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EU が表示を求める26種のアレルゲン、データベースには23種ある —— 欠けている三つのうち二つは後に禁止されたもの
· 13 分
「ある香水から EU 禁止の感作物質が検出された」というニュースは定期的に出てくる。そこで EU 化粧品規則附属書IIIの表示義務アレルゲン一覧を持ってきて、26種を一つずつ当サイトのデータベースに当てた。23種が見つかり、サプライヤーは合計1,774社、最大はゲラニオールの198社だった。欠けている三つは HICC(リラール)、BMHCA(リリアール)、methyl 2-octynoate で、前二つはまさに EU が後に禁止したものである。カタログは「これは禁止された」と書かない。ただ出てこなくなるだけで、不在は警告ではない。もう二つ。この23種のうち GHS 欄に皮膚感作 H317 が明記されているのは13種だけで、リナロール、クマリン、ベンジルアルコールは入っていない。表示一覧と危険有害性分類は目的の違う別の名簿だ。そして GHS 欄を持つ記録は全体42,225件のうち359件、1%に満たない。文献は二つ。12万4千人の欧州データは HICC のアレルギー率が禁止令の施行前から年々下がっていたことを示し、2024年のシステマティックレビューは香料混合物 I と II の感作率を6.81%と3.64%に置いている。
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長い話を短く
- EU 化粧品規則附属書IIIが、閾値を超えたら成分表に名前を書くことを求めるアレルゲン一覧は 26種ある
- この26種のうち、当データベースで見つかるのは23種。サプライヤーは合計 1,774社、最多はゲラニオールの198社
- 見つからない三つは HICC(リラール)、BMHCA(リリアール)、methyl 2-octynoate
- 前の二つはまさに EU が後に禁止したもの。カタログは「禁止」とは書かず、ただ消える
- この23種のうち、GHS 欄に皮膚感作 H317 があるのは13種だけ
- 全体42,225件のうち GHS 欄を持つのは 359件、1%に満たない
表示義務は禁止ではない
よく混ざる二つを先に分けておく。
表示義務とは、その材料がリーブオン製品で0.001%、リンスオフ製品で0.01%を超えたら、 成分表に parfum とだけ書くのではなく名前を出すこと。目的は、 自分が何に反応するかを既に知っている人が、棚の前でどれを避けるか判断できるようにすることだ。 これは情報開示であって、禁止ではない。
禁止は別の手続きになる。HICC は2021年8月から化粧品に使えなくなり、 BMHCA、つまり リリアール は2022年3月から使えなくなった。 後者は生殖毒性物質に分類されたためである。
ニュースの見出しが「EU 禁止の感作物質を検出」と二つを並べるので、概念がくっついてしまう。 一覧の26種は今日でもほとんどが合法で、しかもあなたの机の上の瓶に入っている。
26種はデータベースでどう見えるか
一つずつ当てた結果。残香は時間 @100%、H317 欄は GHS 分類に皮膚感作が書かれているかを見る。
| 表示名 | データベース上の名前 | サプライヤー | 残香 | H317 |
|---|---|---|---|---|
| geraniol | geraniol | 198 | 60 | ✓ |
| citral | citral | 135 | 12 | ✓ |
| linalool | linalool | 135 | 12 | なし |
| benzyl alcohol | benzyl alcohol | 125 | 35 | なし |
| citronellol | citronellol | 119 | 56 | ✓ |
| cinnamal | cinnamaldehyde | 105 | 212 | ✓ |
| eugenol | eugenol | 97 | 52 | ✓ |
| benzyl benzoate | benzyl benzoate | 84 | 322 | なし |
| limonene | dextro-limonene | 82 | 4 | ✓ |
| cinnamyl alcohol | cinnamyl alcohol | 79 | 371 | ✓ |
| coumarin | coumarin | 74 | 364 | なし |
| anise alcohol | para-anisyl alcohol | 59 | 82 | なし |
| benzyl salicylate | benzyl salicylate | 58 | 384 | ✓ |
| hexyl cinnamal | alpha-hexyl cinnamaldehyde | 56 | 400 | ✓ |
| isoeugenol | isoeugenol | 56 | 400 | ✓ |
| amyl cinnamal | alpha-amyl cinnamaldehyde | 53 | 256 | ✓ |
| hydroxycitronellal | hydroxycitronellal | 53 | 218 | ✓ |
| alpha-isomethyl ionone | alpha-isomethyl ionone (50% min.) | 47 | 124 | ✓ |
| benzyl cinnamate | benzyl cinnamate | 45 | 243 | なし |
| oakmoss | oakmoss absolute | 42 | 400 | なし |
| farnesol | farnesol | 31 | 400 | なし |
| treemoss | treemoss absolute | 29 | 400 | 欄は空 |
| amylcinnamyl alcohol | alpha-amyl cinnamyl alcohol | 12 | 320 | 欄は空 |
| HICC(リラール) | 見つからない | — | — | — |
| BMHCA(リリアール) | 見つからない | — | — | — |
| methyl 2-octynoate | 見つからない | — | — | — |
23種のサプライヤーを合計すると1,774社になる。マイナーな一覧ではない。 入門パレットの半分以上がここに入っている。 ゲラニオール、リナロール、 クマリン、オイゲノール。
