原料図鑑 · 160
原料図鑑:7-メチルクマリン —— 備考欄は None found、問題があるのは異性体のほうだ
· 9 分
CAS 2445-83-2、サプライヤー7社、C10H8O2。カテゴリ欄は「参考のみ、香料・香精には使用しない」、化粧品用途欄は not used anymore、そして備考欄は None found。使うなと言いながら、理由を言わない。異性体の6-メチルクマリンのほうは述べている。備考欄に「接触光アレルギーを起こす合成香料」とあり、そちらはサプライヤー35社、4つの法規登録、今も使われている。この材料にはさらに2つの欄が食い違っている。常圧沸点が128 °Cで、融点欄の128から130 °Cと同じ数字であり、外観欄は淡白色の粉末と書いている。全庫で沸点欄と融点欄が完全に一致するのは11件しかなく、そのなかで沸点欄が壊れているのはこれだけだ。強度欄は low だが1%以下での評価を勧めている。全庫の強度ランク1は253件あり、そう書いているのはこれ1件で、ランク1の推奨濃度の中央値は10%である。
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要点だけ
- 名称:7-methyl coumarin、CAS 2445-83-2、C10H8O2、分子量160.17、サプライヤー7社
- 香調型 tonka。香調は甘い、クマリン様、トンカ、ココナッツ、パウダリー
- カテゴリ欄:
information only not used for fragrances or flavors - 化粧品用途欄:
not used anymore - 備考欄:
None found。使うなと言い、理由を言わない - 常圧沸点128 °Cが融点128–130 °Cと同じ数字であり、外観欄は粉末と書いている
- **強度ランク1(弱)なのに1%以下での評価を勧めている。**253件のランク1でこれ1件だけ
問題があるのは隣の1本だ
6,457件の「参考のみ」を走査したばかりで、 かつて香料だったのは87件しかなく、86%が退場の理由を述べていないとわかった。この材料はその75件の1つだ。
そして位置異性体のほうは述べている。
| 6-methyl coumarin | 7-methyl coumarin | |
|---|---|---|
| CAS | 92-48-8 | 2445-83-2 |
| 分子式 | C10H8O2 | C10H8O2 |
| サプライヤー | 35 | 7 |
| カテゴリ | flavoring agents |
information only not used |
| 法規 | JECFA、FEMA GRAS、CoE、FLAVIS | (空) |
| 備考 | 「接触光アレルギーを起こす合成香料」 | None found |
1978年に Kaidbey と Kligman が Contact Dermatitis で報告したのは6-メチルクマリンの光接触アレルギーだ(PMID 743874)。 1992年に DeLeo らがニューヨークの1985年から1990年の光パッチテスト結果をまとめたとき、 6-メチルクマリンもその名簿に載っている(PMID 1444508)。
あれは日焼け止め製品の歴史であって、この材料と直接の関係はない。
そして6-メチルのこのデータベースでのカテゴリは flavoring agents であり、fragrance agents ではない。
それはおそらく「化粧品からは離れたが食品用の身分は残っている」ことの記録だ。
7-メチルがなぜ外されたのか、ここに答えはない。
沸点欄が壊れている
bp と mp の2欄。
bp: 171.00 to 172.00 °C. @ 11.00 mm Hg | 128.00 °C. @ 760.00 mm Hg
mp: 128.00 to 130.00 °C. @ 760.00 mm Hg
常圧沸点の128 °Cが融点の下限と同じ数字だ。
全庫を走査したところ、2,676件がこの2欄を両方持ち、
値が完全に一致するのは11件だけだった。どちらの欄が壊れているかは appearance 欄で決まる。
pale white powder (est)(淡白色の粉末)
粉末は室温で固体なので、128–130 °Cは本物の融点だ。壊れているのは沸点欄である。
