==(R)==-…-リナロール」と書かれており、
同じ文に文字化けも1つ混じっている。
どちらもリモネンやリナロールのように「2つの対掌体を説明する必要がある」材料だ。 あの説明文はおそらく同じ出典から来ており、その出典の記法が除去されていない。
3時間と窒素保管
| 欄 | 値 |
|---|---|
| 残香 | 3時間 @100% |
| 蒸気圧 | 1.550 mmHg |
| 保管 | 冷暗所、密閉、遮光、窒素下で保管 |
| 保存期間 | 24か月 |
**3時間はこのデータベースで見た最も短い残香の1つだ。**純粋なテルペンで、 含酸素の官能基がなく、引き留めるものがない。 フォールド柑橘油がこれを抜く理由でもある。
そして「窒素下で保管」の理由は論文にある。リモネンは酸化すると感作性を持つ。 1997年に Karlberg と Dooms-Goossens が Contact Dermatitis で皮膚炎患者の 酸化したd-リモネンへの接触アレルギーを報告し(PMID 9165203)、 2016年には Bråred Christensson らが酸化リモネンと酸化リナロールの共感作を比較している(PMID 26918793)。
**新鮮なリモネンが主要な感作物質なのではなく、置いたものがそうなる。**それがあの窒素の意味だ。
コーパスでは右旋に及ばない
| 件数 | 使用量の中央値 | 四分位 | |
|---|---|---|---|
| dipentene | 9 | 2.09% | 2.00–5.00% |
| d-リモネン(表記統合) | 35 | 18.75% | 4.28–35.00% |
**右旋の使用量は9倍だ。**筋が通る。右旋はシトラス香調のボリューム材で (使用量分布を測ったときは2位、中央値15%)、 ジペンテンのカンファー感は大量投入に向かない。
ジペンテンの共起上位は benzyl acetate、citral、hedione、linalool、 それにアルデヒドC番号の材料が3本。
この記事が示していないこと
- どの材料の蒸気圧も測っていない。「0.198が異常」は同一物質の3件を突き合わせた結果に、 それ自身の沸点と噛み合わないことを加えた判断だ。文献値は調べていない。
- #109のあの例を撤回してもあの記事の結論は変わらないが、あの記事の他の数字を再計算はしていない。
- 「ラセミ体の旋光度はゼロ」は化学の定義であって、このデータベースが述べていることではない。データベースは空白にしただけだ。
==(R)==の元の出典は見つけていない。「記法の残留」は私の読み取りだ。- 9件の処方から堅牢な使用量中央値は出ない。
- 酸化リモネンの感作は論文のタイトルと主題を引いたもので、用量も発生率の数値も引用していない。