原料図鑑 · 4
原料図鑑:パチュリ — カビ臭い土から清潔なウッディベースまでの距離は、希釈1回分
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供給業者148社、持続性は尺度の上端、保存期間36か月 — パチュリは最も長持ちする天然ベース原料のひとつです。同じ名前の下に2つの化学型(PA型とPO型)があり、香水業界が求める分子パチュロールは、酵母を改造してまで作られるほど重要です。入門10本のうち、最も「あとから好きになる」1本。
パチュリの原液は、初めて嗅ぐ人を一歩後ろへ下がらせます。湿った土、濡れた木、薬草のような涼しい縁。同じ原料を10%に希釈すると木質は澄み、スパイスとミントの輪郭も分けて嗅げるようになります。本稿が扱うのは、濃度が作るその距離です。
先に要点
- パチュリの原液はカビ臭い土の匂いです。**10%に薄めると清潔で温かいウッディベースに変わります。**薄めてから判断すること。瓶の口で死刑判決を下さないでください。
- 最も長持ちする天然ベース原料のひとつ。持続性は尺度の上端で、保存期間は36か月から。劣化もしにくい原料です。
- 扱いは148社。名前をよく読んでください。decolorized(脱色)と molecular distilled(分子蒸留)は別の等級で、色も価格も大きく違います。
基本記録
| 主要品目 | パチュリ油(葉の蒸留) |
| CAS | 8014-09-3 |
| 香調 | ウッディ、古木、ドライ、土、草の渋み、バルサム、スパイシー、ミント感 |
| 強さ | 中 |
| 持続性 | 記録上400時間(原液) |
| 比重 | 0.950–0.975(25 °C) |
| 推奨保存 | 36か月以上(冷暗所、密封) |
| 収載名簿 | GRAS、JECFA、CoE、FEMA GRAS、IFRA |
比重が1に近いのは、多くの精油より「重い」ということです。「400時間」はこのデータベースの持続性尺度の上端の慣例値なので(保管の回で説明済み)、「極めて長持ちするベース」と読んでください。36か月の保存期間は天然物としては長く、シトラス系の12か月(同じ回で算出)と比べると耐久側の端にいます。
これは何か
パチュリ油は Pogostemon cablin の葉を蒸留したもので、香りの主役はパチュロール(パチュリアルコール)というセスキテルペンアルコールです。リナロールのようなモノテルペンより「ひと回り大きい」植物分子(平たく言えば:分子が大きいほど飛びにくく、だからベースに残ります)。
実は「パチュリ」という名前の下には複数の顔があります。2023年、Zhang らは PLoS One 誌で中国栽培の2つの化学型を比較しました。
中国では、パチュリは通常2つの型に分類される:パチュロール型(PA型)とポゴストン型(PO型)。(中略)PA型ではパチュリアルコールの含量がポゴストンよりはるかに高く、PO型の茎葉ではパチュリアルコール含量はポゴストンと同等かそれ以下である。
同じ植物名、2つの化学組成。ロット差の回の結論がまた当たりました。**規格書は名前より先に成分欄を読むこと。**香水用途に欲しいのはパチュロール優位の油です。
酵母を改造してまで作る分子
パチュロールはどれほど重要か。合成生物学の標的分子になるほどです。
2022年、Tao らは Biotechnology Letters 誌で、パチュロール合成酵素を酵母のミトコンドリアの中に置きました。対照株に比べ産生は2.71倍。融合酵素と経路の最適化を合わせて19.24 mg/Lに達しています。
初心者にとっての要点は数字ではなく、繰り返し現れるパターンのほうです。サンダルウッド(原価の回)、バニリン(前回)、そしてパチュリ。天然分子が十分に重要になると、産業は畑に頼らない経路をそれ用に作ります。今日買えるパチュリはまだほぼすべて蒸留油ですが、「天然対合成」の境界はこうした実験室の中で動いています。
発酵、酵素変換、従来の化学合成を買い手の視点で比べるなら、「香料も酵母で醸せるのか」へ。
嗅ぐときは
当社の記録の香気語は8つ。ウッディ、古木、ドライ、土、草の渋み、バルサム、スパイシー、ミント感です。
「ミント感」は意外がられます。新鮮なパチュリ油には本当に涼しい縁があって、「古木」「土」と重なると、この原料独特の立体感になります。
実務の要点:
- 薄めてから評価すること。原液ではカビ臭い土がすべてを覆います(希釈の回の古典的な実例がまさにこれ)。10%から始めて、まだ強ければ1%へ。私も最初の一本は栓を開けた瞬間に後悔しかけました。薄めてからは仲直りです。
- 持続性は尺度の上端。ムエットの上で評価サイクルより長く残る、保留の回でいう「最後まで舞台に残るもの」の一員です。裏返せば、8時間後のあなたの処方の匂いは、かなりの部分これになります。
- 思っているより少なく。処方では1〜3%でウッディの床が敷けます。それ以上はビンテージ雑貨店です。
- 淡色の処方を染めます。標準油は深い茶色。色が気になるなら脱色等級を。
カタログのあの一列
patchoul* を名前に含む供給品目は23件。よく見るもの:
| 品目 | 何であるか |
|---|---|
| patchouli oil(148社) | 標準の蒸留油。深い茶色 |
| patchouli oil decolorized(50社) | 脱色処理。淡色処方用 |
| patchouli oil molecular distilled(41社) | 分子蒸留精製。よりクリーンで高価 |
| patchouli alcohol(18社) | 単離パチュロール — 土気なしの核だけ欲しいとき |
| patchouli absolute(12社) | 溶剤抽出のアブソリュート。より濃厚 |
| patchouli ethanone / hexanol | 合成の「パチュリ風」分子。同じものではない |
法規
GRAS、JECFA、CoE、FEMA GRAS、IFRAに収載。これらの名簿は使用上限を示しません。パチュリは法規的には単純な部類で、ベルガモットのような光毒性問題もありません。肌用処方は現行IFRAスタンダードと供給業者規格書を。
買うときは
- 等級を選ぶこと。標準、脱色、分子蒸留で価格差は大きいので、色と雑味が要るかを先に決めます。
- 産地の物語より化学型。規格書のパチュロール含量欄のほうが、テロワールのどんな話よりも役に立ちます。
- 少量でよい原料です。使用量が少なく長持ちするので、30 mLで長く使えます。
→ データベースのパチュリ油:全物性、供給業者一覧、推奨の組み合わせ。 → 脱色等級|パチュリアルコール|香調で検索:「ウッディ 土」で隣人を探せます。
参考文献
H. Zhang ほか, Comparative physicochemical, hormonal, transcriptomic and proteomic analyses provide new insights into the formation mechanism of two chemotypes of Pogostemon cablin, PLoS One, 18(9), e0290402 (2023). PMID 37738267
X.-Y. Tao ほか, Production of sesquiterpene patchoulol in mitochondrion-engineered Saccharomyces cerevisiae, Biotechnology Letters, 44(4), 571–580 (2022). PMID 35254611