11件のうち7件は液体と書かれており(融点欄が壊れている)、 粉末なのはこれ1件だけ。沸点欄が壊れている唯一の例だ。
2つめの証拠もある。同じ欄のもう1つの値は171–172 °C @ 11 mmHg。 128 °Cで融ける固体が、11 mmHgで171 °Cで沸騰し、常圧で128 °Cで沸騰することはありえない。
(対照。クマリン本体は mp 68–74、bp 297–301。6-メチルは mp 73–79、bp 303。 どちらも沸点は300 °C前後で、この128が沸点でないことは明らかだ。)
強度ランクと評価の推奨が食い違う
odor_strength 欄にはこうある。
low ,recommend smelling in a 1.00 % solution or less
強度は低いが、1%以下に薄めて嗅げという。
全庫の強度ランクと推奨濃度を突き合わせた。
| 強度ランク | 推奨濃度のある件数 | 中央値 |
|---|---|---|
| 1(弱) | 7 | 10.00% |
| 2(中) | 431 | 10.00% |
| 3(強) | 352 | 1.00% |
**1%以下の推奨は強度ランク3のやり方だ。**そして全庫253件のランク1のうち、 1%以下を勧めているのはこれ1件だけである。
どちらを信じるか。評価濃度と実際の使用量の関係は測った。 評価濃度の予測力(ρ = 0.679)は強度ランク(ρ = −0.592)より高い。 評価濃度のほうが信用できる欄なので、疑うべきはあの「ランク1」だ。
(ついでに。異性体の6-メチルはランク2で、推奨も1%。 2本の推奨は一致しており、一致しないのはランクのほうだ。)
あの400時間は後ろを見ること
odor_substantivity 欄にはこうある。
400 hour(s) at 20.00 % in dipropylene glycol
20%のジプロピレングリコール溶液で測られているのであって、純品ではない。
400時間がデータベースのバケットのラベルであることは書いた。 全残香値の16.5%を占め、「とても長い」を意味するのであって「400」ではない。 そして濃度の印が2つの数字を比べてよいかを決める。 この1欄に問題が2つ同時にある。
溶解度欄に薬理が紛れ込んでいる
solubility 欄は本来溶剤を並べる欄だが、この材料の欄にはこんな一文が挟まっている。
7-methylcoumarin is a coumarin with strong hepatoprotective activity. (7-メチルクマリンは強い肝保護作用を持つクマリンである。)
**それは薬理の記述であって溶解度ではない。**どこかの供給元のカタログ文から一緒に取り込まれている。
この種の欄の汚染は何度か集めてきた。
最も多いのは notes 欄に貼り違えられたTSCA定義だ。今回は溶解度欄である。
どんな匂いか
欄の問題を離れれば、香調欄は読める。
甘い、クマリン様、トンカ、ココナッツ、パウダリー
クマリン本体(甘い、干し草、トンカ、刈りたての干し草)と比べると、 **ココナッツとパウダリーが増え、干し草が減っている。**6-メチルの香調欄は10語あり、 その先頭がココナッツだ。
3本のクマリンは1本の線上に並ぶ。本体は干し草寄り、6-メチルはココナッツ寄り、7-メチルはその中間。
この記事が示していないこと
- **7-メチルクマリンのいかなる法域での現状も調べていない。**全体はデータベースの欄の比較である。
- **2本の論文はどちらも6-メチルについてのものだ。**引いたのは「記録された問題は隣の1本にある」ことを示すためで、 この材料に同じ問題があると示唆するためではない。
- 「壊れているのは沸点欄」という判断は
appearance欄に依存しているが、その欄には(est)が付いている。 - 「疑うべきはランクであって推奨濃度ではない」は私が算出した相関係数に基づく統計的な選好であって、外部の権威ではない。
assay欄は97.00 to 100.00で、全庫の既定テンプレート値 (あれは95.00 to 100.00)ではないが、手元のロットが何%かを教えるものでもない。- **7社が何を売っているかは知らない。**溶解度欄に挙がっているのは98%の分析用グレードで、 調香用途というより研究用途に見える。