調達 · 14
この趣味をどう工面するか——最大のレバーは何を買うかではなく、一度にどれだけ作るかになる
· 12 分
どうやって工面しているのかを尋ねたスレッドがあり、63件の返信は「二か月ごとに数百ドル」から「年間二万五千ドル」まで開いていた。953件の処方の配合量の中央値で消費を計算すると、同じ10gの瓶は100gのバッチなら一回、2gの試作なら五十回もつ。そして常用79本のうち27本は配合量が5%を超える。継続的な出費は高価な瓶ではなく、地味な材料のほうにある。
r/DIYfragrance に、誰もが気になりながらほとんど口に出さない問いが立った。この趣味をどうやって工面しているのか。技術的な情報はネットに溢れているのに、個人の家計の側はほとんど語られない。その結果、自己比較の穴に落ちやすくなる。他人の調香台の後ろで何が起きているかは、決して見えないからだ。
返信は63件。自己申告の支出はこうなる。
| 利用者の申告 | 金額 |
|---|---|
| 最初の注文 | 600ドル超 |
| 二か月ごと | 数百ドル |
| 週あたり | 300ドル |
| 年初来 | 25,000ドル |
二桁の開きになる。この記事は「いくら使うべきか」を答えない。そんな数字は存在しないからだ。答えるのは別の問いになる。その金は実際に何によって消費されるのか。
まず要点
- 最大のレバーは試作の規模であって、材料の選択ではない。 配合量10%の材料なら、同じ10gの瓶が100gのバッチでは 1回、5gの試作なら 20回、2gなら 50回もつ。
- 継続的な出費は地味な材料のほうにある。常用79本のうち **27本(34%)**が配合量の中央値5%超で、その多くはフェニルエチルアルコール、ベルガモット、サリチル酸ベンジルといった基礎材料になる。
- 買うのをためらう高価な瓶は、たいてい0.5%前後で使う。10gで20バッチもつ。継続費用ではなく一度きりの投資になる。
- 本サイトのデータベースに価格はないので、本稿が計算するのは消費量になる。価格は供給元のページで見るしかないが、消費量は注文する前に計算できる。
読了の目安は9分ほど。
お金はどこへ行くのか
953件の処方コーパスのうち40件以上に現れる79本を、配合量の中央値で見る。
重いほう。
| 原料 | 出現処方数 | 配合量の中央値 | 100gあたりの消費 |
|---|---|---|---|
| フェニルエチルアルコール | 274 | 10.00% | 10.00 g |
| ベルガモット(ベルガプテン低減) | 132 | 10.00% | 10.00 g |
| ベンジルアルコール | 43 | 10.00% | 10.00 g |
| ガラクソライド 50% IPM | 82 | 9.80% | 9.80 g |
| サリチル酸ベンジル | 159 | 9.47% | 9.47 g |
| エチレンブラシレート | 59 | 8.33% | 8.33 g |
| ヒドロキシシトロネラール | 161 | 8.00% | 8.00 g |
| α-ヘキシルシンナムアルデヒド | 157 | 8.00% | 8.00 g |
| ヘディオン | 165 | 7.00% | 7.00 g |
軽いほう。
| 原料 | 配合量の中央値 | 100gあたり | 10gで何バッチ |
|---|---|---|---|
| β-ダマセノン | 0.42% | 0.42 g | 24 |
| 青葉アルコール | 0.50% | 0.50 g | 20 |
| エチルバニリン | 0.50% | 0.50 g | 20 |
| ローズオキサイド | 0.50% | 0.50 g | 20 |
| インドール | 0.68% | 0.68 g | 15 |
この対比が要点になる。 ためらわせるのはたいてい右の表の名前だが、実際に切れ続けるのは左の表になる。79本のうち27本が5%超、1%未満は13本しかない。
五倍濃縮のオレンジ油がとても欲しかったが、自分の段階ではスイートオレンジで足りると判断してカートを閉じた、と書いた人の判断は正しい。理由をもう少し鋭くできる。先に「これを何%で使うのか」を問う。
50倍のレバー
消費量は配合量 × バッチ重量になる。前者は処方が決め、後者はあなたが決める。そして初心者の多くは後者を大きく設定しすぎる。
同じ 10g の瓶が何回もつか。
| 配合量 | 100g バッチ | 20g バッチ | 5g 試作 | 2g 試作 |
|---|---|---|---|---|
| 10% | 1 | 5 | 20 | 50 |
| 8% | 1 | 6 | 25 | 62 |
| 5% | 2 | 10 | 40 | 100 |
| 3% | 3 | 17 | 67 | 167 |
| 1% | 10 | 50 | 200 | 500 |
| 0.5% | 20 | 100 | 400 | 1000 |
100gのバッチから2gの試作へ移すだけで、同じ瓶が50倍もつ。 この決定に費用はかからない。
処方全体で見る。原料20本、それぞれ中央値の2.5%とすると、
| 一度に作る量 | 1本あたり | 20本合計 |
|---|---|---|
| 100 g | 2.50 g | 50.0 g |
| 20 g | 0.50 g | 10.0 g |
| 5 g | 0.12 g | 2.5 g |
スレッドの一つがまさにこの実践を書いていた。必要な材料だけを買い、適切な比率で希釈し、試作は5〜10 mLを超えない、一度に一つのアコードへ集中する。上の表は、その助言の数値版になる。
