原料図鑑 · 106
原料図鑑:BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)—— みんなが入れろと言う酸化防止剤に、データベースは香調タイプを与えている
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CAS 128-37-0、供給元 52 社。分類欄は「香料とフレーバー用の酸化防止剤・保存料」で、香調タイプはフェノリック、香調欄はフェノリックとカンファー、強度は低いでランク 1。残香は 400 時間(ジプロピレングリコール 20%)で、この庫の上限値になる。去らないということだ。融点 70 から 73 °C の白色結晶で、液体ではない。水溶解度 0.6 mg/L、logP 5.30 なので、エタノールか油相で溶かす必要がある。唯一の GHS 表示は H410、長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性。そして天然での存在の欄には二項目ある。ニンニクの鱗茎と、中国産ヘンルーダ油の 0.05%。
**要点:**私が図鑑に書いた材料の中で、目的が香りではない唯一の一本になる。そしてその一本に香りがある。それを知っておく価値がある。
項目
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| CAS | 128-37-0 |
| EINECS | 204-881-4 |
| 同義語先頭 | BHT |
| 分子式 | C15H24O、分子量 220.355 |
| データベース分類 | 香料とフレーバー用の酸化防止剤・保存料 |
| 外観 | 無色の結晶(推定) |
| 純度 | 95.00 〜 100.00 |
| 融点 | 70〜73 °C |
| 沸点 | 265 °C @ 760 mmHg |
| 引火点 | > 93.33 °C |
| logP | 5.30(推定) |
| 水溶解度 | 0.6 mg/L @ 25 °C(実測) |
| 溶解性 | アルコール |
| 香調タイプ | フェノリック |
| 香調 | フェノリック、カンファー |
| 強度 | 低い(ランク 1) |
| 残香 | 400 時間(ジプロピレングリコール 20%) |
| 香りの記述 | 原液で:穏やかなフェノリック、カンファー |
| 天然での存在 | ニンニクの鱗茎;中国産ヘンルーダ油 @ 0.05% |
| 供給元 | 52 社 |
| 規制 | FEMA GRAS、FEMA 2184 |
| 化粧品用途 | 酸化防止剤;賦香剤 |
| 経口毒性 | ラット LD50 890 mg/kg |
| GHS | H410 長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性(これ一つだけ) |
| 備考 | 酸化防止の性質を持つジ tert-ブチルフェノール。化粧品、食品、医薬品に使われる |
香調タイプを持っている
このレコードで最も見落とされやすく、最も知っておくべき点になる。
フォーラムで BHT が話題になるとき、語られるのは機能だ。ところがデータベースはこれを他の香料材料と同じ項目に入れているので、香調タイプがあり、香調欄があり、強度があり、残香がある。
香調タイプ:フェノリック。香調:フェノリック、カンファー。
強度欄は「低い」でランク 1、サリチル酸フェネチルや安息香酸ベンジルと同じ段になる。だから何かを押しのけることはない。
しかし残香欄は 400 時間(ジプロピレングリコール 20%)で、この庫の上限値になる。
**強度が低く、しかも去らない。**つまりベースに蓄積する。フォーラムには、すべての材料とすべてのアルコールに 0.1% 入れていると書いた人がいた。その代償は一回の匂いではなく、すべての処方の土台にフェノリックの層が一枚増えることになる。
(0.1% で実際に感じ取れるかは測っていない。データベースの香りの記述欄は原液での記述になる。)
固体である
融点 70〜73 °C、無色の結晶。
使うには先に溶液を作る必要があり、水溶解度は 0.6 mg/L(実測)、logP は 5.30 でかなり親油的になる。溶解性の欄にはアルコールしか挙がっていない。
実務上は、エタノールで母液を作ること。処方に直接振り込もうとしないこと。
それ自体がフェノールになる
BHT の正式名は 2,6-ジ tert-ブチル-4-メチルフェノール。立体障害を持つフェノールであり、酸化防止の機構はそのフェノール性水酸基にある。ラジカルを受け取って比較的安定なフェノキシラジカルになり、そこで連鎖反応が止まる。
(これが香調タイプがフェノリックである理由でもある。機能と匂いが同じ構造から来ている。)
同じ機構が、トコフェロール(ビタミン E)もフェノールであることを説明する。フォーラムには BHT とトコフェロールを併用していて、理由を訊かれて理由はないと答えた人がいた。両者は同じ種類の酸化防止剤で、機構が重なる。
GHS は一つだけ、しかも環境のもの
H410:長期継続的影響により水生生物に非常に強い毒性。
皮膚の表示も、吸入の表示も、発がんの表示もない。これ一つだけになる。
対応する予防措置もすべて同じ方向を向いている。環境への放出を避ける、こぼれたものを回収する、認可された廃棄物処理施設に出す。
経口毒性はラット LD50 890 mg/kg。私が書いてきたキャリア溶媒と比べると、ミリスチン酸イソプロピル > 16,000、ジプロピレングリコール 14,850、安息香酸ベンジル 1,700〜2,800。この三本より低い。
(使うのが危険という意味ではない。FEMA GRAS と FEMA 2184 を持つ認可された食品添加物になる。ただ溶媒と同じ枠ではない。)
自然界にもある
天然での存在の欄には二項目ある。ニンニクの鱗茎と、中国産ヘンルーダ油 @ 0.05%。
これ自体に実務上の用途はないが、良い例にはなる。「合成添加物」の代表のように扱われる材料が、自然界に存在する。
(この分類がこのデータベースでどれほど不揃いかは〈合成対天然の論争は私のデータベースでは判定できない〉で計算した。306 件の材料が、一方の欄で「自然界では見つかっていない」、もう一方の欄で「天然」と記録されている。)
入れたら効くのか
ここには答えがない。
Hagvall らは 2008 年に Contact Dermatitis で問題が実在することを示した。ラベンダー油中のテルペン類は空気に触れると、純化合物を単独で酸化させた場合と同じ速度で酸化し、同じ酸化生成物を生じ、感作強度もそれに応じて上昇する。一本の精油に含まれる他の成分が主成分を守らなかった。
ただしあの論文が測ったのは「天然の保護の欠如」であって、「BHT を外から加えて効くか」ではない。
香料材料について外添の酸化防止剤を対照した研究を、私は見つけられなかった。だから BHT が何であるか、入れると何を払うことになるかは書けるが、効くかどうかは書けない。(この問いの全体は〈BHT を入れるべきか〉に書いた。)
この記事が立証していないこと
- **私はこれを嗅いでいない。**全編がデータベースの項目と論文一本による。
- 「目的が香りではない唯一の一本」は私が書いた百六本の中での話で、全庫の走査ではない。(前回「唯一」で誤ったので、範囲を先に書いておく。)
- **0.1% でフェノリックが感じ取れるかは測っていない。**香りの記述欄は原液での記述になる。
- 残香 400 時間はジプロピレングリコール 20% での測定で、0.1% の実情とは比較できない。
- 立体障害フェノールの酸化防止機構は教科書的な内容で、香料の基質中での挙動を論文で検証してはいない。
- 「BHT とトコフェロールは機構が重なる」は構造からの推論で、併用に相乗効果や拮抗があるかの研究は調べていない。
- **Hagvall 2008 が測っているのは感作性であって香りの劣化ではない。**関連はするが同じ終点ではない。
- **外添の酸化防止剤の効果について、私は証拠を一つも持っていない。**これが最大の空白になる。
- コーパスの統計は取っていない。(そもそも処方表には書かれない類の材料になる。)