はじめての調香 · 17
原料を30本買って固まった——買い足す前に、どの2本が一緒に出てくるかを見る
· 14 分
一度に30〜50本の原料を注文し、家に着いて何をすればいいか分からなくなった人がいた。953件の公開処方で原料の同時出現を計算したところ、同義語をまとめた後、132本の常用原料から八つの群が浮かび上がった。途中で二つのことも見えた。最初に出たlift最上位のペアは綴りの違いによる偽の信号であり、実際によく同居するペアの69%はデータベースの公式な推奨ブレンドに載っていない。オークモスとパチュリ、ベルガモットとラベンダーも含めて。
r/DIYfragrance にこんな投稿があった。自分で香水を作りたくて、精油と香料を30〜50本まとめて注文し、瓶とアルコールとDPGもそろえた。そして、何をすればいいか分からなくなった。
最初は興奮のまま適当に混ぜ、一度目で悪手だと気づいた。次に一本ずつ嗅ぎ始めたが、多くは香りが弱いか、どれも同じに感じられた。10%に希釈したらようやく読めるようになった。しかしそこからどう計算するのか分からない。DPGについても意見が割れているように見える。最後に彼はこう書いていた。圧倒されてしまった。皆さんは実際どの手順で進めているのか、と。
返信は49件。この記事は、その問いにデータで答えるものになる。
まず要点
- 買い足すのをやめる。 手元の30本で足りている。問題は、それを30個の単品として嗅いでいて、ペアとして嗅いでいないことにある。
- 953件の公開処方で二本ずつの同時出現を計算し、同義語をまとめると、132本の常用原料から八つの群が出てくる。すでに3本そろっている群を見つける。それが最初の和音になる。
- 二本から始めるべき理由は論文が説明してくれる。成人の鼻は二成分の混合物を全体として処理し、混合物が7〜8成分を超えると特定の一つを取り出せる人は3〜5割まで落ちる。
読了の目安は9分ほど。
単品ではなくペアである理由
ここから始めるのは、これが以降のすべてを決めるからになる。
Romagny らは2026年、Developmental Psychobiology で子ども、ティーンエイジャー、成人(平均年齢10歳、15歳、39歳)の匂い混合物の知覚を比較した。二成分混合物2組と六成分混合物2組を、典型性の評定、ターゲット検出、複雑さの評価という三つの課題で調べている。
六成分混合物は三つの年齢層で一貫していた。差が出たのは二成分混合物のほうになる。成人は子どもよりも AB を「その全体としての匂い」に典型的だと評定し、同時に二成分混合物の中の個々の成分へのアクセスが低下していた。ティーンエイジャーは中間に位置する。著者らはこれを、より要素的な処理からより全体的な処理への漸進的な移行と読み、化学的な複雑さが低い混合物で最も顕著だとしている。
平易に言えばこうなる。あなたは成人なので、二本が混ざったとき、鼻はそれを二つの音ではなく一つの新しい和音として聞く。 鼻の故障ではない。成人の既定値になる。
では本数が増えると。Drnovsek らは2025年、European Journal of Neuroscience で 健常者90名と嗅覚障害の患者40名を対象に、混合物の中から指定された標的の匂いを取り出せるかを調べた。既知の背景はこうなる。背景の匂いが増えるほど難しくなり、16成分の混合物では偶然の水準を下回る。
彼ら自身の結果はこうだった。混合物に7〜8種の匂いがあっても、健常者の約 50% がオイゲノールを、約 30〜40% がフェニルエチルアルコールを見つけられた。どちらの分布も偶然とは有意に異なる(p < 0.001)ので、当てずっぽうではない。ただし裏返せば、7〜8本の時点で半数はすでに追えなくなっているということになる。
二本を合わせると、あの圧倒された投稿者への結論はまっすぐになる。2本は学べる単位で、30本はそうではない。
953件の処方で誰と誰が一緒に出るか
方法は単純になる。公開デモ処方のコーパスを使い、各処方を原料の集合とみなして、任意の二本が同時に現れる回数を数え、両者が独立だった場合に同居するはずの回数で割る。この比はふつう lift と呼ばれ、1を超えれば偶然より頻繁に一緒に現れることを意味する。
まず、絶対数の多いペアから。
| 同居件数 | lift | ペア |
|---|---|---|
| 153 | 1.36 | 酢酸ベンジル + リナロール |
| 138 | 1.51 | 酢酸ベンジル + フェニルエチルアルコール |
| 125 | 1.70 | リナロール + 酢酸リナリル |
| 99 | 1.87 | 酢酸ベンジル + サリチル酸ベンジル |
| 91 | 2.05 | シトロネロール + ゲラニオール |
| 88 | 1.90 | ヒドロキシシトロネラール + フェニルエチルアルコール |
| 88 | 1.94 | α-テルピネオール + リナロール |
これらは骨格のペアで、両側とも頻出だから頻出になる。本当にくっついている組を探すには lift を見る。
| lift | 同居 | ペア |
|---|---|---|
| 7.69 | 24 | 2-メチル酪酸エチル + γ-ウンデカラクトン |
| 6.03 | 27 | 酢酸シス-3-ヘキセニル + 酢酸ヘキシル |
| 5.26 | 23 | γ-ウンデカラクトン + Verdox |
| 4.90 | 31 | アリルアミルグリコレート + Iso E Super |
| 4.70 | 39 | 青葉アルコール + 酢酸シス-3-ヘキセニル |
| 4.49 | 23 | オークモスアブソリュート + パチュリ油 |
| 4.34 | 37 | アリルアミルグリコレート + ジヒドロミルセノール |
| 4.08 | 36 | ヘリオトロピン + パラアニスアルデヒド |
二つ目の表のペアは頻出ではない。ただし片方が出れば、ほぼ必ずもう片方も出る。それが和音になる。
ここで一度間違えた。 同義語を統合する前、lift の最上位は
linalol+phenylethyl alcoholの 10.65 だった。この二つはリナロールとフェニルエチルアルコールの別表記になる。「異常によく一緒に出る」本当の理由は、一人の書き手が一つの処方を書くとき、両方の名前に自分の表記を使うからだ。匂いについての信号ではなく、文書についての信号になる。統合したらこのペアは消えた。