同じ返信はもう一つの節約にも触れていた。小さな冷蔵庫を買うこと。ヘディオンや柑橘油のような熱に弱い材料を早く駄目にしないためだ。捨てる材料は、使う材料と同じ値段になる。
減らせる試作
一回を小さくするほかに、回数を減らすこともできる。
Rodrigues らは2021年、Molecules で自身の研究室における二十年の香水工学の手法を総説した。その一つが香水三元図(Perfumery Ternary Diagram)で、与えられた組成に対してどの匂いが支配的になるかを判定する。さらに気液平衡とフィックの拡散法則から蒸発と一次元拡散のモデルを立てて性能パラメータを導き、基質と皮膚の影響、香水の残り香を扱い、香水レーダー(Perfumery Radar)で分類を行う。
節約という観点での含意は、混ぜなくても答えの出る問いがある、ということになる。 三本のうちどれが他を覆うかは、条件によっては先に計算できる。自宅で気液平衡モデルを回すことはないが、姿勢は借りられる。手を動かす前に何を検証するのかを決める。「とりあえずやってみる」を手順にしない。
もう一つ、必要な材料の数は思うより少ない。Cai らが2024年に Heliyon で自動処方生成を組んだとき、210件の実務処方から組成情報を抽出し、参照ライブラリは 常用344本だけで構築された。そして当サイト自身の計測では、処方あたりの原料数の中央値は17本だが、重量順に並べると **中央値10本で90%**を占める。
スレッドには、Jean-Claude Ellena が5本未満で優れた作品を作ったという話も出ていた。これは検証していないので、コミュニティの言い伝えとして扱う。方向は上の二つの数字と一致する。
スレッドが正しかったところ
金額のほかに、写しておく価値のある実践がいくつかあった。
その後ブランドを立ち上げた人はこう書いていた。ノートセットと入門セットという、ごく小さなところから始め、毎回カートから何を削るかで苦しみながら少しずつ広げた。表計算で安いところを探し、供給元をまたいで注文をまとめ送料を抑え、すべてを希釈液にして可能なかぎり引き延ばした。最初の材料からブランド立ち上げまで三年から三年半。「ここでは二年が最低ライン」とも添えている。
もう一人は趣味を安定収入に変える方法が創造的だった。公立図書館で90分のDIY調香プログラムを開く。高価でも扱いにくくもない材料を小さくそろえて持ち込み、参加者には5本までを勧め、全員が自分の一瓶を持ち帰る。最初の一回の講師料でその回の費用は賄え、以降の謝礼は次の材料注文の代金になっているという。
最も率直な枠組みは、純粋な趣味として続けている人のものだった。ピアノを弾くこととも、マラソンを走ることとも変わらない。ゴルフクラブ一式だって金はかかる。
今日できる三つの決定
一つ、試作を2〜5 gに切り下げる。 費用ゼロで材料の寿命を一桁伸ばせる唯一の決定になる。2 gで聞き分けられる差は、100 gで聞き分けられる差と変わらない。
二つ、注文の前に「何%で使うのか」を問う。 8%で使う材料を50 g買うのは妥当だ。0.5%で使う材料を50 g買うのは、十年分の金を戸棚に閉じ込めることになる。頻度と配合量の記事に表がある。
三つ、ほぼ常に希釈して使う材料は最小包装で買う。 そちらでも測っている。α-イソメチルイオノンはコーパスでの出現の 100% が予備希釈の形であり、インドールは74%。届いた日に希釈するのだから、大きな包装に意味はない。
この記事が立証していないこと
本サイトのデータベースに価格データはない。 原料テーブルと供給元テーブルのどちらにも価格の欄がないことを確認した。したがって計算しているのは消費量であり、金額は供給元のページで見るしかない。
配合量の中央値は公開デモ処方によるもの。 このコーパスは74%が特許や出典を伴う実施例で、その文書群の癖を映している。あなたの処方ではない。自分の配合量はかなり違いうる。
引用した金額はすべて利用者の自己申告で、検証していない。 二か月ごとに数百ドルから年間二万五千ドルまでという開きそのものが、どれも基準として使えない理由になる。
「小さく作る」にも限界がある。 秤量の誤差は小さなバッチほど相対的に効く。天秤の読みが 0.01 g までなら、2 gの試作での0.5%の材料は0.01 gで、すでに分解能の縁にいる。秤量と希釈の母液の手順は、まさにこれを解くために存在する。
参考文献
A. E. Rodrigues, I. Nogueira, R. P. V. Faria, Perfume and Flavor Engineering: A Chemical Engineering Perspective, Molecules, 26(11), 3095 (2021). PMID 34067262. doi:10.3390/molecules26113095
J. Cai ほか, A rapid approach based on empirical formulas and graph traversal algorithms to automatic generation of fragrance formulas, Heliyon, 10(24), e40873 (2024). PMID 39720048. doi:10.1016/j.heliyon.2024.e40873
関連記事:何件の処方に出てくるかを調べてから買え、秤量と希釈、コストと調達、保管と酸化。