欠けている三つ
HICC と BMHCA が見つからないのは当方の収録漏れではなく、 上流のカタログにもう存在しないからだ。二つとも EU で禁止され、それから商業カタログから消えた。
ここには使う側にとって不親切な形がある。 カタログは材料が禁止されたことを教えてくれない。ただ出てこなくなるだけだ。 赤字も、注記も、「使用中止」という欄もない。前回は買えて今回は検索に出ない、 その間に何が起きたかをデータベースは説明しない。 リリアールの記事はこの落とし穴の一本版で、 こちらは一覧を全部走らせたあとのシステム版になる。
**不在は警告ではない。**ある材料が今使えるかどうかを判断するには、 現行の法令本文を読むしかない。カタログにあるかないかでは決まらない。 逆も成り立つ。カタログにあることは、あなたの市場で合法であることを意味しない。
三つ目の methyl 2-octynoate は禁止されておらず、単に出典データに収録がないだけだ。 三つの欠落のうち二つは禁止令によるもの、一つは網羅率によるもので、 その二種類の不在は見た目がまったく同じになる。
12万4千人のデータ:禁止令の前から HICC のアレルギー率は下がっていた
2021年、コペンハーゲン大学 Gentofte 病院とエアランゲンの Ahlström らが 《Contact Dermatitis》に時系列分析を出している(PMID 33453125)。
背景の一文をまず写す。HICC は過去20年でもっとも多く報告された香料化学物質であり、 2021年8月から化粧品での使用が禁止される、というものだ。
規模は 湿疹患者124,472名。全員が HICC 5% ワセリン基剤でパッチテストを受けている。 欧州接触アレルギー監視システム(ESSCA)の2009〜2018年と、 Herlev-Gentofte 病院の2009〜2019年のデータである。
結果。Gentofte の9,865名では 1.98%、ESSCA の114,607名では 1.62% に HICC への接触アレルギーが見られた。全体として毎年下がっており、 Gentofte で年0.156ポイント(P = .001)、ESSCA で年0.051ポイント(P = .0002)。
著者の結論は抑制が効いている。欧州の湿疹患者において HICC アレルギーの有意な減少を 示した最初の研究であり、もっとも可能性が高い原因は来たる EU の禁止令である。 処方の側が法令の施行前に動き、人口のアレルギー率がそれに続いた、ということになる。
84本の研究のシステマティックレビュー:6.81%と3.64%
二つ目は2024年、同じ研究者たちによるシステマティックレビュー(Botvid ら、PMID 38945918)。 PROSPERO に事前登録した計画に従い、1981年から2022年までの欧州湿疹患者の パッチテスト文献 4,134本を篩にかけ、最終的に 84本の原著論文を解析している。
結果。香料混合物 I の感作率は6.81%(95%信頼区間 6.37〜7.28)、 香料混合物 II は3.64%(3.3〜4.01)。地理的な分布は異なり、 FM I は中欧・東欧で、FM II は西欧で最も高い。
この二つの数字は置き場所に注意がいる。出どころは皮膚科外来の湿疹患者であって 一般人口ではなく、分母がもともと偏っている。 またこの2024年の論文には2026年付の正誤表があり、引用時には併せて見る必要がある。
GHS 欄と表示一覧は別の名簿である
表のいちばん右の列に戻る。23種の表示義務アレルゲンのうち、 データベースの GHS 欄に H317 皮膚感作が明記されているのは 13種だけだ。 リナロールにはなく、クマリンにもなく、ベンジルアルコールにもなく、オークモスにもない。
これは矛盾ではなく、二つの名簿の目的が違うということになる。 表示一覧が問うのは「これは疫学的に見て消費者に見せる価値があるか」であり、 GHS 分類が問うのは「この物質は試験データに基づきどの危険有害性情報を負うべきか」だ。 証拠の要求水準も決定の手続きも違うので、両者が一致する必然性はない。
さらに覚えておくべきは網羅率のほうになる。全体42,225件のうち GHS 欄を持つのは359件、 1%に満たず、そのうち H317 を持つのは63件。だから大半の記録において 「GHS 欄に感作の記載がない」の正しい読み方は その欄が空であるであって、 「安全である」ではない。網羅率1%未満の欄から安全性の結論を引くのは、 天然のほうが穏やかかで踏んだ落とし穴と同じものだ。
実務ではどう使うか
- この23本のどれかを持っているなら、名前を書く必要が出るものとして扱う。 自分用なら関係ないが、人に渡す・売るとなった瞬間から成分表の義務が始まる。
- **カタログではなく現行法令を見る。**EU のこの一覧は2023年に改訂されて範囲が広がっており、 地域ごとの規則も違う。官報の本文を基準にすること。
- **試香紙の濃度は肌の上の濃度ではない。**0.001%という閾値は完成品に対するもので、 希釈段階のパーセントとは座標が違う。
- 避けたいなら避ければいい。ただし一覧を危険度ランキングとして読まない。 26種は疫学に基づいて「見えるようにする」ために選ばれたのであって、 毒性の順に並んでいるわけではない。
→ 香調で検索:この23本はいずれも物性一式と供給元まで引けます。たとえば一覧で最大のゲラニオール。
この記事が立証していないこと
- **26種の照合は名称で行っている。**データベースの命名と法令上の名称は完全には一致せず (cinnamal と cinnamaldehyde、limonene と dextro-limonene)、 一つずつ確認はしたが、名称照合は本質的に取りこぼしうる。
- HICC と BMHCA が見つからない理由を「禁止後にカタログから消えた」と推している。 出典データの収録判断についての証拠はなく、分かっているのは見つからないという結果だけだ。
- **methyl 2-octynoate が見つからないことは禁止を意味しない。**単に出典に収録がない。
- 1.98%と1.62%は皮膚科外来の湿疹患者における比率であって一般人口の有病率ではない。 6.81%と3.64%も同様で、加えて当該論文には正誤表がある。
- **法規の細部は変わる。**本稿は2026年10月に書いたもので、二つの禁止の施行日は 文献と公開規則から取っている。実際の適用は最新の公式文書を基準にしてほしい。