八つの群
lift の高いペアをつなぐと群が現れる。手作業で名前を付けたうえで、各群がコーパスをどれだけ覆うかを測り直した。
| 群 | メンバーの例 | ≥2本を含む処方 | ≥3本 |
|---|---|---|---|
| ジャスミン/ホワイトフローラル | 酢酸ベンジル、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ヘディオン、インドール、サリチル酸ベンジル | 31% | 12% |
| ラベンダー/フゼア | リナロール、酢酸リナリル、クマリン、ベルガモット、ラベンダー油 | 28% | 9% |
| ミュゲ | ヒドロキシシトロネラール、リナロール、シトロネロール、Lilial、Lyral | 27% | 8% |
| ローズ | ゲラニオール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、ロジノール、ネロール | 24% | 9% |
| モダンフレッシュウッディ | Iso E Super、ジヒドロミルセノール、アリルアミルグリコレート | 10% | 4% |
| フルーティエステル | γ-ウンデカラクトン、酢酸ヘキシル、酢酸シス-3-ヘキセニル、γ-デカラクトン | 8% | 4% |
| シプレ/モスウッド | オークモス、パチュリ、酢酸ベチベリル、ムスクケトン、サンダルウッド | 8% | 3% |
| アルデヒディック | アルデヒド C-8、C-9、C-10、C-11、C-12 | 5% | 2% |
上の四つは汎用の骨格で、それぞれ処方の四分の一から三分の一に現れる。下の四つはずっと狭く、内部の結びつきは強い。汎用のシャーシではなく、特定のスタイルの署名になる。
使い方:手元の30本をこの表に当て、すでに3本そろっている群を探す。その群が今夜の練習になる。残りの27本はしまっておく。
公式の「推奨ブレンド」は実際の処方と噛み合わない
本サイトのデータベースには公式の推奨ブレンドのデータがあり、7,129本の原料、673,662件を収める。実測の同居データが手元にあるので、突き合わせられる。
実測601組のうち、両側ともデータベースの原料記録に対応づけられたのは326組。結果はこうなる。
- 公式の推奨に載っているもの:102組、31%
- 載っていないもの:224組、69%
その69%にはこれらが含まれる。
| lift | ペア |
|---|---|
| 4.49 | オークモスアブソリュート + パチュリ油 |
| 4.25 | ムスクアンブレット代替 + ムスクケトン |
| 3.78 | ムスクケトン + サンダルウッド油 |
| 2.89 | パチュリ油 + サンダルウッド油 |
| 2.66 | ベルガモット + ラベンダー油 |
オークモスとパチュリはシプレの土台になる。ベルガモットとラベンダーはフゼアの土台になる。どちらも公式の推奨一覧には見当たらない。
理由はおそらくこうなる。あの推奨は単一の原料の香りの近さから組まれており、「これの隣に置いて似合うものは何か」に答えている。処方の中の同居が映すのは構造上の分業になる。オークモスとパチュリが一緒に出るのは、似た匂いだからではなく、片方が苔を、もう片方が土を担い、その組み合わせがシプレのベースそのものだからだ。
二つのデータは別の問いに答えている。香りの上で隣り合うものを探すなら公式の一覧、同じ処方に書き込まれるものを探すなら同居データになる。
投稿者の残りの問い
もう二つ、答えておきたい。
「10%でしか嗅ぎ取れないのに、どう計算するのか。」 重量で計算し、母液の濃度は換算係数にすぎない。秤量と希釈に手順の全体がある。要点は、処方表に書くのは常に原液のグラム数であり、10%母液はそこへ到達する手段でしかないということになる。
「DPGは使うべきか。」 両陣営とも半分正しく、何を作るかで決まる。溶剤に比較がある。彼の状況への短い答えはこうなる。嗅ぐための母液にはDPGが向き、噴霧できる完成品にはアルコールを使う。
この記事が立証していないこと
コーパスの74%は特許や出典の行を伴う。 特許の実施例は市販処方ではなく、同居はこの公開文書群の書き方の癖を映したものになる。
同義語は手作業で統合した。 見分けられたものだけを扱っている(表記のゆれ、商品名と系統名、天然物の産地違いの一部)。統合されずに残った同義語は、上に書いたような偽の lift を生み続ける。この群の表は結論ではなく出発点として読みたい。
31%には偏りの余地がある。 601組のうち275組は、名前がデータベースの記録に対応づけられなかったか、その原料に推奨データがなかったために比較できていない。その失敗がどちらかに系統的に偏っていれば、31%は動く。この数字が支えるのは「二つのデータの重なりは思うより小さい」であって、正確な重複率ではない。
lift は因果ではない。 二本がよく一緒に出るのは、補い合うからかもしれないし、単に同じ時代か同じ香型の標準装備だからかもしれない。このデータでは区別できない。
参考文献
E. Drnovsek ほか, Detection of odorants in odour mixtures among healthy people and patients with olfactory dysfunction, European Journal of Neuroscience, 61(1), e16633 (2025). PMID 39803925. doi:10.1111/ejn.16633
S. Romagny, G. Coureaud, T. Thomas-Danguin, Developmental Switch From Elemental to Configural Processing of Odor Mixtures in Humans, Developmental Psychobiology, 68(5), e70188 (2026). PMID 42552896. doi:10.1002/dev.70188