はじめての調香 · 68
ある材料がもう引退しているとどう分かるか——データベースには2つの欄がそれを言っていて、重なるのは18件だけ
· 7 分
マイナーな材料を調べるとき、まだ使えるのかを知りたくなる。このデータベースには答える場所が2つある。category 欄に「参考情報のみ、香料・香精には使用しない」と書ける。cosmetic_uses 欄に「もう使われていない」と書ける。前者は6,457件(全庫の15.3%)、後者はわずか80件。そして両方が立つのは18件だけだ。さらに厄介なのは、その80件のうち62件は category が今も香料か香精のままだということ。ジヒドロクマリンはサプライヤー55社、アリルイソチオシアネートは53社、コスタスルート油は21社。全部この相反する2つの表示を同時に掛けている。
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聞いたことのない材料を調べるとき、最初に知りたいのはたいてい匂いではなく、それが今でも使えるのかだ。
このデータベースにはそれに答える欄が2つある。答えはしばしば食い違う。
2つの引退表示
1つめは category 欄で、値は「参考情報のみ、香料・香精には使用しない(information only not used for fragrances or flavors)」。
全庫 42,225 件のうち、6,457 件がこの分類——15.3%、6件に1件だ。
2つめは cosmetic_uses 欄で、値は「もう使われていない(not used anymore)」。
こちらは 80 件しかない。
両方が立つのは 18 件。
category = 参考情報のみ 6,457 件
cosmetic_uses = もう使われていない 80 件
両方 18 件
**片方は6分の1、片方は1万分の2。**明らかに別のことを言っている。
1つめの欄は引退の話をしていない
6,457 件には香料ではないものが大量に入っている。サプライヤーが10社以上のものだけ引くと18本ある。
| 材料 | サプライヤー | これは何か |
|---|---|---|
| ヨウ素 | 21社 | 元素 |
| ムスクキシロール | 20社 | ニトロムスク |
| ゲラニルニトリル | 20社 | シトラス香料 |
| ムスクアンブレット | 18社 | ニトロムスク |
| シクラミン酸ナトリウム | 15社 | 甘味料 |
| 乳糖 | 13社 | 糖 |
| ブロムスチロール | 13社 | グリーン香料 |
| フェリシアン化カリウム | 12社 | 試薬 |
| 炭酸バリウム | 10社 | 試薬 |
**この欄に入っているのは「このデータベースは収録しているが、香料・香精の範囲ではない」という意味だ。**ヨウ素も乳糖も炭酸バリウムも最初から香料ではない。引退ではなく、入隊していない。
その中に混ざっているのが本当に引退したもの——ムスクキシロール、ムスクアンブレット、ゲラニルニトリル、ブロムスチロールだ。
だからこの欄を引退の指標には使えない。立っているのを見たらまず問う。これはそもそも香料だったのか。
2つめの欄は引退の話だが、category と喧嘩している
その80件の「もう使われていない」のうち、
- 72件はまだサプライヤーがいる
- 62件は
categoryが今も香料か香精のまま
つまり同じ記録の2つの欄が矛盾している。片方はもう使われていないと言い、もう片方はそれを香料か香精に分類している。
サプライヤー5社以上のもの。
| 材料 | サプライヤー | category は今も |
|---|---|---|
| ジヒドロクマリン | 55社 | 香精と香料 |
| アリルイソチオシアネート | 53社 | 香精 |
| マソイアラクトン | 32社 | 香精 |
| (E)-2-ヘプテナール | 31社 | 香精 |
| フルフリルアルコール | 31社 | 香精 |
| フェノール | 28社 | 食品接触材料 |
| ジメチルスルホキシド | 24社 | 多目的添加物 |
| コスタスルート油 | 21社 | 香精 |
| ムスクアンブレット | 18社 | 参考情報のみ |
ジヒドロクマリンはサプライヤー55社を持ちながら「もう使われていない」と表示されている。
これは必ずしも誤りではない。2つは同時に真でありうる——ある管轄区やある用途で禁じられ、別の場所では売られている。コスタスルート油がまさにそれで、感作性を理由に制限されているが、買える精油ではある。
ただしそれは、この欄が答えているのが「使えるか」ではなく「あるリストに載っているか」であり、しかもどのリストかを言っていない、ということだ。
2つの表示がずれている実例
当サイトで書いた2本のニトロムスクを並べる。
| ムスクキシロール | ムスクアンブレット | |
|---|---|---|
| CAS | 81-15-2 | 83-66-9 |
| category | 参考情報のみ | 参考情報のみ |
| cosmetic_uses | 香料;賦香剤 | もう使われていない |
| サプライヤー | 20社 | 18社 |
| 香調タイプ | musk | musk |
同じく引退した2本の材料で、片方の cosmetic_uses は「もう使われていない」、もう片方は「香料;賦香剤」だ。
そしてムスクキシロールは、全庫 42,225 件のうち**「category=参考情報のみ」かつ「cosmetic_uses に fragrance を含む」を同時に満たす2件のうちの1件**である。もう1件はシクラミン酸ナトリウム、人工甘味料だ。
(ムスクキシロールそのものの記録は〈原料図鑑:ムスクキシロール〉に書いた。)
では何を見ればいいのか
上の2つの欄はどちらも規制の出典ではない。このデータベースの整理欄であり、しかも整理が一貫していない。実際に使えるかを確認する順序はこうなる。
- **IFRA スタンダード。**香水業界自身の規範で、禁止か制限か、どの製品カテゴリーに適用されるかを明記している。制限量の計算は〈シトラール〉で分解した。
- **自分の地域の化粧品規制。**EU の CosIng と附属書 II、日本の化粧品基準、地域ごとに違う。同じ材料でも場所によって答えが変わりうる。
- **サプライヤー自身の SDS と規格書。**売る以上、用途の制限は説明されるべきだ。
- **この2つの欄——ヒントとして使い、結論としては使わない。**どちらかが立っていたら上の3つを調べる。
**サプライヤー数は指標にまったくならない。**ジヒドロクマリン55社、ムスクキシロール20社、どちらも売られている。買えることと使えることは別で、これは〈何件の処方に出るかで買うかを決める〉でも踏んだ。
この記事が立証していないこと
- **これはこのデータベースの欄の監査であって、規制の確認ではない。**上の数字はすべて欄がどう記入されているかの話で、各地の法がどう定めているかの話ではない。
- **80件の「もう使われていない」が、どのリストで止められたのかを1件ずつ調べてはいない。**IFRA のものも、食品規制のものも、単に製造終了のものもあるだろう。
- **「62件の category が今も香料」は必ずしも誤りではない。**化粧品では停止され食用香料では使える、ということはありうる。2つの欄は別の用途を語っている。
- **6,457件のうち何本が本当に引退した香料で何本が最初から香料でないかは、サプライヤー10社以上の18本しか見ていない。**残り 6,439 件は分類していない。
- **欄が古い可能性がある。**これらの表示が最後に更新されたのがいつかは分からない。
- **データが無いことは安全を意味しない。**空欄の問題は〈引けないには4種類ある〉で数えた。